仕事術・業務改善

情緒学級担任の伝え方|子ども・保護者・同僚との会話で意識したいこと

情緒学級担任の仕事では、子どもだけでなく、保護者や同僚など、さまざまな相手とコミュニケーションを取ります。

良好な関係を作るためのコミュニケーションは、大きく「聴くこと」と「伝えること」に分けられます。

相手の話を聴くことについては別の記事で解説しているため、この記事では、伝え方の基本となる考え方をまとめます。

子ども、保護者、同僚では、伝える内容や適した方法が異なります。

しかし、どの相手に対しても共通して意識したいことがあります。

それは、教師が話した時点で「伝えた」と考えるのではなく、相手にどのように受け取られたかまで確認することです。

【関連記事】情緒学級担任の聴き方|子ども・保護者・同僚との会話で意識したいこと

「伝えた」と「伝わった」は同じではない

教師が説明を終えたからといって、相手に意図が伝わっているとは限りません。

子どもに活動の流れを説明しても、次に何をすればよいか分かっていなければ、十分に伝わったとはいえません。

保護者に学校での出来事を説明しても、前後の状況や学校の対応が分からなければ、一方的に問題を指摘されたように感じるかもしれません。

同僚に合同授業の略案を渡しても、どの場面で何をしてほしいのかまで共有されていなければ、現場では動きにくくなります。

このような小さな認識のずれは、日常の中で意外と起こります。

一つひとつは小さなずれでも、積み重なると、

  • 子どもが活動に参加しにくくなる
  • 保護者との認識が食い違う
  • 職員間で役割の抜け漏れが起こる
  • 担任が一人で対応を抱える

といった問題につながります。

反対に、日頃から伝え方を少し丁寧にするだけで、仕事全体が回りやすくなることもあります。

伝える目的は、相手を必ず納得させたり、同じ意見に変えたりすることではありません。

まずは、こちらの意図や事実が正しく理解され、分からないことや異なる考えを確認できる状態を作ることが大切です。

【関連記事】情緒学級担任の役割とは?|子ども・保護者・学校をつなぐ仕事

伝え方で共通して意識したい5つのこと

子ども、保護者、同僚の誰に伝える場合でも、私は次の5点を意識していました。

1.何のために伝えるのかを決める

伝える目的は一つではありません。

例えば、次のような目的があります。

  • 事実や手順を説明する
  • 相手の考えを確認する
  • 質問する
  • 気持ちを受け止める
  • 頑張りを認める
  • 次の行動を促す
  • 考えるきっかけを作る
  • 協力や役割を依頼する

目的が曖昧なまま話し始めると、説明、注意、質問、感情などが一度に混ざり、相手が何を受け取ればよいのか分かりにくくなります。

まずは、「今回は何を伝えたいのか」を教師自身が整理することが大切です。

2.一度に伝える内容を絞る

一度の説明に多くの情報を盛り込むと、重要な部分が分かりにくくなります。

特に子どもに伝えるときは、一度に伝えることを一つに絞るくらいでちょうどよい場合があります。

保護者や同僚に伝える場合も、

  1. 最も重要なこと
  2. 次に確認したいこと
  3. 必要な補足

の順番で整理すると、話が伝わりやすくなります。

伝えたいことが多い場合は、一度ですべて説明するのではなく、口頭と文書を分けたり、話す機会を複数回に分けたりします。

3.相手に合った方法を選ぶ

同じ内容でも、言葉だけで伝わる人もいれば、図や写真がある方が理解しやすい人もいます。

伝える方法には、次のようなものがあります。

  • 口頭
  • 文書
  • 図やイラスト
  • 写真
  • 予定表や手順表
  • 校内の情報共有システム
  • 身振りや表情

すべての場面で複数の方法を使う必要はありません。

内容の重要度、緊急性、相手に求める行動を考えて、適した方法を選びます。

重要なことや、後から確認する必要があることは、口頭だけでなく、記録として残る方法を組み合わせると安心です。

4.理解できたかを確認する

相手がこちらを見ていたり、頷いたりしていても、内容を理解できているとは限りません。

そのため、伝えた後には、必要に応じて確認を行います。

子どもであれば、

  • 次にすることを予定表で一緒に確認する
  • 選択肢から指差してもらう
  • 最初の行動を一緒に行う
  • 活動中の様子を見る

といった方法があります。

保護者や同僚には、

  • 分かりにくかった点がないか尋ねる
  • 相手の認識を確認する
  • 役割や次の行動を具体的に共有する

といった方法があります。

理解の確認は、相手を試すために行うものではありません。

こちらの伝え方や支援が十分だったかを確認するために行います。

5.感謝や承認を言葉にする

子ども、保護者、同僚の誰に対しても、感謝や承認を言葉にすることは大切です。

「ありがとうございます」だけでも印象は変わりますが、できれば、何に対して感謝しているのかを具体的に伝えます。

例えば、

「急なお願いにもかかわらず、すぐに確認してくださって助かりました」

「教室の隅まで丁寧に拭いてくれたね。教室がきれいになりました。ありがとう」

というように伝えます。

相手がしてくれたことを具体的に言葉にすることで、「自分の行動を見てもらえている」という実感にもつながります。

子どもには「短く・ゆっくり・見える形」で伝える

子どもへの説明では、まず話す速さを意識します。

大人と話すときよりも、少しゆっくり話し、文章の区切りで間を取ります。

私はもともと早口だったため、子どもに話すときは、一つの文を言い終えたところで息を吸うようにしていました。

大切なのは、教師が一方的に最後まで説明することではありません。

子どもの表情や様子を見ながら、短いやり取りを重ねるイメージで説明します。

言葉だけに頼らない

声や言葉だけでは、内容を理解することが難しい子どももいます。

そのため、必要に応じて、

  • 黒板やホワイトボードに手順を書く
  • 簡単な図やイラストを添える
  • 写真や実物を見せる
  • 身振りを使う
  • スライドやタブレットを使う

といった方法を組み合わせます。

特別な教材を毎回用意しなくても構いません。

例えば、活動の手順を、

  1. 教科書を出す
  2. 問題を読む
  3. 1問解く

と黒板に書くだけでも、子どもが困ったときに見返せるようになります。

文字だけで理解することが難しい場合は、鉛筆、はさみ、本、口など、活動を連想できる簡単なイラストを添えます。

重要なのは、教師が丁寧に説明したかではなく、子どもが次の行動を確認できる状態になっているかです。

確認は質問だけでなく、行動でも見る

説明した後には、内容が伝わっているかを確認します。

「集合時間は何時だったっけ?」

「これが終わったら、次は何をするんだっけ?」

と問いかける方法もあります。

ただし、記憶や言葉で答えることが苦手な子どもに、無理にその場で答えさせる必要はありません。

その場合は、

「予定表で一緒に確認しよう」

「次はどっちか指で教えて」

と伝えたり、活動を始める際に必要な支援を行ったりします。

説明方法の詳しい工夫については、別の記事で紹介します。

具体的な姿を認める

子どもを認めるときは、具体的な行動を取り上げます。

「すごいね」「えらいね」だけでなく、

「タイマーが鳴った後に、自分で片付けを始められたね」

「分からないときに、先生に聞くことができたね」

と伝えます。

必要に応じて、

「先生も助かりました」

「教室がきれいになって、みんなが気持ちよく使えます」

と、その行動によって生まれた結果や教師の感謝を添えます。

笑顔、頷き、親指を立てるなど、言葉以外の方法もあります。

ハイタッチやグータッチなどの身体接触は、本人が心地よく受け取れる場合に限って行います。

【関連記事】情緒学級の関係性づくり|できたことを一緒に喜ぶことから始める

叱り方は別に考える

問題行動があったときも、大人の解釈だけで頭ごなしに叱らないことが大切です。

安全に関わる場面では、まず行動を止める必要があります。

その後、落ち着いてから本人の話を聞き、

  • 何がいけなかったのか
  • なぜ安全上問題になるのか
  • 次はどうすればよいのか

を具体的に伝えます。

叱り方や問題行動への対応については、別の記事で詳しく解説しています。

【関連記事1】情緒学級での叱り方|問題行動があったときの聴き方と伝え方

【関連記事2】情緒学級で問題行動をどう見るか|前後関係から見立てを作るポイント

保護者には「事実・対応・今後」をセットで伝える

保護者への連絡では、学校で見られた子どもの姿を伝える場面が多くなります。

その際は、事実を歪めずに伝えることが基本です。

ただし、事実だけを淡々と並べると、保護者によっては、子どもや家庭を責められているように感じることがあります。

声のトーンや話す速さを落ち着かせ、相手が内容を受け取りやすい雰囲気を作ります。

前後の状況も含めて具体的に伝える

問題となる行動だけを切り取るのではなく、次の内容を整理して伝えます。

  • その前に何があったのか
  • 子どもがどのような行動をしたのか
  • 学校がどのように対応したのか
  • 現在はどのような様子なのか
  • 今後どのように支援する予定なのか

例えば、「授業に参加できませんでした」とだけ伝えるのではなく、

算数の授業で問題を見た後に手が止まり、席から離れました。声をかけると「難しい」と話していたため、問題を一つに減らし、教師と一緒に始めました。その後は2問取り組むことができました。

と伝える方が、学校での姿と対応が分かります。

【関連記事】情緒学級で子どもの姿を記録するには?見立てにつながる簡単メモの残し方

保護者が確認できる余地を残す

学校から一方的に説明して終えるのではなく、

  • 気になる点はないか
  • 家庭で似た姿がないか
  • 伝えた内容に分かりにくいところがないか

を確認します。

ただし、家庭に原因や責任を求めるような聞き方は避けます。

学校で見られた姿を共有し、支援を考えるための情報を交換するという姿勢が大切です。

問題行動やけが、緊急対応などの重要な内容は、文章だけでなく電話も併用するなど、学校の方針に沿って適切な方法を選びます。

保護者へ気になる姿を伝える方法については、別の記事で詳しく紹介しています。

【関連記事】保護者に気になる姿を伝える言い方|責めずに相談する考え方と文例

ポジティブな姿も積極的に共有する

保護者への連絡が、課題や問題があったときだけにならないようにします。

  • 自分から活動を始められた
  • 友達に優しく声をかけていた
  • 苦手なことにも挑戦できた
  • 以前より落ち着いて過ごせた

といった成長や頑張りも積極的に伝えます。

問題があるときだけ連絡する関係よりも、普段から小さな成長を共有できている関係の方が、難しい内容も話し合いやすくなります。

ポジティブな姿を伝えるメッセージカードの実践については、別の記事で紹介します。

【関連記事】情緒学級の保護者対応で大切なこと|子どもの頑張りを共有する関係づくり

同僚には「必要な情報と役割」を適切なタイミングで伝える

同僚への伝え方では、主に次の内容を扱います。

  • 子どもの様子や支援方法の情報共有
  • 授業や行事の計画
  • 役割の依頼
  • 支援方法の提案
  • 緊急時の報告

同僚への伝達で最も避けたいのは、必要な情報や役割が共有されないことです。

一方で、すべての情報を全職員へ細かく伝えればよいわけでもありません。

基本は、必要な情報を、必要な相手へ、必要な範囲で伝えることです。

個人情報の扱いについては、学校や自治体のルールに従います。

【関連記事】情緒学級担任が4月からやっておきたい年間準備|事務・予定・情報共有で崩れないために

安全や支援に関わる情報は早めに共有する

次のような内容は、その日のうちに必要な職員へ共有します。

  • 安全に関わる出来事
  • けがやトラブル
  • 保護者対応に関わること
  • 翌日以降の支援に影響すること
  • 他の職員が知らないと対応が変わること
  • 管理職への報告が必要なこと

経験の浅いうちは、どこまで共有すべきか迷うこともあります。

その場合は、一人で判断を抱え込まず、主任や管理職へ相談します。

情報共有は、子どもの安全と支援の一貫性を守り、担任一人が責任を抱え込まないためにも必要です。

【関連記事】情緒学級で子どもとの約束を共有するには?担任だけのルールにしないために

計画や提案は前もって伝える

授業や行事の計画は、直前ではなく、相手が確認や修正をできる余裕を持って伝えます。

合同授業であれば、詳しい指導案でなくても、

  • 授業のおおまかな流れ
  • 教師の役割
  • 子どものグループ
  • 教具の場所
  • 活動に参加しにくい子どもへの対応

などを簡単にまとめておくと、現場で動きやすくなります。

文書を渡すだけでは役割が伝わりにくい場合は、

「この場面でマットの準備をお願いします」

「このグループの様子を見てもらえると助かります」

と、口頭でも具体的に伝えます。

合同授業の略案や役割分担については、別の記事で詳しく紹介します。

方法を増やしすぎない

重要な連絡では、文書、口頭、校内システムなどを組み合わせることが有効です。

ただし、同じ内容を毎回複数の方法で繰り返すと、

  • どれが最新版か分からない
  • 重要な連絡が埋もれる
  • 確認の負担が増える

といった問題も起こります。

基本となる共有場所を決めたうえで、重要な内容や直前の役割確認だけ口頭でも補うなど、情報の重要度に応じて調整します。

しつこく確認しすぎると、相手の動きを細かく管理する形にもなります。

抜け漏れを防ぐことと、相手を信頼して任せることのバランスを考えます。

【関連記事】情緒学級担任が同僚と関係を作るには?相談しやすいチームを作る考え方

感謝と確認を伝える習慣が関係性を作る

情緒学級担任の仕事は、担任一人だけで完結するものではありません。

子ども本人、保護者、交流学級担任、支援員、専科教員、管理職など、多くの人との協力によって成り立っています。

協力してもらったときや、情報を共有してもらったときには、感謝を言葉にします。

心の中で感謝していても、言葉にしなければ相手には伝わりません。

また、何かを伝えた後には、必要に応じて確認することも大切です。

確認は、相手を疑うために行うのではありません。

小さな認識のずれを減らし、子どもへの支援や仕事全体を円滑に進めるために行います。

【関連記事】情緒学級担任の役割とは?|子ども・保護者・学校をつなぐ仕事

まとめ

情緒学級担任の伝え方で大切なのは、話した時点で「伝えた」と考えないことです。

  • 何のために伝えるのか
  • 一度に何を伝えるのか
  • どの方法で伝えるのか
  • 相手にどのように受け取られたか
  • 次に必要な行動が分かっているか

まで考えます。

子どもには、短く、ゆっくり、見える形で伝えます。

保護者には、事実だけでなく、学校の対応や今後の見通しもセットで伝えます。

同僚には、必要な情報と役割を、適切な相手へ適切なタイミングで共有します。

そして、子ども、保護者、同僚の誰に対しても、感謝や承認を具体的な言葉で伝えます。

伝え方を少し丁寧にすることは、単に会話の印象をよくするためだけのものではありません。

小さな誤解や抜け漏れを減らし、子どもへの支援と情緒学級担任の仕事全体を円滑にするための、大切な土台になります。

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