今回は、情緒学級の担任が保護者と関係性を作るうえで大切にしたいことをまとめます。
情緒学級の担任をしていると、通常学級以上に保護者とこまめに情報共有をする場面があります。
子どもの学校での様子。
家庭での様子。
困っていること。
できるようになってきたこと。
友達との関わり。
交流学級での過ごし方。
行事や学習への参加の仕方。
こうしたことを、学校と家庭で共有しながら、子どもの成長を支えていくことになります。
保護者対応というと、何か特別な話し方や、うまい伝え方が必要だと思われるかもしれません。
もちろん、伝え方に気を配ることは大切です。
ただ、それ以上に大切なのは、日頃から子どもの姿を丁寧に見て、その頑張りや成長を具体的に保護者と共有していくことだと思っています。
保護者は、子どものことを長く見てきた人である
まず大前提として、保護者は子どものことを長く見てきた人です。
子どもの特性。
困り感。
得意なこと。
苦手なこと。
家庭での過ごし方。
これまでにうまくいった関わり方。
逆に、うまくいかなかった関わり方。
そうしたものを、実感を伴って知っていることが多いです。
もちろん、保護者がすべてを分かっているという意味ではありません。
ただ、少なくとも子どもの家庭での姿や、これまでの育ちについては、学校よりも長く見てきた存在です。
一方で、教師には教師の見え方があります。
学校という集団の中で、子どもがどのように過ごしているのか。
授業中にどのような場面で困りやすいのか。
友達との関わりの中で、どのような姿が見られるのか。
交流学級ではどのような様子なのか。
支援があると、どのように取り組みやすくなるのか。
これは、学校だからこそ見える姿です。
つまり、保護者と教師は、同じ子どもを違う角度から見ています。
どちらかが上という話ではありません。
家庭での姿と学校での姿を持ち寄りながら、子どもにとってよりよい関わり方を一緒に考えていくことが大切です。
【関連記事】情緒学級担任の役割とは?|子ども・保護者・学校をつなぐ仕事
信頼関係は、日々の小さな共有から作られる
保護者との信頼関係は、懇談会や大きな面談だけで一気に作るものではありません。
むしろ、日々の小さな共有の積み重ねによって作られていきます。
たとえば、連絡帳でのやりとり。
メッセージカード。
送り迎えのときの短い会話。
学習プリントへの一言コメント。
電話や面談での情報共有。
こうした小さなやりとりの中で、保護者は少しずつ感じていきます。
「学校でも、我が子のことを見てもらえている」
「困ったときだけではなく、頑張っている姿も見てもらえている」
「担任は、この子のことを理解しようとしてくれている」
この感覚が、保護者との関係性の土台になります。
特に情緒学級では、保護者が学校からの連絡に身構えていることもあります。
これまでに、注意された経験。
謝る場面が多かった経験。
「また何かあったのかな」と感じてしまう経験。
そうした積み重ねがある場合、学校からの連絡がネガティブなものばかりになると、保護者にとって大きな負担になります。
だからこそ、問題が起きたときだけ連絡するのではなく、日頃から子どもの頑張りや成長を伝えておくことが大切です。
【関連記事】情緒学級で子どもに見通しを持たせる支援|予定・ゴール・困った時の動き方を示す
頑張りは、具体的な姿で伝える
保護者に子どもの頑張りを伝えるときは、できるだけ具体的な姿で伝えるとよいです。
「今日も頑張っていました」
「落ち着いて過ごせました」
「よくできていました」
こうした言葉も悪くはありません。
ただ、これだけでは保護者が学校での姿をイメージしにくいことがあります。
たとえば、次のように伝えると、子どもの姿が見えやすくなります。
「今日は交流学級の算数で、分からない問題があったときに、自分から『ヒントをください』と言うことができました。」
「休み時間に友達と遊んでいて、思い通りにならない場面がありましたが、一度その場を離れて気持ちを切り替えることができました。」
「給食の準備で、自分の仕事が終わったあとに、友達の分まで手伝おうとする姿がありました。」
「プリントの途中で手が止まりましたが、声をかけると最後まで取り組むことができました。」
このように、具体的な場面で伝えると、保護者は学校での様子をイメージしやすくなります。
また、教師が子どものどこを見ているのかも伝わります。
大切なのは、印象ではなく、具体的な事実で伝えることです。
「落ち着いていました」だけではなく、どの場面で、どのように落ち着いていたのか。
「頑張っていました」だけではなく、何を、どのように頑張っていたのか。
ここを伝えることで、保護者との信頼関係は作りやすくなります。
【関連記事】情緒学級の関係性づくり|できたことを一緒に喜ぶことから始める
気になることも、早めに共有しておく
もちろん、良いことだけを伝えていればよいわけではありません。
学校生活の中で気になる姿があれば、それも保護者と共有する必要があります。
ただし、伝え方には配慮が必要です。
懇談会まで何も伝えず、そこで初めて気になることをまとめて伝えると、保護者にとっては負担が大きくなります。
「そんなことがあったなら、もっと早く教えてほしかった」
「学校ではうまくいっていると思っていた」
「急に悪い話をされた」
このように受け止められてしまうこともあります。
気になることほど、日頃からこまめに共有しておくことが大切です。
ただし、ネガティブな情報ばかりを伝えるのは逆効果です。
まずは、できていることや頑張っていることを共有する。
そのうえで、これから伸ばしていきたいことを相談する。
この流れがよいと思います。
たとえば、
「最近、授業の最初は落ち着いて参加できる時間が増えてきました。一方で、後半になると疲れが出て、席を離れたくなることがあります。学校では、少し休憩を入れながら最後まで参加できるように支援しています。」
「友達と関わりたい気持ちはとても出てきています。ただ、思いが強くなったときに言葉がきつくなることがあります。今は、困ったときに使える言い方を一緒に練習しているところです。」
このように、今できていることを土台にして、次に伸ばしたいことを伝えると、保護者も受け止めやすくなります。
「ここができていません」と伝えるよりも、
「ここが伸びると、もっと学校生活が過ごしやすくなりそうです」と伝える。
この意識は大切です。
【関連記事】保護者に気になる姿を伝える言い方|責めずに相談する考え方と文例
トラブル時ほど、事実を丁寧に伝える
学校生活では、どうしてもトラブルが起きることがあります。
友達とのけんか。
物の破損。
怪我。
気持ちが崩れてしまった場面。
約束を守れなかった場面。
こうしたときに大切なのは、下手に隠そうとしないことです。
起こったことを、できるだけ時系列で整理して伝える。
誰が、どの場面で、何をしたのか。
そのとき教師はどう対応したのか。
その後、子どもにどのような事後指導をしたのか。
今後、学校ではどのように支援していくのか。
このあたりを丁寧に伝えることが大切です。
学校側の見守りや対応が十分でなかった場合は、その点についてもきちんと伝え、必要であれば謝ることも必要です。
ただし、必要以上にへりくだるという意味ではありません。
事実を整理し、学校としての対応を伝え、今後の支援につなげるということです。
また、保護者を巻き込むようなトラブル対応を、担任一人で抱えるのは避けた方がよいです。
学年主任、特別支援教育コーディネーター、管理職などに共有し、学校として対応することが大切です。
保護者対応は、担任個人だけで背負うものではありません。
学校として子どもを見ている、学校として支えているという形を作ることも、保護者との信頼関係につながります。
【関連記事】情緒学級で問題行動をどう見るか|前後関係から見立てを作るポイント
個別の教育支援計画から、保護者の思いを知る
保護者との関係性を作るうえで、個別の教育支援計画に目を通しておくことも大切です。
個別の教育支援計画には、子どもの実態だけでなく、保護者の願いや、これまでの支援の経緯が書かれていることがあります。
子どもにどのように学校で過ごしてほしいのか。
どのような力を伸ばしてほしいと考えているのか。
家庭ではどのような困り感があるのか。
これまで、どのような支援を受けてきたのか。
こうした情報は、保護者との関係づくりの入口になります。
もちろん、書かれていることがすべてではありません。
保護者の思いや子どもの姿は、年齢や環境によって変化していきます。
それでも、年度初めに個別の教育支援計画を読んでおくことで、保護者がどのような願いを持っているのかを知るきっかけになります。
また、前年度の担任や関わりのあった先生から話を聞くことも有効です。
その保護者とどのようにやりとりしてきたのか。
子どものどのような姿を大切にしてきたのか。
家庭とはどのような連携をしてきたのか。
こうした情報を知っておくと、年度初めの関係づくりがしやすくなります。
たとえば、保護者に対して、
「昨年度の担任の先生からも、〇〇さんは絵を描くことが好きだと聞いていました。今日はその得意なことを活かして、係活動の掲示づくりを頑張っていました。」
このように伝えることができます。
これは単なる情報共有ではありません。
保護者にとっては、担任だけでなく、学校全体で我が子のことを見てくれていると感じるきっかけになります。
【関連記事】個別の教育支援計画・指導計画を読むときのポイント|子どもと保護者理解につなげる
約束や制限は、保護者にも共有しておく
情緒学級では、子どもが安心して過ごすために、個別の約束やルールを決めることがあります。
たとえば、気持ちが崩れたときの休憩場所。
交流学級に行くときの約束。
友達との関わり方。
授業に参加する時間の調整。
刺激が強い場面での過ごし方。
こうした約束や支援は、子どもにとって必要な場合があります。
ただし、保護者が知らないところで学校生活上の制限や約束がどんどん増えていくのは避けた方がよいです。
学校ではどのような支援をしているのか。
なぜその約束が必要なのか。
どのような姿を目指しているのか。
約束を守れているときには、どのように認めているのか。
このあたりは、保護者にも共有しておくとよいです。
個人的には、約束や制限はできるだけ少なく、シンプルな方がよいと思っています。
約束を増やすと、子どもも大変になります。
そして、教師側もそれを管理し続ける必要があります。
本当に必要な約束は決める。
ただし、増やしすぎない。
守れたときには、子どもの頑張りとして認める。
不要になってきたら、少しずつ外していく。
このような考え方が大切です。
【関連記事】情緒学級で個別の約束事を作るときの考え方|ルールを増やす前に確認したいこと
子どもの頑張りを、家庭でも支えてもらう
学校で子どもが頑張っていることを保護者に伝えると、家庭でもその頑張りを支えてもらいやすくなります。
たとえば、授業中に分からない問題があったとき、以前は不穏になっていた子が、少しずつ「分かりません」「手伝ってください」と言えるようになってきたとします。
このとき、学校だけで完結させるのではなく、
「今日は、分からない問題があったときに、自分から助けを求めることができました。ご家庭でも、もし本人が学校の話をしたら、その頑張りを聞いてあげてください。」
このように伝えることができます。
子どもにとっても、学校での頑張りを家庭でも認めてもらえることは大きな意味があります。
また、保護者にとっても、我が子が学校でどのように成長しているのかを知ることは安心につながります。
ただし、保護者に過度な負担を求める必要はありません。
家庭でも練習してください。
毎日確認してください。
必ず声をかけてください。
このような伝え方になると、保護者にとって負担が大きくなる場合があります。
そうではなく、
「もし話題に出たら聞いてあげてください」
「ご家庭でも同じような場面があれば、少し褒めてもらえるとありがたいです」
「学校ではこういう声かけでうまくいったので、参考になればと思います」
くらいの温度感で共有するとよいです。
学校での支援を家庭に押しつけるのではなく、子どもの成長を一緒に見守るために共有する。
この姿勢が大切です。
保護者対応は、特別な話術ではなく積み重ねである
保護者対応というと、どうしても難しく考えがちです。
うまく話さなければいけない。
失礼がないようにしなければいけない。
トラブルにならないようにしなければいけない。
もちろん、丁寧に対応することは大切です。
ただ、情緒学級の保護者対応で本当に大切なのは、日々の積み重ねだと思います。
子どもの姿を見る。
頑張りを具体的に伝える。
気になることも早めに共有する。
保護者の思いを知ろうとする。
学校での支援を分かりやすく伝える。
困ったときは一人で抱えず、学校として対応する。
こうしたことを、日々少しずつ積み重ねていくことが、保護者との信頼関係につながります。
保護者対応は、担任が保護者をうまく動かすためのものではありません。
子どもの成長を一緒に見ていくための関係づくりです。
そのためには、まず子どもの頑張りを見つけること。
そして、その頑張りを保護者に具体的に伝えること。
ここから始めるのがよいと思います。