保護者・校内連携

情緒学級で子どもとの約束を共有するには?担任だけのルールにしないために

情緒学級で子どもとの個別の約束を共有するときに大切なこと

情緒学級では、子どもが安心して過ごすために、個別の約束を作ることがあります。

ここでいう「個別の約束」とは、学級全体のルールではなく、その子が安心して活動に参加するために、担任と子どもで確認している個別の対応方法のことです。

たとえば、クールダウンの約束、困ったときの伝え方、活動に入れないときの参加の仕方、交流学級で不安になったときの動き方などがあります。

こうした約束は、子どもを特別扱いするためのものではありません。

子どもが気持ちを立て直し、本来取り組むべき活動に戻るための手立てです。

だからこそ、担任と子どもだけで約束を作って終わりにするのではなく、必要な大人が同じ方針で関われるように共有しておくことが大切です。

個別の約束は、子どもが活動に戻るための手立て

情緒学級の子どもの中には、気持ちが不安定になると、その場で行うべきことに取り組むことが難しくなる子がいます。

大きな声を出してしまう、涙が出る、固まって動けなくなる、教室から出ようとする、活動に入れなくなるなど、表れ方は子どもによってさまざまです。

そのようなときに、何も決めていない状態でその場その場の対応をすると、子どもも大人も混乱しやすくなります。

そこで、あらかじめ個別の約束を作っておきます。

たとえば、

「不安になったら、決めた場所で少し休む」
「活動に入れないときは、まず見学から始める」
「困ったときは、カードで大人に知らせる」
「気持ちが落ち着いたら、担任と次の行動を確認する」

といった約束です。

これらは、罰や拘束ではありません。

その子が気持ちを立て直し、再び活動に向かうための補助具やガードレールのようなものです。

個別の約束は、複雑にしすぎない方が使いやすくなります。子ども本人が理解しやすく、実際の場面で使いやすいことが大切です。

内容も、運用方法も、評価の仕方も、できるだけシンプルにしておく方がよいと思います。

【関連記事】情緒学級で子どもに見通しを持たせる支援|予定・ゴール・困った時の動き方を示す

個別の約束には、予防のための約束と事後対応の約束がある

子どもとの個別の約束には、大きく分けると「予防・未然防止のための約束」と「不安定になった後の対応に関する約束」があります。

予防・未然防止のための約束とは、子どもが不安定になりにくいように、事前に見通しを持たせたり、活動への入り方を調整したりするものです。

たとえば、

「初めての活動は、先に流れを確認してから参加する」
「交流学級に入る前に、今日の予定を確認する」
「苦手な活動では、最初は見学から始めてもよい」
「困ったときはカードで知らせる」

といった約束です。

一方で、事後対応の約束とは、実際に気持ちが不安定になったときや、活動への参加が難しくなったときにどうするかを決めておくものです。

たとえば、

「不安が強くなったら、クールダウンスペースに移動する」
「教室から出た場合は、決めた場所で休む」
「涙が出たり、固まったりしたときは、無理に話さず少し時間を置く」
「落ち着いた後に、担任と次の行動を確認する」

といった約束です。

実際には、この二つは完全に分けられるものではありません。

予防のための約束が、結果的に事後対応にもつながることがあります。反対に、事後対応の約束を決めておくことで、子どもが安心し、未然防止につながることもあります。

そのため、きれいに分類すること自体が目的ではありません。

ただ、共有の重要度という点では、事後対応に関する約束は特に丁寧に共有しておく必要があります。

なぜなら、事後対応の約束は、子どもが不安定になっている場面で使われることが多いからです。

その場にいる大人が約束を知らないと、子どもにとっては「決めていたはずの方法が使えない」「困ったときの動き方が分からない」という状態になってしまいます。

特に、クールダウンの場所、移動の仕方、声かけの仕方、担任に知らせる基準などは、大人同士で共有しておきたいところです。

予防のための約束も大切ですが、子どもが不安定になった後の対応については、担任だけで抱え込まず、必要な大人が同じ基準で動けるようにしておくことが大切です。

【関連記事】情緒学級で個別の約束事を作るときの考え方|ルールを増やす前に確認したいこと

担任だけが約束を知っていると、対応がずれる

個別の約束は、担任と子どもの間だけで成立していれば十分というわけではありません。

情緒学級の子どもは、担任以外の大人とも関わります。

交流学級の担任、支援員の先生、専科の先生、管理職、養護教諭など、学校生活の中ではさまざまな大人が関わります。

そのときに、担任だけが子どもとの約束を知っている状態だと、対応がずれることがあります。

たとえば、担任とは「不安になったら決めた場所で休んでよい」と約束していたとします。

しかし、その約束を他の大人が知らなければ、子どもが休みに行こうとしたときに、

「勝手に教室を出てはいけません」
「今は戻りなさい」
「みんなと同じように参加しなさい」

と声をかけてしまうかもしれません。

もちろん、その大人に悪意があるわけではありません。約束を知らなければ、通常のルールに沿って対応しようとするのは自然なことです。

しかし、子どもにとっては、困ったときに使うはずだった方法が使えなくなったように感じることがあります。

「この方法で大丈夫」と思っていたものが通用しないと、子どもは不安定になりやすくなります。

子どもにとっては、「困ったときにこうすれば大丈夫」という見通しが持てることが安心につながります。

大人によって対応が変わると、その見通しが崩れてしまいます。

だからこそ、必要な大人が同じ方針で対応できるように、個別の約束を共有しておくことが大切です。

特に共有が必要な約束

何でもかんでも細かく共有すればよいわけではありません。

子どもの個人的な情報を広く知らせる必要はありませんし、共有する情報が多すぎると、かえって大事な点が伝わりにくくなることもあります。

ただし、次のような約束は、担任だけで抱え込まず、必要な大人に共有しておいた方がよいです。

まず、子どもが教室外へ移動する約束です。

たとえば、授業中に教室を出てクールダウンする、決めた場所で休む、別室に移動するなどの約束がある場合です。

このような約束は、その場にいる大人が知らないと、安全確認や声かけに迷いやすくなります。

次に、担任の目が届かない場所で行う約束です。

担任が直接見ていない場所で休む、交流学級で約束を使う、支援員の先生が対応する可能性がある、といった場合には、関係する大人に共有しておく必要があります。

また、特定の場所、道具、人との関わりに制限がある場合も共有が必要です。

たとえば、

「この場所には一人で行かない」
「この道具は担任と一緒に使う」
「この子とは距離を取る」
「不安定なときは、この活動には無理に参加しない」

といった内容です。

要するに、その約束を実行する過程で担任以外の大人が関わる可能性がある場合は、共有しておいた方がよいということです。

その場面に立ち会った大人が、対応に迷わないようにすることが目的です。

共有する内容は、約束の内容と大人の動き

個別の約束を共有するときは、細かい背景をすべて伝える必要はありません。

大切なのは、その場で大人がどう動けばよいかが分かることです。

共有する内容は、次のようなものに絞るとよいです。

「どんな場面で使う約束なのか」
「子どもは何をするのか」
「大人はどう関わるのか」
「避けたい対応は何か」
「担任に知らせる基準は何か」

たとえば、クールダウンの約束であれば、

「気持ちが高ぶったときに使う」
「子どもは廊下の決めた椅子で3分ほど休む」
「大人は近くで見守り、質問をしすぎない」
「無理に教室へ戻そうとしない」
「教室から離れようとしたら担任に知らせる」

というように共有します。

このくらい具体的にしておくと、担任以外の大人も動きやすくなります。

支援の手立てと、そのときの大人の動きが分かれば、一旦は十分です。

書面で残し、口頭でも短く確認する

共有方法としては、書面で残すことが基本になります。

口頭だけだと、後から確認しにくくなります。関係する大人が増えたときにも、同じ内容を伝え直す必要があります。

そのため、個別の約束については、簡単な書面にしておくとよいです。

ただし、書面を渡しただけで共有が終わったと思わない方がよいです。

文書に書いたつもりでも、読み手が重要だと受け取る部分は人によって違います。

そのため、特に大事な点は、短く口頭でも確認しておくと安心です。

定期的な打ち合わせがある場合は、その場で共有するとよいです。

そうでない場合でも、書面を渡すときに2〜3分だけ時間をもらい、

「こういう場面で使う約束です」
「このときは、まずこのように声をかけてください」
「ここまで来たら担任に知らせてください」

というように、要点だけ確認します。

書面と口頭の両方で共有しておくことで、約束の意図や大人の動きが伝わりやすくなります。

個人情報には注意する

個別の約束を共有するときは、個人情報への配慮も必要です。

共有する目的は、子どもの個人的な情報を広く知らせることではありません。

必要な大人が安全に、同じ方針で対応できるようにすることです。

そのため、共有する内容は、必要な人に、必要な範囲で行います。

たとえば、診断名、家庭の事情、過去のトラブルの詳細、感情的な評価などを広く共有する必要はありません。

共有すべきなのは、

「どんな場面で不安定になりやすいか」
「そのときどう対応するか」
「どこに移動するか」
「誰に知らせるか」
「どの対応は避けるか」

といった、実際の支援に必要な情報です。

子どもの個人情報を守りながら、必要な大人が対応に迷わないようにする。

このバランスが大切です。

共有方法に迷ったら管理職に相談する

個別の約束の中には、学校全体の運用に関わるものもあります。

たとえば、教室外でクールダウンする、別室を使う、支援員の先生が対応する、交流学級で個別の対応をする、といったものです。

こうした約束は、担任だけで判断しすぎない方がよい場合があります。

共有範囲や文書の扱いに迷う場合は、管理職や特別支援教育コーディネーターに相談します。

「誰まで共有するのか」
「文書はどこに置くのか」
「支援員の先生や交流学級担任にはどこまで伝えるのか」
「保護者にはどのように伝えるのか」
「校内で共通理解しておくべき内容か」

こうした点を確認しておくと、担任一人で抱え込まずに済みます。

特に、子どもが教室外へ移動する約束や、担任の目が届かない場所で過ごす約束については、学校として共通理解を持っておく方が安心です。

【関連記事】情緒学級担任が同僚と関係を作るには?相談しやすいチームを作る考え方

共有の場を作ることも大切

個別の約束は、必要になったときだけ共有するのではなく、定期的に確認する場があるとよいです。

たとえば、特別支援学級の打ち合わせや、支援員の先生との情報交換の場で、

「うちの学級のAさんは、今こういう約束で動いています」
「交流学級では、このように対応してもらえると助かります」
「クールダウンの場所を変更しました」

というように短く共有します。

このような共有があると、他の学級の先生も、

「うちの学級でも似たような約束があります」
「この対応で迷っていました」
「この場合はどうしていますか」

と話しやすくなることがあります。

情報共有は、放っておくと後回しになりやすい仕事です。

忙しい現場では、誰かが意図的に共有のきっかけを作らないと、細かいけれど大切な情報が流れてしまうことがあります。

個別の約束は、子どもの安心や安全に関わることがあります。

そのため、担任が意識して共有の優先度を上げておくことも大切です。

約束は作って終わりではなく、見直す

個別の約束は、一度作ったらずっと同じように使い続けるものではありません。

子どもの成長や状態に合わせて、見直していく必要があります。

最初はクールダウンが必要だった子が、少しずつ短い声かけで戻れるようになることもあります。

見学から参加していた活動に、少しずつ自分から入れるようになることもあります。

反対に、今までうまくいっていた約束が、その時期の状態や環境の変化によって合わなくなることもあります。

そのため、

「この約束は今も必要か」
「使い方は子どもに合っているか」
「大人の関わり方は適切か」
「もう少し本人に任せられる部分はあるか」
「別の方法に変えた方がよいか」

を定期的に見直していくことが大切です。

約束は、子どもを固定するためのものではありません。

子どもが安心して活動に向かい、少しずつできることを増やしていくための手立てです。

【関連記事】情緒学級の実態把握|子どもの姿を記録して見立てを作る方法

まとめ

情緒学級で子どもとの個別の約束を作るときは、担任と子どもだけで完結させないことが大切です。

個別の約束は、子どもが安心して活動に参加するための手立てです。

特に、クールダウンや教室外への移動、不安定になった後の対応に関する約束は、必要な大人が同じ基準で動けるように共有しておく必要があります。

共有する目的は、子どもの個人的な情報を広く知らせることではありません。

必要な大人が、安全に、同じ方針で対応できるようにすることです。

そのためには、書面で残し、必要に応じて短く口頭でも確認します。

共有範囲や文書の扱いに迷う場合は、管理職や特別支援教育コーディネーターにも相談します。

大人によって対応が変わると、子どもは不安定になりやすくなります。

反対に、必要な大人が同じ方針で関われると、子どもは「困ったときにこうすれば大丈夫」という見通しを持ちやすくなります。

個別の約束を担任だけで抱え込まず、必要な大人と共有しながら、子どもが安心して学校生活を送れるように支えていきたいところです。

-保護者・校内連携