情緒学級で子どもが問題行動を起こしたとき、どのように叱り、指導すればよいのでしょうか。
感情的に強い言葉を浴びせたり、大人の力で押さえつけたりすることは、叱ることとは違います。
叱る目的は、子どもに反省の言葉を言わせることではありません。起きたことを整理し、何が問題だったのかを理解できるようにし、次に同じような場面が起きたときの行動を一緒に考えることです。
もちろん、頭では分かっていても、実際のトラブル場面で落ち着いて対応するのは簡単ではありません。私自身も、教員になったばかりの頃から、いつでも適切に対応できていたわけではありません。
本記事では、問題行動が起きた後の基本的な対応手順を、実際の経験も交えながら解説します。
叱ることは、感情をぶつけることではない
問題行動が起きると、大人も驚いたり、腹が立ったり、焦ったりします。
しかし、大人が感情的になるほど、子どもも興奮しやすくなります。特に、すでに気持ちが高ぶっている子どもに長い説教をしても、話の内容はほとんど入っていきません。
その場で最優先するのは、安全を確保することです。
危険な行動が続いている場合は、短い言葉で制止します。
「離れます」
「その手を止めます」
「今は先生とこちらに行きます」
必要なことだけを簡潔に伝え、本格的な聴き取りや指導は、子どもが落ち着いてから行います。
教師が穏やかに接することは、問題行動を容認することではありません。落ち着いて対応することと、守るべき基準を明確に示すことは両立します。
まずは子どもが落ち着くのを待つ
問題行動が起きた直後は、すぐに理由を問いただしたくなるかもしれません。
しかし、子どもが興奮している状態では、自分の行動を振り返ったり、順序立てて説明したりすることが難しくなります。
まずは、安全な場所へ移動し、子どもが落ち着くのを待ちます。
落ち着く方法は子どもによって異なります。
- 静かな場所へ移動する
- 水を飲む
- 少し距離を取って待つ
- 信頼している職員と過ごす
- 言葉をかけず、近くで見守る
大切なのは、その場ですぐに結論を出そうとしないことです。
また、教師自身が子どものペースに巻き込まれていると感じた場合は、対応する大人を交代することも有効です。
「場所を変える」「人を変える」ことも対応の一つ
子どもが大きく興奮しているとき、担任一人で最後まで対応しようとすると、子どもと教師の双方が抜け出せなくなることがあります。
そのような場合は、場所を変えたり、対応する職員を変えたりします。
別の職員が関わることで、その場の流れが一度切れ、子どもが落ち着きやすくなることがあります。教師側も冷静さを取り戻せます。
これは、担任が責任を放棄するという意味ではありません。
子どもが落ち着いた後は、普段最も長く関わっている担任との関係へ戻していくところまでを、チームでの対応として考えます。
ただし、担任自身がまだ感情的になっている場合は、無理にすぐ引き継ぐ必要はありません。子どもと大人の双方が落ち着いた状態で、改めて関係をつなぎ直します。
こうした対応を行うためには、普段から職員同士が頼り合える関係をつくっておくことも大切です。
子どもの話を最後まで聴く
子どもが落ち着いたら、起きたことについて話を聴きます。
このときに大切なのは、大人がすでに状況を把握していると思っていても、最初から決めつけないことです。
まずは、子どもがその場面をどのように捉えていたのかを聴きます。
「何があったの?」
「その前は何をしていたの?」
「相手から何と言われたの?」
「そのとき、どう思ったの?」
「それからどうしたの?」
子どもの説明が、教師の見た事実や他の子どもの説明と食い違うこともあります。
それでも、最初から否定せず、まずは一通り聴きます。
客観的な事実と一致しているかどうかとは別に、「本人にはそのように見えていた」「本人はそのように受け取っていた」という認識自体が、行動を理解するための重要な情報になるからです。

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複数の子どもが関係している場合は、別々に聴く
友達同士のトラブルでは、最初から双方を同席させて話をさせない方がよい場合があります。
同じ場所で聴き取りをすると、相手の話に反応して再び興奮したり、相手の顔色を見て話を変えたりすることがあるからです。
まずは、それぞれの子どもから別々に話を聴きます。
可能であれば、職員が役割分担をし、同じ時間帯に双方の話を聴けるとよいでしょう。
ただし、最初に話した子どもの説明だけで結論を決めてはいけません。それぞれの話を聴き、周囲の子どもや職員が見ていたことも含めて、事実を整理していきます。
出来事を時系列で整理する
子どもの話を聴いた後は、出来事を順番に整理します。
口頭だけで整理することが難しい子どもには、紙やノートを使う方法が有効です。
例えば、次のような順番で確認します。
- その前に何があったか
- 相手が何を言ったり、したりしたか
- 自分はどう感じたか
- 自分はどのような行動を取ったか
- その結果、何が起きたか
「最初にAさんがこう言ったんだね」
「その言葉を聞いて、嫌な気持ちになったんだね」
「それから、Aさんを押したんだね」
「押されたAさんは転んで、腕をぶつけたんだね」
このように一つずつ確認すると、実際に起きたことと、本人の受け止め方や感情を分けて整理しやすくなります。
必要であれば、簡単な図や矢印、座席図などを書いてもよいでしょう。
実際の動きを簡単に再現した方が説明しやすい子どももいます。ただし、暴力行為や強い恐怖を伴う場面をそのまま繰り返させる必要はありません。
再び興奮する可能性がある場合や、本人が嫌がる場合は、図、人形、指差しなど、別の方法で確認します。

子どもの気持ちを受け止めることと、行動を認めることは違う
問題行動に至るまでには、子どもなりの理由があることが少なくありません。
嫌なことを言われた。
自分の物を取られた。
順番を抜かされたと思った。
何度言っても相手がやめてくれなかった。
こうした気持ちや認識は、丁寧に受け止める必要があります。
「それは嫌だったんだね」
「何度も言われて腹が立ったんだね」
と伝えることはできます。
しかし、子どもの気持ちを受け止めることと、その後の行動を認めることは別です。
「腹が立ったことは分かった。でも、相手を叩いてよいことにはならない」
「嫌だったことは先生にも伝わった。ただ、物を投げると周りの人がけがをする可能性がある」
このように、気持ちを否定せず、問題となった行動については明確に伝えます。
【関連記事】情緒学級で問題行動をどう見るか|前後関係から見立てを作るポイント
人格ではなく、具体的な行動を扱う
指導では、子どもの人格と行動を分けて考えます。
「あなたは乱暴な子だ」
「いつも悪いことばかりする」
「どうしてそんな子なの」
といった言葉は、問題となった行動ではなく、子ども自身を否定する表現です。
伝えるべきなのは、確認できた行動と、その結果生じた影響です。
「相手を押したことは、止めなければいけない行動です」
「椅子を蹴ると、近くにいる人がけがをする可能性があります」
「授業中に大声を出し続けると、周りの人が話を聞けなくなります」
単に「迷惑をかけた」とまとめるのではなく、誰にどのような影響があったのかを具体的に伝えます。
他の子どもが実際にけがをしたり、怖い思いをしたりしている場合は、その事実も軽く扱ってはいけません。
子どもの事情を丁寧に聴くことと、被害を受けた子どもの苦痛を重く受け止めることは、両立させる必要があります。
「してはいけない」で終わらず、代わりの行動を考える
問題行動を指摘するだけでは、次に同じ場面が起きたとき、子どもはどうすればよいのか分かりません。
「物に当たってはいけません」
「友達を叩いてはいけません」
と伝えるだけでなく、代わりに取れる行動を一緒に考えます。
例えば、次のような方法があります。
- その場から少し離れる
- 近くの教師に伝える
- 「やめて」と言う
- 別の場所で落ち着く
- 水を飲む
- 深呼吸をする
- 紙に気持ちを書く
- 対応する大人を変えてもらう

子ども自身が代替行動を考えられた場合は、その考えを認めます。
「次はその場から離れると言えたね」
「先生を呼ぶ方法を自分で考えられたね」
と伝えることで、自分で振り返り、次の行動を考えられたことを承認できます。
自分では思いつかない場合は、教師からいくつか提案し、本人と確認します。
ただし、約束やルールを増やせば解決するとは限りません。細かな決まりを増やしすぎると、子どもも職員も管理できなくなります。
約束やルールの作り方については、別の記事で詳しく解説します。
【関連記事】情緒学級で個別の約束事を作るときの考え方|ルールを増やす前に確認したいこと
謝罪をさせることだけを目的にしない
友達とのトラブルでは、最後に謝罪をさせることがあります。
しかし、「ごめんなさい」と言わせれば指導が終わるわけではありません。
本人が何について謝るのかを理解していなければ、謝罪は形式だけになります。また、子どもがまだ興奮している状態で無理に対面させると、再びトラブルになることもあります。
まずは双方の安全を確保し、それぞれの話を聴きます。
その上で、双方が落ち着き、何が起きたのかをある程度整理できた段階で、必要に応じて謝罪や関係修復の場を設けます。
謝罪を受けた側に、すぐ許すことを求める必要もありません。
関係修復は、その場で形式的に仲直りをさせることではなく、その後も安心して生活できる状態へ戻していくことです。
実践例|担任不在時に起きた取っ組み合いの喧嘩
私が担任していた学級ではありませんが、担任が出張で不在の日に、子ども同士の大きな喧嘩が起きたことがありました。
喧嘩は大人が見ていない場所で始まり、私たちが気付いたときには、双方が取っ組み合いになっていました。
まずは喧嘩を止め、安全を確保した
最初に行ったのは、双方を引き離し、それ以上けがが広がらないようにすることでした。
すぐに事情を問いただすのではなく、それぞれを別の場所へ移動させました。
けがをしている部分があったため、保健室で状態を確認し、必要な処置を行いました。
この段階では、長い指導はしていません。
子どもたちも興奮しており、まずは安全を確保し、体と気持ちの両方が落ち着くのを待つ必要があったからです。
職員が分かれて、双方から話を聴いた
子どもたちが少し落ち着いてから、職員がそれぞれ一人ずつについて話を聴きました。
喧嘩のきっかけ、相手にされたと感じていること、自分が取った行動、その結果起きたことを、順番に確認しました。
それぞれの言い分には違いがありましたが、最初からどちらか一方を悪いと決めつけず、双方の説明を聴きました。
その後、職員同士で情報を持ち寄り、実際に起きたことを整理しました。
双方が落ち着いてから、謝罪の場を設けた
それぞれの子どもに、自分が取った行動のどこに問題があったのかを伝えました。
相手にも原因があったとしても、取っ組み合いになり、相手にけがをさせる可能性のある行動を取ったことは、別に考える必要があります。
双方がある程度落ち着き、自分の行動を振り返ることができた段階で、謝罪の場を設けました。
その場で謝罪させて終わりにするのではなく、翌日以降も安心して過ごせるよう、担任へ経緯と対応内容を引き継ぎました。
保護者には、起きたことと学校の対応を伝えた
双方の保護者には、連絡帳だけで済ませず、電話でも状況を説明しました。
説明した内容は、主に次の点です。
- いつ、どこで、何が起きたのか
- どのようなけががあったのか
- 学校でどのような処置をしたのか
- それぞれの子どもから、どのように話を聴いたのか
- 学校でどのような指導を行ったのか
- 謝罪や関係修復をどのように進めたのか
- 担任へどのように引き継ぐのか
また、大人が見ていない場面で喧嘩が大きくなったことについて、学校として重く受け止めていることも伝えました。
子ども同士のトラブルだからといって、すべてを子ども個人の責任として説明するのではなく、学校側の見守りや体制についても振り返る姿勢が必要だと考えたからです。
保護者の方々は、学校の説明と対応を受け止めてくださいました。
翌日、出張から戻った担任からも、
「不在の間にきちんと対応してもらえたので、保護者の方も特に怒っていなかった」
という話を聞きました。
ただし、このケースが大きな問題にならなかった理由を、当日の説明だけに求めることはできません。
もともと担任が、子どもや保護者との間に日頃から信頼関係を積み重ねていたことも、大きかったと思います。
トラブル対応は、何か一つの言葉や技術だけでうまくいくものではありません。
当日の安全確保、丁寧な聴き取り、職員間の連携、保護者への説明、担任による日頃の関係づくりが重なった結果として、問題が収まることがあります。
【関連記事】保護者に気になる姿を伝える言い方|責めずに相談する考え方と文例
好かれることより、信頼されることを目指す
指導は、子どもに好かれるために行うものではありません。
必要なことを伝えれば、子どもがその場では不満そうな表情を見せることもあります。
しかし、子どもの話を丁寧に聴き、守るべき基準を一貫して示す大人は、少なくとも「この先生が何を大切にしているのか分かる人」として認識されます。
私は、子どもに好かれることよりも、信頼されることを優先していました。
とはいえ、必要な指導をしたことによって、子どもとの関係が決定的に崩れたという経験はほとんどありません。
子どもの人格を否定せず、話を聴き、問題となった行動を具体的に扱えば、指導と関係づくりは両立できます。
問題行動があったときの基本的な対応手順
最後に、問題行動が起きてから指導を終えるまでの基本的な流れを整理します。
- 子どもと周囲の安全を確保する
- 必要に応じて、場所や対応する職員を変える
- けががあれば、治療や状態確認を優先する
- 子どもが落ち着くのを待つ
- 関係する子どもから、それぞれ別に話を聴く
- 起きたことを時系列で整理する
- 気持ちや認識を受け止める
- 問題となった行動と、その影響を具体的に伝える
- 次に取れる代替行動を一緒に考える
- 必要に応じて、謝罪や関係修復を進める
- 担任や関係職員へ情報を共有する
- 保護者へ、事実と学校の対応を伝える
- その後の子どもの様子を継続して確認する

実際の対応は、問題行動の内容、子どもの状態、けがの有無、過去の経緯などによって変わります。
すべてのトラブルに同じ手順を機械的に当てはめることはできません。
それでも、
「安全を確保する」
「落ち着いてから話を聴く」
「人格ではなく行動を扱う」
「禁止だけで終わらず、次の行動を考える」
という基本は、多くの場面で共通します。
叱ることは、子どもを大人の力で押さえつけることではありません。
子どもが起きたことを整理し、次の場面でよりよい行動を選べるように支えることです。
一度の指導ですぐに行動が変わるとは限りません。必要に応じて記録を取り、職員や保護者と情報を共有しながら、繰り返し支援していくことが大切です。