通知表の所見を書く時期になると、
「何を書けばよいか思い出せない」
「一人ひとりの文章を考えるだけで時間がかかる」
「毎回、似たような表現になってしまう」
と悩むことがあります。
特に、学期末になってから一人ひとりの姿を思い出し、ゼロから文章を作ろうとすると、通知表作成はかなり重たい仕事になります。
私自身は、通知表の所見を「学期末に文章を考える仕事」とはあまり考えていませんでした。
普段から残している簡単な記録を見返し、
この期間にどのような取り組みをして、どのような変化が見られたのか
を選び、保護者や子ども本人に伝わる文章に整理する。
基本的には、その作業です。
この記事では、情緒学級の通知表所見を書くときに私が意識していたことと、日々の記録から所見を組み立てる方法を紹介します。
まずは勤務校の通知表の書き方を確認する
最初に確認しておきたいのは、勤務校の通知表の様式や作成方法です。
通知表は全国で完全に統一された様式があるわけではありません。
学校や自治体によって、
記入する欄の大きさ。
教科ごとに文章を書くのか。
生活面などをまとめて書く欄があるのか。
どの程度具体的に記述するのか。
表記や文末をどのようにそろえるのか。
といった違いがあります。
そのため、初めて情緒学級を担当する場合は、まず校内の作成要領やルールを確認します。
閲覧できる過年度の通知表があれば、文章をそのまま真似するのではなく、
「この学校では、どのくらいの分量で、どの程度具体的に書いているのか」
を確認する材料として使うとよいと思います。
ただし、過年度の所見はあくまで参考です。
教師によって子どものどこに注目しやすいかには違いがありますし、同じ子どもでも学期が変われば姿は変わります。
最終的には、自分が実際に見た子どもの姿をもとに書くことが大切です。
【参考資料:文部科学省 学習指導要領「生きる力」学習評価に関するQ&A】
通知表所見は、学期末に一から考えない
通知表作成の負担を減らすうえで、私が最も大切だと思っているのは、
学期末に一から思い出して書こうとしないこと
です。
情緒学級では、一人ひとりの子どもについて日常的にさまざまな出来事があります。
学習中の姿。
交流学級での様子。
友達との関わり。
気持ちが高ぶったときの対応。
できるようになったこと。
教師が試した支援と、その結果。
こうした出来事をすべて記憶しておき、数か月後に正確に思い出すのは難しいです。
そこで、普段から短いメモを残しておきます。
ただし、通知表のためだけに新しい記録を作る必要はありません。
少なくとも私は、通知表のためだけに別の記録を増やすのではなく、普段の実態把握や支援の見直しのために残していた記録を、そのまま通知表作成にも利用していました。

記録を取る具体的な方法については、別の記事で詳しくまとめています。
【関連記事:情緒学級で子どもの姿を記録するには?見立てにつながる簡単メモの残し方】
子どものどのような場面を見ればよいか分からない場合は、実態把握の記事も参考になると思います。
【関連記事:情緒学級の実態把握|子どもの姿を記録して見立てを作る方法】
記録したことを全部書く必要はない
記録を残していると、学期末にはそれなりの量になります。
しかし、その内容をすべて通知表に書く必要はありません。
むしろ大切なのは、
「この期間の子どもの成長を伝えるうえで、何を選ぶか」
です。
私は、記録を見返しながら、主に次のような観点で所見に使う内容を選んでいました。
- 学期の中で変化が見られたこと
- その子の目標や学習内容と関係していること
- 本人や保護者に伝える価値があること
- 印象ではなく、具体的な行動や姿で説明できること
- 通知表という「残る文章」で伝えるのに適していること
すべての教科、すべての活動について同じ密度で書こうとすると、文章量も作業量も増えてしまいます。
学校の様式にもよりますが、私の場合は、特に伝えたい変化を一つか二つ程度選び、その内容を具体的に書くことが多かったです。
ここで、日頃から設定している目標も役立ちます。
「今学期は何をできるようにしたかったのか」
「そのためにどのような支援をしていたのか」
「実際にどのような変化が見られたのか」
がつながっていると、所見に書く内容も選びやすくなります。

【関連記事:情緒学級で子どもの目標をどう立てる?個別の指導計画を日々の支援につなぐ方法】
「頑張りました」だけで終わらせず、具体的な姿を書く
所見を書くときに私が意識していたのは、
「どのような取り組みをしていたのか」と「どのようなことができるようになったのか」をセットにすること
です。
たとえば、
「算数を頑張りました」
だけでは、何を頑張ったのかが分かりません。
そこで、
「繰り上がりのある足し算では、位をそろえて筆算する練習を重ねました。初めは一つずつ手順を確認していましたが、学期後半には手順表を見ながら自分で計算を進められる問題が増えました。」
と書けば、
何に取り組んだのか。
どのような支援や練習をしたのか。
以前と比べて何が変わったのか。
が伝わります。
情緒面についても同じです。
たとえば、
「気持ちを切り替えられるようになりました」
だけではなく、
「気持ちが高ぶったときには、教師の声かけを受けて休憩場所へ移動する練習をしました。学期後半には、自分から休憩カードを示し、落ち着いてから活動へ戻ろうとする姿が見られるようになりました。」
と書けば、成長した内容が具体的になります。
数字で表せる内容であれば、
「10問中○問できるようになった」
「一人で取り組める時間が○分程度まで伸びた」
などの数字も一つの材料になります。
ただし、情緒学級で見られる成長のすべてを数字で表せるわけではありません。
大切なのは数字を入れることではなく、
あとから振り返っても、どのような姿だったのか分かる事実を書くこと
です。
「以前の姿→取り組み→現在の姿」で考えると書きやすい
所見を書くときに迷ったら、
以前の姿
↓
取り組んだこと・使った支援
↓
現在見られる姿
の順番で記録を並べてみると整理しやすくなります。

必ずしも、この三つをすべて通知表の文章に入れる必要はありません。
しかし、書く前に教師側でこの流れを整理しておくと、
「この子は何が変わったのか」
を考えやすくなります。
これは通知表作成だけでなく、日々の支援を振り返るうえでも役立ちます。
たとえば、
「次に何をすればよいか分からず、活動に移るまで時間がかかっていた」
という姿があった子に対して、予定を視覚化したところ、
「自分で次の活動を確認し、動き出せる場面が増えた」
のであれば、単に「動けるようになった」という結果だけでなく、
どのような条件や支援が機能したのか
も見えてきます。
この情報は、次の学期の支援を考える材料にもなります。
交流学級や専科での姿も確認する
情緒学級に在籍する子どもは、すべての授業を情緒学級で受けているとは限りません。
交流学級。
専科の授業。
学年での活動。
学校行事。
こうした場面では、情緒学級担任が直接見ていないこともあります。
その場合、通知表を書く直前になって、
「交流ではどうでしたか?」
と慌てて聞くのではなく、日頃から必要な情報を共有できる関係を作っておくと楽になります。
特に所見の材料を依頼する場合は、学期末ギリギリではなく、少し余裕を持って交流学級担任や専科の先生へお願いしておきます。
交流学級との予定共有や、所見材料を集める方法については別の記事で詳しくまとめています。
【関連記事:情緒学級担任と交流学級担任の連携|予定・様子・所見をどう共有するか】
通知表と懇談会で伝える内容を分ける
子どもの様子をよく見ているほど、
「あれも伝えたい」
「このことも大事だった」
と、書きたい内容が増えていきます。
しかし、通知表には記入できるスペースがあります。
また、すべての情報が文章で伝えることに向いているわけでもありません。
私は、
通知表に残す内容と、懇談会などで口頭で伝える内容を分けて考える
ようにしていました。
通知表には、一定期間の学習や成長について、あとから読んでも意味が分かる内容を残します。
一方で、
「この場面では、実はこんなやりとりがあった」
「この支援を始めた背景にはこういう出来事があった」
「学校ではこう見えているが、家庭ではどうだろう」
といった内容は、文章だけで一方的に伝えるより、保護者の話を聞きながら説明した方がよい場合があります。
そうした内容は、無理に所見へ詰め込まず、懇談会や日頃の情報共有へ回します。
もちろん、保護者にとって重要なことを学期末の懇談会まで伝えない、という意味ではありません。」
気になることほど、普段から共有しておくことが大切です。
【関連記事:情緒学級の保護者対応で大切なこと|子どもの頑張りを共有する関係づくり】
通知表だけで子どもの学校生活をすべて説明しようとしない。
この意識を持っておくと、何を所見に書くかもかなり選びやすくなります。
日々の記録は、通知表だけで終わらせない
日々の記録を残しておくメリットは、通知表が書きやすくなることだけではありません。
同じ記録は、
個別の指導計画の見直し。
保護者との懇談。
交流学級や支援員との情報共有。
年度末の振り返り。
次年度の担任への引き継ぎ。
などにも利用できます。
つまり、
記録→通知表
だけではありません。
一度残した事実を、
記録
→ 支援の見直し
→ 通知表
→ 保護者との共有
→ 年度末の整理
→ 次年度への引き継ぎ
と使っていくことができます。
通知表のためだけに記録を取るのであれば、確かに仕事が一つ増えてしまいます。
しかし、子どもの姿を理解し、支援を考えるために必要な記録を一度残し、それを複数の業務で使うのであれば、話は変わります。
学期末になって、
「何を書けばよいだろう」
と一から考える時間も減らせます。

年間を通して、いつ頃から通知表や懇談、年度末の準備を進めるかについては、別の記事でまとめています。
【関連記事:情緒学級担任が4月からやっておきたい年間準備|事務・予定・情報共有で崩れないために】
所見を書くことは、支援を振り返る機会にもなる
通知表は、子どもの学校での様子や学習状況を本人や保護者へ伝えるためのものです。
そのため、教師自身の振り返りを通知表の主目的にする必要はありません。
ただし、所見を書くために記録を見返していると、
「この支援を始めてから、自分でできる場面が増えている」
「思っていたほど変化が見られていない」
「この目標は少し難しすぎたかもしれない」
といったことにも気付きます。
学習評価は、子どもに結果を伝えて終わりではありません。
子どもの学習状況を捉え、その後の指導や支援を改善していくためにも使うものです。
通知表を書く時期を、
子どもの成長をまとめると同時に、自分の支援を一度見直すタイミング
として利用すると、次の学期にもつなげやすくなります。
【参考資料:国立教育政策研究所「『指導と評価の一体化』のための学習評価に関する参考資料」】
まとめ|通知表所見は「思い出して書く」から「記録を整理する」へ
通知表の所見を学期末に一から考えようとすると、大きな負担になります。
しかし、普段から子どもの姿を簡単に記録しておけば、学期末に行うことは、
「何を書こう」
と考える作業から、
「この学期の成長を伝えるために、どの事実を選ぼう」
という作業に変わります。
まず勤務校の通知表の様式やルールを確認する。
日々の記録を残す。
その中から、この期間を代表する成長を選ぶ。
「どのような取り組みをして、どのような姿が見られるようになったのか」を具体的に書く。
そして、通知表に入りきらない内容は、懇談会や日頃の情報共有、次年度への引き継ぎなど別の方法で伝えます。
通知表の文章だけを効率よく書こうとするより、
普段の記録から、評価・通知表・懇談・引き継ぎまでを一つの流れとして考える
方が、結果として仕事の負担も減らしやすくなります。
そして何より、印象ではなく具体的な事実をもとに、
「この子は、この期間に何を頑張り、何ができるようになったのか」
を本人や保護者へ伝えやすくなります。