子ども理解・見立て

情緒学級の子どもとの関係性づくり|できたことを一緒に喜ぶことから始める

情緒学級では、子どもとの関係性づくりがとても大切です。

教室環境を整えること。

授業の流れを分かりやすくすること。

予定の見通しを持たせること。

これらももちろん大切ですが、最終的には、子どもが「この先生なら大丈夫」「困ったときに助けてもらえる」と感じられるかどうかが、日々の学校生活に大きく関わってきます。

ただし、関係性づくりとは、単に子どもに好かれることではありません。

優しくすること。

たくさん話すこと。

子どもの好きなことに付き合うこと。

もちろん、それらも大切な関わりの一つです。

しかし、それだけでは十分ではありません。

情緒学級の子どもとの関係性づくりでは、

・自分のことを見てくれている
・困ったときに助けてくれる
・できたことを一緒に喜んでくれる
・苦手なことを無理に押しつけない
・ダメなことはきちんと止めてくれる
・急に態度や基準が変わらない

という安心感を積み重ねていくことが大切です。

この記事では、情緒学級で子どもとの関係性を作るときに、担任が意識しておきたいことをまとめていきます。

関係性づくりは「好かれること」だけではない

子どもとの関係性づくりというと、「まずは子どもに好かれることが大事」と考える先生もいるかもしれません。

もちろん、子どもが先生に対して好意的な気持ちを持てることは大切です。

しかし、情緒学級では、好かれることだけを目指すと、かえって関係性が不安定になることがあります。

なぜなら、子どもにとって本当に必要なのは、「楽しい先生」や「何でも許してくれる先生」ではなく、安心して関われる大人だからです。

安心して関われる大人とは、たとえば次のような大人です。

・話を聞いてくれる
・自分の好きなことを覚えてくれる
・困ったときに助けてくれる
・頑張ったところを見つけてくれる
・約束を守ってくれる
・急に怒ったり態度を変えたりしない
・危ないことや人を傷つけることは止めてくれる

こうした関わりが積み重なることで、子どもは少しずつ安心して過ごせるようになります。

特に情緒学級の子どもの中には、大人に対して警戒心を持っている子もいます。

これまで学校生活の中で、叱られる経験やうまくいかなかった経験を重ねてきた子もいます。

そのような子に対して、いきなり深く踏み込もうとしても、うまくいくとは限りません。

まずは、予測できる関わりを積み重ねることが大切です。

毎日同じように挨拶する。

言ったことを守る。

約束を急に変えない。

無理に話させようとしない。

頑張ったところを具体的に伝える。

困っているサインに気づこうとする。

こうした小さな積み重ねが、関係性づくりの土台になります。

好きなこと・関心のあることから入る

子どもとの関係性を作るときに、最初のきっかけにしやすいのは、その子が好きなことや関心を持っていることです。

これは、通常学級でも特別支援学級でも同じです。

お絵描きが好きな子なら、一緒に絵を描いてみる。

ゲームが好きな子なら、そのゲームについて教えてもらう。

昆虫が好きな子なら、好きな昆虫の話を聞く。

電車、恐竜、キャラクター、工作、スポーツ、動画、音楽など、その子がよく話すことや、夢中になっているものを入り口にします。

ここで大切なのは、教師が子どもより詳しくなる必要はないということです。

むしろ、詳しくないからこそ、

「それってどういうものなの?」
「どこが面白いの?」
「先生にも教えて」

と聞くことができます。

子どもに教えてもらう姿勢で関わることは、かなり有効です。

自分の好きなことを大人が聞いてくれる。

自分の話を覚えてくれる。

前に話したことを、次の日にも話題にしてくれる。

こうした経験は、子どもにとって「この先生は自分のことを見てくれている」という感覚につながります。

ただし、注意点もあります。

子どもの好きなことに入っていくときに、教師が無理に上手になろうとしたり、子どもより詳しくなろうとしたりする必要はありません。

教師が元々得意なことなら問題ありませんが、子どもの得意分野で教師が張り合う必要はありません。

子どもが安心して話せること。

子どもが自分の好きな世界を大切にできること。

その世界に、教師が敬意を持って関わること。

これらの方が大切です。

また、好きなことに関心を持つことと、距離を詰めすぎることは違います。

子どもによっては、自分の好きなものを急に深く聞かれることが負担になる場合もあります。

様子を見ながら、少しずつ関わることが大切です。

【関連記事】情緒学級の支援|まず子どもの何を見るのか

苦手なこと・崩れやすい場面も知っておく

子どもとの関係性を作るためには、好きなことだけでなく、苦手なことも知っておく必要があります。

何が好きなのか。

何をしていると落ち着くのか。

どのような関わり方だと安心しやすいのか。

これらは大切です。

しかし、それと同じくらい、

何が苦手なのか。

どの場面で不安定になりやすいのか。

どの刺激が大きな負担になるのか。

どのような声かけが入りにくいのか。

こうした情報も大切です。

たとえば、

・大きな音が苦手
・雨や雷などの天気に強い不安がある
・一人になることが苦手
・大人数の場面が苦手
・勝ち負けのある遊びが苦手
・予定変更が苦手
・急な指示が苦手
・人に見られることが苦手

などです。

こうした苦手さを知らずに関わると、教師に悪気がなくても、子どもにとって大きな負担になることがあります。

たとえば、大人数が苦手な子に、いきなり大きな集団活動へ参加させる。

一人になることが苦手な子に、急に一人で行動させる。

負けることが苦手な子に、準備なしで勝ち負けのあるゲームをさせる。

予定変更が苦手な子に、突然「今からこれをします」と伝える。

このような関わりは、子どもにとって不安定になるきっかけになることがあります。

もちろん、苦手なことをすべて避ければよいという意味ではありません。

苦手なことにも、少しずつ取り組んでいく必要がある場合もあります。

ただし、その場合でも、いきなり大きな場面に送り込むのではなく、段階を作ることが大切です。

教室の中で練習する。

少人数で試す。

大人がそばにつく。

時間を短くする。

参加する部分を限定する。

できたところまでを認める。

このように、子どもが「ここまではできた」と感じられる形にしていきます。

関係性づくりは、子どもに好きなことを聞くだけではありません。

その子が苦手なことを知り、無理に崩れる場面へ追い込まないことも、大切な信頼づくりです。

【関連記事】情緒学級で個別の約束事を作るときの考え方|ルールを増やす前に確認したいこと

小さな成功体験を一緒に喜ぶ

情緒学級で子どもとの関係性を作る上で、かなり大切なのが、小さな成功体験を一緒に喜ぶことです。

成功体験というと、大きな目標を達成することをイメージするかもしれません。

しかし、情緒学級では、日々の小さな場面にも成功体験はあります。

たとえば、

・朝の支度ができた
・教室に入れた
・席につけた
・プリントを1枚終えた
・音読に取り組めた
・交流学級に行けた
・途中で戻ってこられた
・困ったときに先生へ言えた
・気持ちを切り替えられた
・掃除道具を丁寧に使えた
・友達にやさしく声をかけられた

こうした場面を見つけて、子どもに返していきます。

ここで大切なのは、単に「すごいね」「えらいね」と言うだけではありません。

もちろん、褒めることも大切です。

しかし、場合によっては、教師の気持ちも一緒に伝えると、より関係性づくりにつながりやすくなります。

たとえば、

「ここまでできて嬉しいな」

「最後まで取り組めて、先生も安心したよ」

「掃除を丁寧にしてくれてありがとう。教室が気持ちよくなったね」

「分からないって言ってくれて助かったよ。そこから一緒に考えられたね」

このように、子どもの行動と、教師の喜びや感謝をセットで伝えます。

評価するだけでなく、一緒に喜ぶ。

これは関係性づくりではかなり大切です。

また、子どもによっては、言葉で褒められることが苦手な場合もあります。

大げさに褒められると、恥ずかしくなったり、かえって意識しすぎたりする子もいます。

そのような場合は、短い言葉、笑顔、サムズアップ、グータッチ、うなずきなど、非言語のサインが合うこともあります。

大切なのは、その子にとって届きやすい形で伝えることです。

どの言葉が入りやすいのか。

どのサインが安心につながるのか。

どのタイミングなら受け取りやすいのか。

これは、日々の観察の中で少しずつ見つけていきます。

【関連記事】情緒学級の実態把握|子どもの姿を記録して見立てを作る方法

挑戦を失敗体験で終わらせない

情緒学級の子どもは、苦手な活動や集団場面に挑戦することがあります。

交流学級へ行く。

行事に参加する。

運動会の練習に入る。

校外学習に参加する。

友達と一緒に活動する。

人前で発表する。

こうした場面では、最初から最後までうまくできるとは限りません。

途中で不安定になることもあります。

参加できると思っていたけれど、途中で戻ってくることもあります。

練習ではできたのに、本番では難しくなることもあります。

そのようなときに大切なのは、子どもにとって「もう二度とやりたくない」という経験だけで終わらせないことです。

もちろん、できなかったことを無理に成功扱いする必要はありません。

子ども自身が悔しさや不安を感じている場合もあります。

ただ、その中でも、

「ここまでは参加できた」
「最初の5分は入れた」
「先生に戻りたいと言えた」
「途中で休んだけれど、最後に教室へ戻れた」
「前より少し長く取り組めた」

というように、できた部分を一緒に確認することはできます。

大人から見ると小さなことに見えても、子どもにとってはかなり頑張っている場合があります。

その頑張りを見落とさないことが大切です。

また、価値づけをしすぎないことも大切です。

子どもによっては、大人が過度に励ましたり、必要以上に意味づけしたりすると、かえってその出来事を重く受け止めてしまうことがあります。

そのような場合は、

「今日はここまでできたね」
「次もまた少し試してみよう」
「今度は教室で練習してから行こう」

くらいに、あっさり返す方がよいこともあります。

挑戦は、一回で終わるものではありません。

教室で練習する。

少人数で試す。

大人と一緒に参加する。

短い時間だけ参加する。

できたところを確認する。

また次につなげる。

この繰り返しが、少しずつ子どもの自信につながります。

【関連記事】スモールステップとは何か|できないことを少しずつできる形にする

担任だけでなく、安心できる大人を増やす

情緒学級では、担任との関係性はとても大切です。

ただし、担任だけが安心できる大人になることを目指しすぎない方がよいです。

担任にだけ安心感が集中しすぎると、担任がいない場面で不安定になりやすくなることがあります。

また、学校生活の中では、担任以外の大人とも関わる必要があります。

支援員の先生。

交流学級の先生。

養護教諭。

特別支援学級の他の先生。

管理職。

専科の先生。

こうした大人とも、少しずつ安心して関われるようにしていくことが大切です。

たとえば、授業中の丸つけを支援員の先生にお願いする。

音読を他の先生に聞いてもらう。

得意なことを別の先生に見てもらう。

交流学級の先生に、できたことを伝えてもらう。

養護教諭と短いやり取りをする。

このように、小さな関わりを積み重ねていきます。

担任が最初の橋渡しになることもあります。

「このプリント、〇〇先生に見てもらおうか」

「今の音読、支援員の先生にも聞いてもらいたいな」

「今できたこと、交流学級の先生にも伝えよう」

このように、安心できる大人を少しずつ増やしていきます。

また、大人同士が良い関係で関わっている姿を子どもに見せることも大切です。

担任と支援員の先生が落ち着いて相談している。

交流学級の先生と担任が子どもの頑張りを共有している。

養護教諭に安心して相談している。

こうした大人同士の関係も、子どもにとっては安心材料になります。

情緒学級の子どもを支えるのは、担任一人ではありません。

担任が中心になりつつも、周囲の大人と一緒に育てていくという意識が大切です。

【関連記事】情緒学級担任が同僚と関係を作るには?相談しやすいチームを作る考え方

叱る場面でも関係性は作られる

関係性づくりというと、褒める場面や楽しく関わる場面をイメージしやすいかもしれません。

しかし、叱る場面や指導する場面でも、関係性は作られます。

特に、危険な行動や、人を傷つける行動については、きちんと止める必要があります。

暴力。

悪口。

物を壊す行為。

人を強く傷つける言葉。

危険な行動。

こうしたことに対しては、「それはいけない」と伝えることが必要です。

ただし、ここで大切なのは、人格ではなく行動を指導することです。

「あなたはダメな子だ」と伝えるのではなく、

「その行動は相手を傷つける」
「その言い方はよくない」
「それは危ないから止める」
「次はこうしてほしい」

という形で伝えます。

また、事前に方針を伝えておくことも大切です。

学級開きや日常の中で、

「人を傷つけることは止めます」
「危ないことは先生が止めます」
「困ったときは言葉で伝える練習をします」

ということを、あらかじめ伝えておきます。

事前に何も伝えていないことを、子どもが悪気なくやったときに、いきなり強く叱るのは避けたいところです。

まずは、どうしてそうしたのかを聞く。

その上で、行動のどこが問題だったのかを伝える。

次にどうすればよいかを示す。

この流れを大切にします。

叱ることは、関係性を壊す行為とは限りません。

むしろ、必要な場面で落ち着いて止めてくれる大人がいることは、子どもにとって安心につながることもあります。

ただし、感情的に叱ることや、人格を否定することは避ける必要があります。

「この先生は、ダメなことは止める。でも、自分のことを否定するわけではない」

子どもがそう感じられるような指導を積み重ねることが大切です。

【関連記事】情緒学級で問題行動をどう見るか|前後関係から見立てを作るポイント

実践例:1日1枚のメッセージカード

ここまで、子どもとの関係性づくりについて書いてきました。

最後に、私が実際に行っていた具体的な方法を一つ紹介します。

それは、子どもにメッセージカードを書くことです。

私は、1日1枚、その子の頑張りや良かったところを書いたカードを渡すことをしていました。

毎日全員に書くのが難しければ、週に1回でも構いません。

2〜3日に1回でもよいと思います。

大切なのは、無理なく続けることです。

メッセージカードには、次のようなことを書きます。

・今日できたこと
・頑張っていたこと
・成長を感じたこと
・助かったこと
・嬉しかったこと
・感謝したいこと

たとえば、

「国語の授業では、音読の声が前よりはっきりしていました。最後まで読もうとする姿が見られて、先生はとても嬉しかったです。」

「教室掃除で、すみの方まで丁寧にからぶきをしてくれてありがとう。おかげで教室の床がきれいになって、とても気持ちよかったです。」

「今日は分からない問題をそのままにせず、『ここが分かりません』と言えましたね。一緒に考えることができて、先生は助かりました。」

このように、子どもの行動と、教師の気持ちをセットで書きます。

「すごい」
「えらい」

だけではなく、

「嬉しかった」
「助かった」
「ありがとう」
「安心した」

という教師側の気持ちも伝えると、子どもに届きやすくなることがあります。

また、カードは渡すだけでなく、できればその場で読んでから渡すのがおすすめです。

渡しただけでは読まない子もいます。

読まずにしまってしまう子もいます。

その場で読んで渡すことで、その日の良い関わりを一つ作ることができます。

帰りの会や帰り支度の時間に渡すと、1日の良い締めにもなります。

さらに、カードは形に残ります。

子どもが持ち帰れば、保護者にも伝わります。

保護者にとっても、「担任は我が子のことを見てくれている」と感じやすくなります。

もちろん、メッセージカードは必ずやらなければならないものではありません。

忙しい時期に無理をして続ける必要もありません。

ただ、子どもの良い姿を見つけ、それを言葉にして形に残す方法としては、とても使いやすい手段です。

関係性づくりに迷ったときは、まず短い一言から始めてもよいと思います。

【関連記事】情緒学級の保護者対応で大切なこと|子どもの頑張りを共有する関係づくり

まとめ

情緒学級の関係性づくりは、子どもに好かれることだけを目指すものではありません。

大切なのは、子どもが安心して関われる大人になることです。

そのためには、

・好きなことや関心のあることを知る
・苦手なことや崩れやすい場面を知る
・小さな成功体験を一緒に喜ぶ
・挑戦を失敗体験だけで終わらせない
・担任以外にも安心できる大人を増やす
・叱る場面では人格ではなく行動を指導する
・子どもの頑張りを言葉にして返す

といった関わりが大切になります。

関係性は、一気に作るものではありません。

毎日の挨拶。

授業中の短い声かけ。

できたことへの一言。

困ったときの支援。

約束を守ること。

苦手な場面で無理をさせすぎないこと。

ダメなことは落ち着いて止めること。

こうした小さな積み重ねで作られていきます。

情緒学級の子どもとの関係性づくりで迷ったときは、

「この子は、今どんなサインを出しているか」
「この子は、何に安心しやすいか」
「この子は、何が苦手なのか」
「今日、どこを一緒に喜べるか」
「この関わりは、次の挑戦につながるか」

という視点で見てみるとよいです。

子どものことを見ている。

子どものサインを受け取ろうとしている。

できたことを一緒に喜んでいる。

困ったときに助ける。

必要なときには止める。

その積み重ねが、情緒学級の安心できる関係性につながっていきます。

-子ども理解・見立て