情緒学級を担任すると、通常学級との違いとして少し分かりにくく感じやすいものの一つが「自立活動」です。
自立活動について調べると、
「6区分27項目」
「心理的な安定」
「人間関係の形成」
「環境の把握」
など、さまざまな言葉が出てきます。
もちろん、こうした制度上の内容を理解することは大切です。
ただ、実際に子どもの前に立つと、
「で、明日の自立活動は何をすればいいの?」
と迷うことがあります。
私自身も、自立活動について、
「これぞ自立活動という授業を、毎回きれいに組むのは難しいな」
と感じることがありました。
そこで実際の学級では、自立活動の時間を設定しつつ、その時間だけで完結させず、子どもに身につけてほしい力につながる練習や支援を日常のさまざまな場面にも置くようにしていました。
この記事では、6区分27項目を詳しく解説することよりも、
子どもの日常の困りごとから、自立活動をどう考えていたか
を、私自身の実践をもとに紹介します。
自立活動は「活動ネタ」から考えなくてもいい
まず、制度上の位置付けだけ簡単に確認します。
文部科学省では、自立活動について、障害による学習上・生活上の困難を主体的に改善・克服していくために必要な力を育てる領域として位置付けています。
特別支援学級では、特別支援学校学習指導要領に示されている自立活動を教育課程に取り入れることとされています。
※参照:文部科学省「小学校学習指導要領(平成29年告示)」第1章総則 第4の2(1)イ(ア)
自立活動の内容は、次の6区分27項目で整理されています。
- 健康の保持
- 心理的な安定
- 人間関係の形成
- 環境の把握
- 身体の動き
- コミュニケーション

ただし、27項目を全部扱うわけではありません。
文部科学省の学習指導要領でも、個々の子どもの実態を把握し、目標を明確にしたうえで、必要な項目を選び、それらを関連付けながら具体的な指導内容を設定するとされています。
つまり、
「今日は27項目のどれをやろう?」
と活動を探すところから始めなくてもよいということです。
むしろ、
この子は学校生活のどこで困っているのか。
何ができるようになると、本人が少し楽になるのか。
そこから考えた方が、私は実務につなげやすいと感じていました。
自立活動の時間そのものは必要
ここは誤解のないように補足しておきます。
自立活動を学校生活全体に広げて考えることと、
「自立活動の時間を設定しなくてもよい」
ことは別です。
また、文部科学省は「特別支援学級及び通級による指導の適切な運用に関するQ&A」で、特別の教育課程を編成しているにもかかわらず、自立活動の時数を0とすることは学習指導要領上想定していないと示しています。
※参照:文部科学省「特別支援学級及び通級による指導の適切な運用に関するQ&A」9ページ目
私自身も、授業としての自立活動は行っていました。
そのうえで、
自立活動の時間で練習する
→ 日常生活でも使ってみる
→ 実際の様子を見る
→ また練習や支援を調整する
というようにつなげていました。
私はまず「困っている姿」から考えていた
自立活動を考えるとき、私が最初に見ていたのは6区分27項目ではありません。
まずは、日常の子どもの姿です。
例えば、
「交流学級へ行くと強く緊張する」
「予定が変わると動けなくなる」
「イライラすると暴言や暴力につながる」
「困っていても大人に伝えられない」
といった姿です。
ただし、困っている姿だけを見るのではありません。
すでにできていることは何か。
どんな支援があればできるのか。
も合わせて見ていました。
「できない」で止めず、今できているところと、支援があればできるところを確認すると、次に何を練習すればよいかが見えやすくなります。
そこから、
この子自身が何に気づけるようになるとよいか
そして、
気づいたあとに、どのような行動を選べるようになるとよいか
を考えていました。
私の実践では、この
自分の状態への気づき
→ その状態に応じた行動を選ぶ
という二段階で考えると、自立活動と日々の支援をつなげやすい場面が多くありました。

子どもの姿を具体的に見る方法については、こちらの記事で詳しく整理しています。
【関連記事】情緒学級の実態把握|子どもの姿を記録して見立てを作る方法
実践例1|大人数での活動に参加することが難しい子
例えば、大人数の場面への不安や、対人関係への緊張が強い子どもがいました。
こうした場合、私はいきなり、
「交流学級へ行けるようにしよう」
「大人数の場面に慣れさせよう」
とは考えませんでした。
まず確認したいのは、
何を不安に感じているのか
です。
人が多いことなのか。
知らない相手と関わることなのか。
何をすればよいか分からないことなのか。
失敗することなのか。
途中で抜けられないと感じていることなのか。
本人が感じている不安そのものを、最初から「なくすべきもの」として扱わないことも大切にしていました。
不安になること自体が悪いわけではありません。
まずは、安心して関われる教師や支援員、情緒学級の友達との関係を作り、その中で少しずつ活動の幅を広げます。
交流学級での活動へ参加するときも、いきなりハードルを大きく上げるのではなく、
「今日は見学する」
「最初の10分だけ参加する」
「一つの活動だけ参加する」
など、その子が取り組める大きさに調整します。
【関連記事】情緒学級の子どもとの関係性づくり|できたことを一緒に喜ぶことから始める
「参加できる」だけでなく「困ったときに動ける」を目標にする
このケースを自立活動として考えるのであれば、
単に、
交流学級へ行けるようになる
だけを目標にする必要はありません。
例えば、
「困っていることを大人に伝えられる」
「助けてほしいと言える」
「一度教室へ戻りたいと伝えられる」
といった力も重要です。
ここでは、
自分が今困っていることに気づく
ことと、
その後に使える行動を持っている
ことの二つがあります。
教師が常に本人の状態を読み取り、先回りして助け続けることも一つの支援です。
ただ、少しずつ、
「自分でカードを見せる」
「先生に言葉で伝える」
「休憩を申し出る」
など、本人が使える方法が増えていくと、別の場面にも広げやすくなります。

文部科学省の自立活動の解説でも、必要に応じて周囲へ支援を求めたり、自分で活動しやすい環境を整えたりすることができるような指導内容を計画的に扱うことが示されています。
※参照:文部科学省「特別支援学校小学部・中学部学習指導要領」第7章 自立活動、第3の2(3)エ(204ページ)
実践例2|感情の高ぶりが大きく、暴言や暴力につながる子
もう一つは、ちょっとしたきっかけから気持ちが大きく高ぶり、暴言や暴力につながるケースです。
このような場合も、
自分の状態への気づき
→ その状態に応じた行動を選ぶ
という二段階で考えていました。
ただし、暴力や飛び出しなど、本人や周囲の安全に関わる可能性がある場合には、本人の自己調整だけに任せることはできません。
必要に応じて大人が介入する基準も、あらかじめ決めておく必要があります。
私は、子どもの状態を分かりやすく伝えるために、カードを合図として使うこともありました。
例えば、
「少しイライラのサインが出てきたらイエローカード」
「安全のために一度その場を離れる必要がある状態ならレッドカード」
という形です。
ただし、このカードは罰を与えるためのカードではありません。
本人と事前に、
「先生がこのカードを見せたら、一度自分の状態を確認する」
「イエローカードなら深呼吸してみる」
「レッドカードなら決めてある場所で一度休む」
といった動きを共有しておきます。
最初の段階では、本人自身が気持ちの高まりに気づけないこともあります。
その場合は、
教師が外側からサインを出す
→ サインを見て決めた行動をする
→ 少しずつ、自分自身でも高まりに気づけるようにする
という流れで考えることができます。

クールダウンそのものについては、別の記事で詳しく書いています。
【関連記事】情緒学級のクールダウンはどう作る?安全に気持ちを整える仕組みと約束作り
また、個別の約束を担任だけで抱えず、支援員や交流学級担任など必要な大人と共有する方法についてはこちらでまとめています。
【関連記事】情緒学級で子どもとの約束を共有するには?担任だけのルールにしないために
練習できる場面を意図的に作る
感情の調整は、実際に大きく怒っている最中だけに教えることは難しいです。
そこで、自立活動の時間には、
「こういうときはどうする?」
と場面絵を見ながら考えたり、
クールダウンへ移る練習をしたり、
勝ち負けのある簡単なゲームを使って、負けたときの反応を練習したりしていました。
例えば、教師自身が負けたときに、
「悔しいけど、まあいいか」
と言って次へ進む姿を見せることもあります。
もちろん、子どもをわざと強くイライラさせる必要はありません。
大きく崩れる前の、安全に試せる場面で、
悔しさを感じても次の行動へ移る経験
を少しずつ作ります。
勝敗への対応については、こちらの記事で詳しく扱っています。
【関連記事】負けると怒る・崩れる子への支援|情緒学級でできる勝敗への対応
自立活動の45分は「型」を決めていた
授業としての自立活動では、私は45分の流れそのものをある程度固定していました。
毎回ゼロから新しい授業を考えるのではなく、
授業の型は固定し、中身を子どもの実態に合わせて変える
という方法です。
例えば、
前半では、場面絵カードなどを使って学級全体で考える。
その後、
Aさんに必要な練習。
Bさんに必要な練習。
学級全体で共有できる活動。
というように組み合わせます。
複数学年の情緒学級では、一人一人の課題が同じとは限りません。
そこで、全員に共通して扱える内容と、個別に練習する内容を組み合わせていました。
これは、
全員に同じ自立活動をさせる
という意味ではありません。
授業運営のフォーマットをある程度固定しておき、その中に一人一人の目標につながる内容を入れていくという考え方です。

なお、自立活動の指導計画は一人一人について個別に作成することが基本です。集団で行う活動についても、全員に同じ目標を設定するのではなく、それぞれの子どもの指導目標とどうつながるのかを考えていました。
45分の授業そのものをどう安定して回すかについては、別の記事でも基本的な考え方を整理しています。
【関連記事】情緒学級の授業はどう回す?45分を安定させる基本テンプレート
日常の活動も、自立活動の目標につながる練習の場になる
自立活動の時間だけで、学校生活で必要になる力をすべて練習することはできません。
だからこそ私は、
日常の活動そのものも練習の場として使う
ことを意識していました。
例えば、係活動や当番活動です。
仕事をした子どもに対して、
「ありがとう」
と伝えるだけではなく、
「本を整理してくれたから、次に使う人が取りやすくなったね」
など、自分の行動が相手にどう影響したのかを具体的に伝えます。
逆に、友達に何かしてもらったときには、自分から感謝を伝える機会にもなります。
係活動や当番活動自体を、そのまま「自立活動」と呼ぶ必要はありません。
ただ、その子の自立活動の目標が、
「相手との関わり方を知る」
「自分の役割を果たす」
「相手の反応に気づく」
といったものであれば、その力を実際に使う場面として係活動や当番活動を活用することはできます。
係活動・当番活動の具体的な設計についてはこちらで書いています。
【関連記事】情緒学級の係活動・当番活動|「できた」と「役に立った」を積み上げる仕事の設計
クイズ大会も「相手を考える」練習になった
私が定期的に行っていた活動の一つに、ミニクイズ大会があります。
自分でクイズを作り、それを友達に解いてもらいます。
一見すると単なるレクリエーションですが、工夫すると、
自分が出したい問題を出す
だけではなく、
相手がどうすれば楽しめるかを考える
活動にもなります。
例えば、相手が全く答えられないような難しい問題を出し続けるのではなく、
「少し考えれば答えられる」
「分からなければヒントを出す」
「最後には答えられる」
ように問題やヒントを調整します。
つまり、
自分のやりたいことと、相手の都合の両方を考える
練習です。
この実践については、私は過去に指導案を作成し、研究授業でも扱ったことがあります。
活動の組み立て、問題作成、ヒントの出し方、チーム編成、勝敗への配慮などまで含めるとかなり内容があるため、この部分は別の記事として詳しくまとめる予定です。
「教師が支援する」から「本人が支援を使う」へ
ここまでの実践を整理すると、私が自立活動と日々の支援をつなぐときに考えていたことは、だいたい次の流れになります。
困っている姿を見る
↓
教師が支援してみる
↓
どんな支援があると動きやすいのかを見る
↓
本人自身が使える方法にしていく
↓
別の生活場面でも使えるようにする
例えば、予定変更が苦手な子どもに、教師が毎回、
「次はこれだよ」
と教え続けることも支援です。
しかし、そこで終わらず、
自分で予定表を見る
変更があるか確認する
分からなければ質問する
ところまで少しずつ広げられると、本人が使える力になります。

また、支援の成果を「完全に一人でできたか」だけで見る必要はありません。
以前より早く助けを求められた。教師の合図でクールダウンへ移れた。自分から予定表を確認した。
こうした小さな変化を記録しながら、次の支援へつなげていくことも大切にしていました。
現在のブログで書いている「見通し」への支援も、この考え方とつながります。
【関連記事】情緒学級で子どもに見通しを持たせる支援|予定・ゴール・困った時の動き方を示す
切り替えについても同じです。
教師が毎回動かすだけではなく、
自分が切り替えにくくなっていることに気づき、次の行動へ移るための方法を使える
ところまで考えていきます。
【関連記事】情緒学級で切り替えが苦手な子どもへの支援と対策
6区分27項目は「最初の活動ネタ帳」にしない
ここまで書いてきましたが、もちろん6区分27項目を見なくてよいわけではありません。
大切なのは、使う順番です。
私なら、
子どもの実態を見る
↓
困っていることや指導すべき課題を整理する
↓
目指したい姿(指導目標)を考える
↓
目標を達成するために必要な自立活動の項目を選ぶ
↓
選んだ項目を関連付けて、具体的な指導内容を考える
という順で考えます。

この流れは、文部科学省が示している自立活動の個別の指導計画の作成手順ともおおむね一致しています。
文部科学省の公式解説では、
実態把握
→ 指導すべき課題の整理
→ 指導目標の設定
→ 必要な項目の選定
→ 項目を関連付けて具体的な指導内容を設定
という手順が示されています。
つまり、6区分27項目は、27個の内容を順番に教えていくための一覧ではありません。
文部科学省の公式解説でも、自立活動の内容は各教科等のようにすべてを取り扱うものではなく、個々の子どもの実態に応じて必要な項目を選んで扱うものとされています。
また、6つの区分そのものも、実際の授業における「指導内容のまとまり」を表しているわけではありません。
そのため、
「人間関係の形成に関係するゲームだから、自立活動としてやろう」
というように、先に活動を決めて後から6区分27項目のラベルを付けるだけでは不十分です。
同じゲームでも、
- 誰に
- 何を身につけてもらうために
- どんな支援を入れて
- どのような変化を見取るのか
によって、指導としての意味は変わります。
例えば、勝ち負けのあるゲームをするとしても、
「負けても大丈夫と言えるようになる」
「気持ちが高ぶったことに気づく」
「高ぶったときに一度その場から離れる」
「友達の反応を見ながら関わる」
では、目標も必要になる支援も違います。
大切なのは、活動そのものではなく、
その活動が、その子の実態や指導目標とどうつながっているのか
を考えることです。
一次資料・公式解説
この記事で扱った自立活動の6区分27項目や、個別の指導計画の基本的な考え方は、文部科学省の現行の学習指導要領で確認できます。
一次資料:文部科学省「特別支援学校幼稚部教育要領 小学部・中学部学習指導要領(平成29年4月公示)」
特に、
- 第2「内容」:6区分27項目
- 第3「個別の指導計画の作成と内容の取扱い」:実態把握、目標設定、必要な項目の選定・関連付け
がこの記事に直接関係します。(該当箇所はp203:第7章 自立活動)
文部科学省「特別支援学校幼稚部教育要領 小学部・中学部学習指導要領」を見る
もう少し詳しく知りたい場合は、文部科学省の公式解説である「特別支援学校教育要領・学習指導要領解説 自立活動編」が参考になります。
特に、
- 第3章「自立活動の意義と指導の基本」:27項目をすべて扱うものではないこと
- 第7章「自立活動の個別の指導計画の作成と内容の取扱い」:実態把握から具体的な指導内容を設定するまでの手順
が、この章の内容と直接対応しています。公式解説では、第7章の「個別の指導計画の作成手順」で、上記の5段階が具体的に整理されています。
まとめ|自立活動を特別なものにしすぎない
自立活動という言葉を見ると、
「専用の教材を用意しなければならない」
「特殊な授業を作らなければならない」
と感じることがあります。
私自身も、毎回「これぞ自立活動」という授業を考えるより、
まず目の前の子どもが何に困っているのかを見る
ことを大切にしていました。
そして、
自分の状態に気づく
困ったときに助けを求める
気持ちを整える方法を使う
予定を確認する
相手を考えて関わる
といった力を、授業として練習するとともに、日々の学校生活の中でも使えるようにしていきます。
自立活動の時間だけで練習して終わりではありません。
反対に、日常の支援を何でも自立活動と呼べばよいわけでもありません。
子どもの実態から目標を決め、その目標につながる指導を計画し、学校生活の中で繰り返し使えるようにしていく。
私はこのように考えると、自立活動を実務へつなげやすいと感じています。
子どもの姿から目標・手立てを整理したい方へ
自立活動に限らず、子どもの支援を考えるときには、
子どもの姿
→ 課題
→ 目標
→ 手立て
→ 記録
→ 見直し
という流れを整理しておくと、支援がその場の思いつきになりにくくなります。
この流れを実際に書き込みながら整理できるように「情緒学級の支援設計ワークブック」も用意しています。
自立活動専用の教材ではありませんが、子どもの実態から目標と手立てを考える前段にはそのまま活用できます。現在の商品内容も、この流れで設計されています。