情緒学級の机やロッカーは、放っておくと物が増え、少しずつ乱れていきます。
片付けが苦手な子に対して、「きれいにしましょう」「使った物は元に戻しましょう」と繰り返し声をかけても、なかなか行動が安定しないことがあります。
そのようなときに必要なのは、子どもの意欲だけに頼ることではありません。
子どもが迷わず片付けられるように、
- 管理する物の量を減らす
- 置き場所を決める
- 整理する時間を決める
- 片付ける手順を小さくする
といった仕組みを整えることが大切です。
教室環境そのものの整え方については別の記事で解説しています。本記事では、整えた環境を維持するために、私が実際に行っていた整理整頓の方法を紹介します。
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教室をきれいにすること自体が目的ではない
整理整頓というと、見た目をきれいにすることが目的だと思われがちです。
しかし、情緒学級における整理整頓の目的は、それだけではありません。
物の場所が決まっていると、授業の準備や片付けにかかる時間を減らせます。忘れ物や紛失にも気づきやすくなり、教師が繰り返し声をかける場面も少なくなります。
また、普段の状態が分かりやすければ、
「いつもある物がない」
「道具が壊れている」
「持ち物が急に増えている」
といった変化にも早く気づけます。
物が多く、置き場所も決まっていない環境では、普段と違う状態を見つけにくくなります。
そのため、整理整頓の仕組みを考えるときは、単に見栄えをよくするのではなく、子どもが自分で準備や片付けをしやすくなることを目指します。
片付けられない理由を先に観察する
片付けができない理由は、子どもによって異なります。
例えば、次のような理由が考えられます。
- プリントをどこにしまえばよいか分からない
- 置き場所を覚えられない
- 片付けより先に、やりたいことへ移ってしまう
- 物が多すぎて、どこから手をつければよいか分からない
- 「机を片付ける」という指示が大きすぎる
- 片付けの手順を理解していない
同じように机の中が乱れていても、原因が違えば必要な支援も変わります。
「片付けなさい」と伝える前に、どの部分で止まっているのかを観察することが出発点です。
例えば、プリントだけがたまるのであれば、プリントの処理方法を決めます。文房具が散らばるのであれば、道具箱の中を分けます。
すべてを一度に改善しようとせず、最も困っている部分から小さく整えることが大切です。
【関連記事1】情緒学級の支援|まず子どもの何を見るのか
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基本は「定位置・定量・定時」
整理整頓の仕組みは、次の三つに分けて考えると分かりやすくなります。
定位置|どこに戻すかを決める
まずは、物の置き場所を決めます。
「空いている場所に入れる」のではなく、
「これはここに戻す」
という場所を明確にします。
必要に応じて、写真やイラスト、文字のラベルを使ってもよいでしょう。道具箱の中に仕切りを作り、「はさみ」「のり」「色鉛筆」などの置き場所を分ける方法もあります。
大切なのは、子どもが片付けるたびに判断しなくても済むようにすることです。
定量|管理する物を増やしすぎない
片付けが苦手な子どもは、管理する物が少ない方が整理しやすくなります。
机の中に入れておく物は、頻繁に使う物だけで十分です。
毎日使わない教材や道具まで机の中に入れておくと、必要な物を探しにくくなり、片付ける負担も増えます。
物が増えた後に片付け方を教えるよりも、最初から管理する物を増やしすぎない方が安定します。
定時|いつ整えるかを決める
整理整頓は、「乱れたことに気づいたら行う」だけでは定着しにくいものです。
そこで、整える時間を学級の中に組み込みます。
例えば、
- 毎日の朝の会で1分だけ机の中を見る
- 金曜日の掃除時間に机とロッカーを確認する
- 水曜日はロッカー、金曜日は机の中を整理する
- 学期初めに置き場所を再確認する
といった方法があります。
私は、金曜日の掃除時間に、子どもと一緒に机やロッカーを確認することが多くありました。
毎週確認しておけば、長期間ため込んだ物を一度に片付ける必要がありません。片付けを大きな仕事にせず、小さいうちに処理することがポイントです。

教師も一緒に行い、少しずつ手を離す
片付けの習慣をつけるためには、最初から子どもだけに任せない方がよい場合があります。
まずは教師がやり方を見せます。
次に、教師と子どもが一緒に片付けます。その後、子どもが行い、教師が確認する段階へ進みます。
最終的には、子どもが自分で気づいて行える状態を目指します。
大まかには、次のような流れです。
- 教師が片付け方を見せる
- 教師と子どもで一緒に行う
- 子どもが行い、教師が確認する
- 子どもが自分で行う
一度できるようになったからといって、支援が二度と必要なくなるとは限りません。
長期休業明けや学期初めには、前の段階に戻って、教師と一緒に確認することもあります。
前の学期に習慣ができていれば、最初に教えたときよりも短い期間で自分でできるようになります。

学級全体の仕組みと個別支援を分ける
整理整頓の仕組みには、学級全体で行うものと、特定の子どもに合わせて行うものがあります。
学級全体では、
- 物の置き場所を決める
- 週に一度、整理する時間を作る
- 掲示物を定期的に見直す
- 教師も一緒に掃除する
といった基本的な仕組みを作ります。
その上で、特に片付けが苦手な子どもには、
- 机の中に入れる物をさらに減らす
- 道具箱に仕切りを作る
- 写真付きの見本を置く
- 片付けを複数の日に分ける
- 教師と一つずつ確認する
- 教科別のカゴを用意する
といった個別の支援を加えます。
すべての子どもに、同じ量の支援が必要なわけではありません。
学級全体の仕組みを土台にして、必要な子どもには追加の支援を行います。
机の中には、頻繁に使う物だけを入れる
机の中には、授業で頻繁に使う物だけを入れておけば十分です。
教科書、ノート、筆記用具など、毎日使う物を中心にします。
道具箱も、必ず机の中に入れておかなければならないとは限りません。授業で必要なときにロッカーから出す方法でもよいでしょう。
私は、はさみなどの道具を教師側でまとめて保管することもありました。
子どもが常に自分で管理する必要のない物まで持たせると、机の中が乱れる原因になります。
「本人に管理させることが自立につながる」と考えたくなることもありますが、管理する物を増やせば自立するわけではありません。
その子どもが管理できる量に調整し、できるようになったら少しずつ範囲を広げていく方が現実的です。
道具箱は上から見て分かるようにする
道具箱を使う場合は、上から見たときに、どこに何を入れるのか分かる状態にします。
物を無造作に重ねてしまうと、下にある物が見えなくなります。
仕切りを使ったり、置き場所の枠を示したりすると、戻す場所が分かりやすくなります。
よく使う物を手前に置き、使用頻度の低い物を奥に置く方法もあります。
ただし、実際に使いやすい位置は子どもによって異なります。教師にとってきれいに見える配置よりも、本人が取り出して戻しやすい配置を優先します。
無造作な平積みは避ける
教科書やファイルを区切りなく重ねると、下に何があるのか分かりにくくなります。
そのため、教科書やファイルは、可能であれば立てて保管します。
ただし、平らに置くこと自体が必ず悪いわけではありません。
教科ごとにカゴを分け、そのカゴごと出し入れするのであれば、カゴの中に教科書やノートを平らに入れていても管理しやすくなります。
問題なのは、異なる物を区別せずに重ねることです。
教科別カゴで準備と片付けを簡単にする
私は、子ども一人ひとりにA4程度のプリントが入るカゴを用意し、教科別に教材をまとめていました。
例えば、
- 国語
- 算数
- その他の授業
などに分けます。
カゴの中に入れるのは、教科書、ノート、その授業で毎回使う教材など、必要な物だけです。
この方法のよいところは、授業準備の手間を減らせることです。
机の中から教科書やノートを一つずつ探す必要はありません。国語の授業であれば、国語のカゴを一つ出せば準備が終わります。
片付けるときも、使った物を同じカゴへ戻せばよいため、手順が分かりやすくなります。
私が使っていたカゴは、側面が格子状になっており、中に何が入っているかを確認しやすい物でした。
ただし、教室内のすべての物を見える状態にすればよいわけではありません。視覚的な情報が増えすぎると、落ち着きにくくなる子どももいます。
何が入っているか確認でき、必要な数がそろっているか分かる一方で、教室全体が散らかって見えない収納を目指します。

掲示物や作品は、更新する時期を決める
掲示物や子どもの作品も、長期間そのままにしないようにします。
私は、作品であれば2週間程度、その他の掲示物も長くて1か月程度を目安に見直していました。
ただし、これは絶対的な基準ではありません。
授業内容や行事、作品の目的によって掲示する期間は変わります。
大切なのは、掲示したまま放置せず、いつ持ち帰らせるのか、いつ更新するのかを決めておくことです。
学年便りなどを出す時期と合わせて、月に一度確認する方法でもよいでしょう。
掲示物が増えすぎないようにすると、教室内の変化にも気づきやすくなります。
プリントは目的なくため込まない
取り組んだプリントを、学期末まで大量に保管している学級もあります。
もちろん、作品集としてまとめる、評価に使う、継続して学習に使用するといった目的がある場合は、保管する意味があります。
しかし、具体的な目的がないのであれば、プリントを長期間ため込む必要はありません。
保管するためには、教師側のスペースも必要です。子どもにファイルを持たせれば、今度は子どもが管理する物が増えます。
継続して使用する目的や、記録として残す目的のないプリントは、できるだけ早めに持ち帰らせてよいと思います。
重要なのは、ファイルを使うかどうかではなく、保管する目的と管理する負担が釣り合っているかを考えることです。
授業準備を行う時間も決めておく
授業の準備をいつ行うかも、片付けや整理整頓の習慣に関係します。
休み時間に入る前に次の授業の物を用意する方法もあれば、授業の直前に準備する方法もあります。
どちらがよいかは、学校の方針や子どもの実態によって異なります。
机の上に教材を出したままにすると、他の子どもが触るなどのトラブルにつながる場合もあります。そのような学級では、授業直前に準備する方が安全です。
一方で、授業が始まってから準備に時間がかかる子どもには、事前に用意する仕組みが役立つこともあります。
大切なのは、教師個人の理想を一律に当てはめるのではなく、その子どもが決まった時間に、必要な物を迷わず準備できる方法を選ぶことです。
【関連記事】情緒学級の授業はどう回す?45分を安定させる基本テンプレート
掃除は教師も一緒に行う
私は、掃除の時間には、子どもを指導するだけでなく、自分も一緒に掃除するようにしていました。
教師もその教室を使っています。
特に黒板やホワイトボードは、教師が授業で使用する物です。そのため、子どもから希望がなければ、自分で掃除することもありました。
子どもの方から、
「黒板も掃除したい」
と言ってくることもあります。
そのようなときは、掃除の仕方を教え、一緒に行います。
教師がすべて代わりに行うのではなく、やり方を見せ、子どもと一緒に行い、徐々に任せていくことが大切です。
筆箱の中身も増やしすぎない
筆箱の中身も、整理整頓に影響します。
学校の決まりや授業内容にもよりますが、授業に必要な物が入っていれば十分です。
例えば、鉛筆数本、赤鉛筆や赤ペン、消しゴムなどです。必要に応じて定規なども加えます。
一方で、たくさんのカラーペンや、さまざまな形の消しゴム、使用頻度の低い道具まで入っていると、管理する物が増えます。子どもによっては、授業中に気が散る原因にもなります。
鉛筆削りなど、教室の備品を使用できる物については、必ずしも一人ひとりが筆箱の中に入れておく必要はありません。
「持っていてもよい物」を増やすのではなく、「授業に必要な物は何か」という視点で中身を整理します。
仕組みが機能しているかは、子どもの行動で確認する
教室がきれいに見えるだけでは、整理整頓の支援が成功したとは言い切れません。
教師が毎回すべてを片付けているのであれば、子ども自身の行動はまだ安定していないからです。
仕組みが機能しているかは、次のような姿から確認できます。
- 授業準備にかかる時間が短くなった
- 教師の声かけが減った
- 必要な物を自分で見つけられる
- 物を使った後、自分で戻せる
- 紛失や忘れ物が減った
- 片付けへの抵抗が小さくなった
- 乱れた後に、自分で元の状態へ戻せる
多少見た目が整っていなくても、本人が必要な物を取り出し、使い終わったら決まった場所へ戻せているのであれば、仕組みとしては機能しています。
教師の基準で完璧な状態を求めすぎず、本人が管理できているかどうかを大切にします。
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まとめ|片付ける物と手順を増やしすぎない
整理整頓を安定させるためには、片付け方を繰り返し教えるだけでは不十分です。
そもそも管理する物や、片付ける工程を増やしすぎないことが大切です。
必要のない物は出さない。
使わない物はため込まない。
必要な物には置き場所を決める。
整理する時間を学級の中に組み込む。
片付けが難しい場合は、作業を小さく分け、教師と一緒に行うところから始めます。
子どもが片付けられないことを本人の性格や意欲の問題だけにせず、迷わず準備し、使い終わったら一回で戻せる仕組みを作ることが、整理整頓を安定させる近道です。