情緒学級で係活動や当番活動を工夫すると、子どもが自分の役割を持ち、学級の一員として過ごすきっかけを作ることができます。
係活動には、子どもがアイデアを出したり、活動内容を工夫したりしながら、学級生活をより楽しく豊かにしていく側面があります。一方、当番活動は、学級生活に必要な仕事を分担し、決められた役割を継続して果たす活動です。
本来、両者の目的や性質には少し違いがあります。
ただし、情緒学級で最初から自由度の高い係活動を設定すると、いつ、何を、どこまで行えばよいのかが分からず、取り組みにくくなる子どももいます。
そこで私は、係活動にも当番活動のような分かりやすさを取り入れていました。
仕事を行う時間、手順、完了の基準を明確にし、まずは「自分の仕事を終えられた」「自分の仕事が誰かの役に立った」という経験を積めるようにします。そのうえで、子どもの実態に応じて、選択や工夫の幅を少しずつ広げていくという考え方です。
この記事では、情緒学級で係活動・当番活動を設計するときの基本的な考え方と、取り組みやすくするための工夫を紹介します。
係活動・当番活動で積み上げたい二つの実感
係活動や当番活動を考えるときは、次の二つの実感に注目すると、仕事の目的が分かりやすくなります。
一つ目は、自分で仕事をやり遂げたという達成感です。
自分に任された仕事を始め、決められたところまで行い、終えることができた。この経験は、「自分にもできた」という実感につながります。
二つ目は、自分の行動が誰かの役に立ったという貢献感です。
自分が本棚を整えたことで、次に使う人が本を取りやすくなった。植物に水をあげたことで、学級のみんなが気持ちよく植物を眺められるようになった。
このように、自分の仕事と、その結果として生まれた変化がつながると、子どもは自分の役割を感じやすくなります。
担任や友達から「ありがとう」と伝えてもらうことも、その貢献を本人に分かりやすく伝える方法の一つです。
ただし、たくさん褒めてもらうこと自体を目的にする必要はありません。
「本がきれいに並んだから、みんなが使いやすくなったよ」「窓を閉めてくれたから、次の授業にすぐ移れたよ」のように、何がどのように役立ったのかを具体的に伝えることが大切です。

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最初は小さな仕事から始める
仕事を任せるときは、最初から大きな役割を設定しない方が取り組みやすくなります。
まずは、少し作業すれば終えられる仕事を一つ設定します。
例えば、次のような仕事です。
- 下校前に本棚が整っているか確認する
- 決められた時間に植物の世話をする
- 配布物を置く場所を確認する
- 教室を出るときに電気を確認する
- 使用後の教材が元の場所に戻っているか見る
大切なのは、仕事の珍しさではありません。
子どもが自分で取り組み、終わったことを確認でき、その結果が学級生活の役に立つことが重要です。
電気の確認や本棚の整頓など、よくある仕事でも構いません。特別な活動を考えるよりも、実際に必要な仕事として機能していることを優先します。
「いつ・何を・どこまで」を明確にする
係活動や当番活動が続かないときは、子どもの意欲だけでなく、仕事の設計を見直す必要があります。
特に重要なのが、次の三点です。
- いつ行うのか
- 何を行うのか
- どの状態になったら終わりなのか
例えば、「本棚をきれいにする」だけでは、子どもによって完成のイメージが異なります。
「下校前に、飛び出している本を棚の中に戻す」「倒れている本を立てる」「終わったら完了カードを裏返す」といった形で示すと、取り組みやすくなります。
仕事を行う時間も、学校生活の流れの中に組み込みます。
本棚の確認であれば、下校前に行うと、翌朝の教室を整った状態にできます。また、帰りの支度と結びつけやすいため、取り組むタイミングも分かりやすくなります。
「時間が空いたらやる」「気づいた人がやる」という仕事は、自分から周囲を観察して仕事を探す力が必要になります。
そのような活動が得意な子どももいますが、初めから全員に求めるのは難しい場合があります。
まずは、決められた時間に行う仕事から始め、発展段階で自分から必要な仕事を見つける活動につなげるとよいでしょう。

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掃除や日課と重ならない仕事を選ぶ
学級生活の中ですでに全員が取り組んでいるものを、そのまま係の仕事にする必要はありません。
例えば、掃除の時間に全員が行っている内容であれば、それを改めて係活動として設定する意味は薄くなります。
ただし、掃除に関係する仕事を係にしてはいけないということではありません。
掃除をすることが好きな子どもや、決められた場所を整えることが得意な子どももいます。その場合は、通常の掃除では行き届きにくい場所の確認や、掃除用具の点検などを仕事にできます。
大切なのは、既存の日課とただ重複させるのではなく、その仕事を設定することで、誰がどのように助かるのかを考えることです。
基本の仕事一つから始める
仕事をたくさん引き受けたがる子どももいます。
やってみたいという気持ちは大切にしたい一方で、最初から複数の仕事を持たせると、続けられなくなることもあります。
そのため、まずは「毎日必ず行う基本の仕事」を一つ決める方法がおすすめです。
一週間程度取り組み、継続してできそうであれば、二つ目、三つ目と追加していきます。
複数の仕事を希望する子どもには、
この三つの中から、まず必ず行う仕事を一つ決めよう。ほかの二つは、余裕がある日に取り組んでもよいことにしよう。
と提案することもできます。
これなら、仕事をしたいという気持ちを否定せず、抱え込みすぎることも防げます。
仕事によっては、毎日発生しないものもあります。
その場合は、
- 毎日行う基本の仕事
- 必要な日に行う追加の仕事
に分けておくと分かりやすくなります。
例えば、植物の水やりは天候や季節によって不要な日もあります。そのため、毎日行う仕事ではなく、必要性を確認して行う追加の仕事として扱う方法もあります。
仕事を小さな段階に分ける
一つの仕事でも、子どもにとっては複数の手順が含まれていることがあります。
例えば、本棚の整理には、
- 本棚を見る
- 飛び出している本を戻す
- 倒れている本を立てる
- 完了を確認する
という段階があります。
仕事を小さく区切ることで、子どもは何から始めればよいのかを理解しやすくなります。
また、すべてを終えられなかった日でも、「今日は二つ目までできた」と確認できます。担任も、取り組めた部分を具体的に認めやすくなります。
ただし、途中までできたことを認めるだけで終わらせるのではなく、完了できない状態が続く場合には、仕事の設計を見直します。
- 仕事の量が多すぎないか
- 手順が複雑すぎないか
- 始める時間が分かりにくくないか
- 完了の基準が曖昧ではないか
- その子どもの実態に合っているか
といった点を確認します。
子どもに努力を求める前に、取り組みやすい仕事になっているかを担任が見直すことが大切です。
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完了したことを目で確認できるようにする
係活動や当番活動では、仕事が終わったことを視覚的に確認できる仕組みも有効です。
例えば、
- 係の札を裏返す
- 完了カードを挟む
- 簡単なチェック表に印をつける
- スタンプを押す
- 手順カードの最後に「おわり」を示す
といった方法があります。
私は、係の仕事の名前と子どもの名前を書いたカードを壁に掛け、仕事が終わったら「お仕事完了」と書かれた裏面にひっくり返す形にしていた年もあります。
ただし、掲示物を増やせば必ず取り組みやすくなるわけではありません。
カードを操作すること自体が負担になる子どももいます。また、全員の完了状況を壁に掲示すると、終わっていない子どもが目立ったり、速さを競う雰囲気になったりすることもあります。
そのため、学級の実態に応じて、
- 学級全体で見る壁掲示
- 机やロッカーに置く個人カード
- 本人と担任だけが確認するチェック表
- 仕事を行う場所に置く完了札
などから選びます。
完了を見えるようにする目的は、監視や比較ではありません。
子ども自身が「自分の仕事は終わった」と確認できるようにすることです。

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導入時には支援してよい
係活動や当番活動は、自分から行えることが理想ですが、始めたばかりの時期から完全な自立を求める必要はありません。
導入時には、
- 担任と一緒に仕事場所へ行く
- 開始する時間を伝える
- 手順カードを確認する
- 一つ目の作業を一緒に行う
- 終わり方を教える
といった支援を行います。
そのうえで、少しずつ担任の支援を減らしていきます。
一方、何週間たっても毎回強く促さなければ始められない場合は、子どもを叱る前に、仕事の難易度やタイミングを見直します。
仕事を忘れているように見えても、実際には、
- いつ始めればよいか分からない
- 手順を覚えられていない
- 別の活動から切り替えられない
- 失敗することが不安
- 完了のイメージを持てていない
という可能性があります。
「サボらないようにする」のではなく、忘れにくく、始めやすく、終わりが分かる仕組みを作るという視点が大切です。
少しだけ手間がかかる仕事にする
係の仕事は、簡単であれば何でもよいわけではありません。
ほとんど何もしなくても終わる仕事では、達成感や貢献感を感じにくいことがあります。
一方で、難しすぎる仕事では、毎回担任の支援が必要になったり、失敗体験が重なったりします。
目安は、自力で完了できる範囲の中で、少しだけ継続や手間が必要な仕事です。
「この仕事をしてくれたことで、学級のみんなが少し助かる」という程度の仕事が適しています。
特別な仕事を考える必要はありません。
電気の確認、窓の開閉、本棚の整理、教材の点検など、一般的な仕事でも、実際に学級生活を支える役割として設定されていれば十分です。
ただし、窓の開閉や重い物を運ぶ仕事などは、安全面にも注意します。子どもの身体面や衝動性、教室環境などを考え、危険がある仕事は設定しないようにします。
できない日から戻れるようにする
毎日行う仕事であっても、体調や心理状態によって取り組めない日はあります。
交流学級での予定が変わったり、気持ちの切り替えに時間がかかったりすることもあります。
仕事ができなかった日を、すぐに失敗として扱う必要はありません。
- その日は担任が代わりに行う
- 仕事を一つの手順だけにする
- 追加の仕事は休む
- 状態が落ち着いてから行う
- 翌日から再開する
といった調整をします。
責任を持って継続することは大切です。
同時に、できなかった日があっても、翌日から再び仕事へ戻れることも大切な力です。
一度できなかったことで係を取り上げたり、強く責めたりするのではなく、なぜ取り組みにくかったのかを確認し、再開しやすい形を作ります。
当番活動的な分かりやすさから主体的な係活動へ
情緒学級で係活動を始めるときは、当番活動のように、時間や手順、完了基準を明確にすると取り組みやすくなります。
ただし、ずっと担任が決めた仕事をこなすだけにする必要はありません。
子どもの実態に応じて、少しずつ活動を発展させていきます。
導入段階では、担任が仕事の内容や手順を明確にし、自分で終えられることを重視します。
仕事に慣れてきたら、複数の選択肢から自分で選んだり、自分に合った方法を考えたりします。
さらに発展できそうであれば、
- 仕事のやり方を改善する
- 新しい仕事を提案する
- 必要な道具を考える
- ほかの子どもと役割を調整する
といった、係活動らしい主体性や創意工夫につなげます。
1学期は決められた仕事を行い、2学期は選択肢を増やし、3学期は自分で改善方法を考えるというように、段階的に伸ばしてもよいでしょう。
ただし、必ず発展させなければならないわけではありません。
同じ仕事を毎日淡々と続けることに価値がある子どももいます。無理に仕事を複雑にせず、伸ばせそうなときに少し広げる程度で構いません。

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まとめ|「できた」と「役に立った」を毎日の仕事から積み上げる
情緒学級の係活動・当番活動では、珍しい仕事や楽しい企画を作ることだけが大切なのではありません。
まずは、子どもが自分に任された仕事を理解し、自分の力で終えられるようにすることが重要です。
そして、その仕事によって教室が使いやすくなったり、誰かが助かったりしたことを、本人が実感できるようにします。
係活動にも当番活動的な分かりやすさを取り入れ、
- いつ行うのか
- 何を行うのか
- どこまで行えば終わりなのか
- 終わったことをどう確認するのか
を明確にすると、子どもは取り組みやすくなります。
最初は小さな仕事を一つから始め、必要に応じて段階的に仕事や選択肢を増やします。
担任が目指したいのは、子どもを仕事で管理することではありません。
子どもが毎日の活動を通して、
自分でできた。
自分のしたことが、誰かの役に立った。
と感じられる機会を積み重ねることです。
その経験が、自分の役割を持つことへの自信や、学級の一員として過ごす実感につながっていきます。