今回は、情緒学級で子どもの見立てを作るために、担任がどのような場面を見て、どのように記録していけばよいのかについてまとめます。
情緒学級で子どもに合った支援を考えるためには、まず子どもの姿を具体的に見ることが大切です。
もちろん、最初から完璧な見立てを作る必要はありません。
担任は、日々の子どもの姿を一番近くで見られる立場にあります。だからこそ、少しずつ事実を記録しておくと、子どもに合った支援を考えやすくなります。
ただし、これは誰かと競うものではありません。
「自分は子どものことをどれだけ分かっているか」
「他の先生より詳しく見られているか」
と比べる必要はありません。
見るべきポイントは、ある程度決まっています。
そして、意識して見ていけば、少しずつ見えるようになります。
この記事では、そのきっかけになるように、情緒学級で子どもの見立てを作るための基本的な観察ポイントを整理します。
見立てとは、子どもの姿を説明できるようにすること
まず、「見立て」とは何かを確認しておきます。
ここで言う見立てとは、子どもの姿をもとに、
「この子は、どの場面で困りやすいのか」
「どのような支援があると動きやすいのか」
「どのような環境だと落ち着いて過ごしやすいのか」
「どのような伝え方なら理解しやすいのか」
を説明できるようにすることです。
つまり、ただ印象で、
「落ち着きがない」
「集中できない」
「すぐ不安定になる」
「やる気がない」
と捉えるのではなく、具体的な姿から考えるということです。
たとえば、
「算数の時間に集中できない」
だけでは、見立てとしてはまだ粗いです。
もう少し具体的に見ると、
「計算問題が10問以上並んでいるプリントを見ると、始めるまでに時間がかかる」
「最初の1問を一緒に確認すると、その後は3問ほど自分で取り組める」
「隣の子の動きが視界に入ると、手が止まりやすい」
「口頭で説明するより、解き方の例が見えると取り組みやすい」
のように整理できます。
ここまで見えてくると、手立ても考えやすくなります。
課題量を調整する。
最初の1問を一緒に行う。
座席の位置を調整する。
見本を先に示す。
このように、見立ては支援につながります。
また、保護者や同僚に説明するときにも役立ちます。
「この子はこういう子です」と印象で語るのではなく、
「この場面ではこのような姿が見られます」
「この支援があると取り組みやすくなっています」
「そのため、今はこの手立てを試しています」
と説明できるようになります。
見立てとは、子どもを決めつけることではありません。
子どもの姿を事実ベースで整理し、次の支援につなげるための考え方です。
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まずは事実ベースで記録する
見立てを作るためには、まず事実ベースで記録することが大切です。
情緒学級では、印象に残る場面が強く記憶されやすいです。
大きく荒れた。
泣いた。
離席した。
友達とトラブルになった。
活動に入れなかった。
こうした場面は、どうしても担任の記憶に残ります。
もちろん、それらを記録することも大切です。
ただし、不安定になった場面だけを記録していると、子どもの姿が偏って見えてしまいます。
落ち着いて過ごせていた時間。
自分でできていたこと。
支援があれば取り組めたこと。
好きな活動に集中していた時間。
友達と穏やかに関われた場面。
こうした姿も、同じように記録しておくことが大切です。
記録するときは、できるだけ事実で書きます。
「荒れた」だけではなく、何が起きたのか。
「落ち着いていた」だけではなく、何をして過ごしていたのか。
「できた」だけではなく、どのような支援があったのか。
たとえば、
「朝の支度を自分でできた」
「予定表を見て、次の活動を確認していた」
「算数のプリントは、最初の1問を一緒に確認すると、その後3問取り組めた」
「掃除の時間は、ほうきの担当だと最後まで参加できた」
「給食準備では、配膳台の近くに立つと周囲の動きが気になりやすかった」
このように、具体的な行動や場面で記録します。
最初から長く書く必要はありません。
短いメモで大丈夫です。
大切なのは、印象ではなく、あとから見返したときに子どもの姿が思い出せる形で残すことです。
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毎日繰り返す場面から見る
子どもの実態把握をするときは、毎日繰り返す場面から見るとよいです。
なぜなら、毎日ある場面は観察しやすく、手立ての効果も確認しやすいからです。
たとえば、次のような場面です。
朝の支度。
授業準備。
片付け。
給食準備。
あいさつ。
掃除。
帰りの支度。
机やロッカーの整理。
係活動。
友達との遊び。
一人で過ごす時間。
こうした場面は、学校生活の中で何度も出てきます。
そのため、子どもがどこでつまずきやすいのか、どこなら自分で動けるのかを見やすいです。
たとえば、朝の支度一つを見ても、いろいろな姿があります。
ランドセルから荷物を出せるか。
提出物を出せるか。
連絡帳を出せるか。
道具を決まった場所に入れられるか。
次に何をするか分かっているか。
途中で気になるものに意識が向きやすいか。
声をかければ戻れるか。
手順表があれば自分で動けるか。
このように見ると、「朝の支度が苦手」という大きな見方ではなく、
「提出物を出すところで止まりやすい」
「道具の場所が決まっていれば自分で動ける」
「手順が見えると最後まで進めやすい」
のように、具体的に見えてきます。
具体的に見えると、手立ても具体的になります。
提出物ボックスを分かりやすくする。
朝の支度の順番をカードで示す。
最初だけ一緒に確認する。
できたところに印をつける。
このように、支援を考えやすくなります。
限られた時間の中では、まず日常的に困りやすい場面や、整えると生活全体が楽になりやすい場面から見るとよいです。
たとえば、朝の支度が安定すると、1日の始まりが落ち着きやすくなります。
授業準備が安定すると、学習に入りやすくなります。
帰りの支度が安定すると、1日の終わりが荒れにくくなります。
毎日繰り返す場面には、見立ての材料がたくさんあります。
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できないことより、できていることを見る
見立てを作るときは、できないことだけでなく、できていることを見ることが大切です。
情緒学級では、どうしても困っている場面に目が向きやすくなります。
活動に入れない。
切り替えられない。
友達とトラブルになる。
片付けられない。
課題に取り組めない。
もちろん、こうした困りごとは見ておく必要があります。
ただ、できないことばかり見ていると、支援の方向がどうしても消極的になりやすいです。
禁止する。
避ける。
注意する。
回避する。
できないことを補う。
こうした手立ても必要な場面はありますが、それだけでは子どもの成長につながりにくいことがあります。
一方で、できていることを見ると、支援の入り口が見つかりやすくなります。
どの活動なら集中できるのか。
どの場面なら安心して過ごせるのか。
どの支援があると動けるのか。
何に興味を持っているのか。
どの関わり方なら受け入れやすいのか。
こうしたことが見えてきます。
たとえば、
「一人でプリントに取り組むのは苦手だが、教師と最初の1問を確認すると取り組みやすい」
「交流学級では緊張しているが、情緒学級では自分の思いを言葉にしやすい」
「口頭説明だけでは動きにくいが、予定表を見ると次の活動に移りやすい」
「友達との遊びではトラブルになることもあるが、好きな工作では長く集中できる」
このように、できていることや支援があればできることを見ると、次の手立てを考えやすくなります。
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できることベースは、甘やかしではない
できていることを中心に見るというと、
「苦手なことを見なくてよいのか」
「できないことを避けているだけではないか」
「甘やかしにならないか」
と感じる人もいるかもしれません。
しかし、できることベースで見ることは、苦手を放置することではありません。
むしろ、苦手なことに取り組むための土台を作ることです。
子どもが安心して過ごせる場面。
成功体験を積める場面。
自分の得意な方法で取り組める場面。
大人に分かってもらえていると感じられる場面。
こうした土台があると、苦手な場面への支援も入りやすくなります。
反対に、安心感がない状態で苦手なことばかり求められると、子どもは不安定になりやすくなります。
だから、まずはできることを見る。
できる場面を増やす。
うまくいった条件を記録する。
その条件を、少しずつ苦手な場面にも応用していく。
この流れが大切です。
「できることを見る」というのは、子どもを甘やかすことではありません。
子どもが力を発揮しやすい条件を見つけることです。
その条件をもとに、次の支援を考えることです。
頑張りを具体的に見られると、声かけも変わる
子どもの見立てが少しずつできてくると、声かけも変わります。
何がその子にとって難しいのか。
どこを頑張っていたのか。
どの支援があると取り組めたのか。
どの場面では安心して過ごせたのか。
こうしたことが分かると、褒め方や認め方も具体的になります。
たとえば、
「よく頑張ったね」
だけでも悪くはありません。
ただ、
「最初の1問を一緒に確認したあと、自分で3問進められたね」
「予定表を見て、次の活動に自分で移れたね」
「掃除の時間、最後までほうきを持って参加できたね」
「困ったときに、手伝ってと言えたね」
のように伝えると、子どもにも何がよかったのかが伝わりやすくなります。
これは、関係づくりにもつながります。
大人が自分の姿を具体的に見てくれている。
できなかったところだけでなく、できたところも見てくれている。
頑張りの中身を分かってくれている。
そう感じられることは、子どもにとって大きな安心になります。
【関連記事】情緒学級の関係性づくり|できたことを一緒に喜ぶことから始める
理解の仕方を見る
見立てを作るときは、子どもがどのように情報を理解しているのかを見ることも大切です。
口頭での説明が入りやすいのか。
予定表やカードがあると分かりやすいのか。
実物を見せると理解しやすいのか。
時計や数字で示すと動きやすいのか。
絵やイラストがあると安心しやすいのか。
子どもによって、情報の受け取り方には違いがあります。
たとえば、大人の方をしっかり見ているからといって、言葉の内容を十分に理解しているとは限りません。
また、返事をしているからといって、内容まで分かっているとは限りません。
「はい」と言う。
うなずく。
言われた言葉を復唱する。
文字を読む。
こうしたことができていても、実際の行動につながっていない場合があります。
そのため、指示を出したあとに、少し確認してみることが大切です。
「このあと何をするんだったかな」
「何時になったら戻るんだったかな」
「終わったらどこに出すんだったかな」
「困ったらどうするんだったかな」
このように問い返すと、どこまで伝わっているのかが見えやすくなります。
もし言葉だけでは伝わりにくい場合は、時計、予定表、絵カード、実物、見本などを組み合わせます。
たとえば、
「10時20分に戻るよ」
と言葉だけで伝えるより、時計の針や予定表と一緒に確認する。
活動の流れを言葉だけで説明するより、手順を見える形にしておく。
片付ける場所を口頭で伝えるだけでなく、実際に場所を示す。
このように、伝え方を変えると動きやすくなることがあります。
ここで大切なのは、
「この子は理解していない」
で終わらせないことです。
どの伝え方なら理解しやすいのか。
どの伝え方だと拾いにくいのか。
どの支援があると行動につながるのか。
そこを見ることが、見立てにつながります。
大人の関わりへの反応も見る
子どもの姿を見るときは、大人の関わりに対する反応も見ておくとよいです。
どの声かけで動きやすいのか。
どの言い方だと不安が高まりやすいのか。
一緒に確認すると動けるのか。
少し距離を置いた方が落ち着くのか。
笑顔やうなずきなどの非言語的な関わりが有効なのか。
短い言葉の方が入りやすいのか。
選択肢を示すと動きやすいのか。
こうしたことも、見立ての材料になります。
子どもの行動は、子どもだけで完結しているわけではありません。
大人の声かけ。
距離感。
表情。
タイミング。
関わる時間の長さ。
指示の出し方。
こうしたものによって、子どもの反応が変わることがあります。
たとえば、同じ「片付けよう」という声かけでも、
「早く片付けなさい」と言うと固まる。
「あと1回やったら片付けよう」と言うと動きやすい。
言葉で言うより、片付けカードを見せる方が入りやすい。
正面から言うより、横に並んで一緒に確認する方が落ち着く。
このように違いが出ることがあります。
大人側の関わりを変えることで、子どもの行動が変わる場合もあります。
だからこそ、子どもの行動だけでなく、大人がどう関わったときにどう反応したのかも記録しておくとよいです。
教師の声かけや非言語コミュニケーションについては、別の記事で詳しく整理します。
好きなことや集中できることも見る
子どもを見立てるときは、好きなことや集中できることも大切な情報です。
何が好きなのか。
何に興味を持っているのか。
どの活動なら長く取り組めるのか。
どの話題だと表情が変わるのか。
何をしているときに安心しているのか。
こうした情報は、関係づくりにも支援にも使えます。
たとえば、絵を描くことが好きな子。
ブロックや工作に集中できる子。
昆虫や電車など、特定の話題に詳しい子。
体を動かす活動だと表情がよくなる子。
静かに一人で本を見る時間があると落ち着く子。
好きなことや集中できることには、その子の力が出やすい条件が含まれています。
もちろん、好きなことだけをさせればよいわけではありません。
ただ、好きなことを通して関係を作る。
得意な活動から成功体験を積む。
安心できる活動を一日の中に入れる。
苦手な活動の前後に、落ち着ける時間を作る。
このように使うことができます。
子どもの好きなことは、単なる雑談の材料ではありません。
見立てを作るための大事な情報です。
見立ては、手立て・保護者説明・同僚相談につながる
見立てを作ることには、いくつかの意味があります。
まず、手立てを考えやすくなります。
子どもがどの場面で困りやすいのか。
どの支援があると動きやすいのか。
どの伝え方なら理解しやすいのか。
どの環境だと落ち着きやすいのか。
こうしたことが分かると、支援は具体的になります。
次に、保護者への説明にもつながります。
「学校では落ち着いています」
「少し不安定です」
だけでは、保護者には学校での姿が伝わりにくいです。
しかし、
「朝の支度は、手順表を見ながら自分で進められる日が増えています」
「算数では、最初の問題を一緒に確認すると、その後は自分で取り組む姿が見られます」
「交流学級から戻った後は疲れが出やすいので、短い休憩を入れると落ち着きやすいです」
のように伝えると、子どもの具体的な姿が伝わりやすくなります。
また、同僚に相談するときにも役立ちます。
「この子が少し気になります」
だけでは、相談を受ける側も助言しにくいです。
しかし、
「給食準備の時間に周囲の動きが気になりやすく、列から離れることがあります」
「ただ、役割が明確な日は最後まで参加できています」
「配膳台から少し離れた役割にすると参加しやすいのではないかと考えています」
のように伝えると、具体的な相談になります。
見立てがあると、子どもの姿を説明しやすくなります。
説明できると、手立てを共有しやすくなります。
【関連記事】情緒学級担任の役割とは?|子ども・保護者・学校をつなぐ仕事
最初から全部見ようとしなくてよい
ここまで、いろいろな観察ポイントを書いてきました。
ただし、最初から全部を見ようとしなくて大丈夫です。
全部見ようとすると、かなり大変です。
記録も続きません。
初めのうちは、次の3つだけでも十分です。
1つ目は、落ち着いて過ごせている場面。
2つ目は、不安定になりやすい場面。
3つ目は、毎日繰り返す生活場面でのつまずき。
この3つを見るだけでも、子どもの姿はかなり見えやすくなります。
慣れてきたら、
どの支援があると動きやすいか。
どの伝え方なら理解しやすいか。
どの大人の関わりが入りやすいか。
どの活動で力を発揮しやすいか。
と少しずつ広げていけばよいです。
大切なのは、完璧な記録を取ることではありません。
印象だけで判断しないこと。
事実を少しずつ残すこと。
できていることも見ること。
毎日繰り返す場面から手がかりを探すこと。
これだけでも、見立ては作りやすくなります。
子どもを見る力は、少しずつ育つ
情緒学級で子どもの見立てを作る力は、最初から完璧でなくて大丈夫です。
子どもの姿をよく見る。
短く記録する。
できていることを拾う。
毎日繰り返す場面を見る。
どの支援があると動きやすいのかを考える。
保護者や同僚に説明できる形に整理する。
この積み重ねで、少しずつ見えるものが増えていきます。
見立ては、子どもを決めつけるためのものではありません。
子どもがどこで困っているのか。
どこで力を発揮できるのか。
どのような支援があると安心して過ごしやすいのか。
それを考えるためのものです。
そして、見立てがあると、担任の関わりも変わります。
叱る前に、どこでつまずいたのかを考えやすくなります。
できなかった場面だけでなく、できていた場面も見つけやすくなります。
保護者や同僚にも、子どもの姿を具体的に伝えやすくなります。
最初は、毎日少しずつで大丈夫です。
子どもの姿を事実で見る。
できていることを見つける。
毎日繰り返す場面から記録する。
その積み重ねが、子どもに合った支援を考えるための土台になります。
今後、観察メモの取り方、生活場面ごとのチェックポイント、指示理解の見取り方、教師の声かけへの反応の見方などについては、別の記事でも詳しく整理していきます。