支援の方法

情緒学級で子どもに見通しを持たせる支援|予定・ゴール・困った時の動き方を示す

今回は、情緒学級で子どもが見通しを持って活動に参加しやすくなるための支援についてまとめます。

情緒学級の子どもの中には、見通しが持てないことで不安が高まりやすい子がいます。

次に何をするのか分からない。
どこへ行くのか分からない。
どのくらい続くのか分からない。
何ができれば終わりなのか分からない。
困ったときにどうすればよいのか分からない。

こうした状態では、安心して活動に入りにくくなります。

反対に、ある程度の見通しが持てると、活動に入りやすくなったり、安心して過ごしやすくなったりすることがあります。

ただし、ここで言う「見通し」は、単に時間割が分かることだけではありません。

この記事では、見通しを次の3つに分けて考えます。

1つ目は、行動予定の見通し。
2つ目は、達成目標の見通し。
3つ目は、困ったときの動き方の見通しです。

かなり雑に言えば、

「このあと何をするのか」
「何ができればOKなのか」
「困ったらどうすればよいのか」

が分かる状態です。

この3つが分かっていると、子どもは安心して活動に入りやすくなります。

見通しとは、これからの行動をイメージできること

まず、行動予定の見通しについて考えます。

行動予定の見通しとは、これから自分が何をするのかをイメージできることです。

完全にすべてを把握している必要はありません。

この時間はこれをする。
次はここへ行く。
これが終わったら、次はこの活動になる。
この活動のあとには休み時間がある。

このくらいの流れをイメージできることが大切です。

日常の予定については、比較的支援しやすいです。

たとえば、1日の予定を教室に掲示する。
朝の会で今日の予定を確認する。
個別に予定表を渡す。
朝の支度のあとに、担任と一緒に予定を確認する。
予定変更がある場合は、先に印をつけて知らせる。

このように、日常の中に予定確認の時間を入れてしまうと、子どもも見通しを持ちやすくなります。

「今日は何があるのか」
「いつ交流学級へ行くのか」
「いつ情緒学級に戻るのか」
「どの時間に苦手な活動があるのか」

こうしたことを、子どもと一緒に確認します。

大切なのは、担任が口頭で何度も説明するだけではなく、子どもが自分で確認できる手がかりを用意することです。

予定表。
黒板の掲示。
個人用のスケジュール。
絵カード。
時計。
しおり。

こうしたものを使って、「分からなくなったらここを見ればよい」という状態にしておきます。

【関連記事】情緒学級の教室環境づくり|子どもが迷わず動ける教室を作るポイント

非日常の場面ほど、見通しが必要になる

見通しが特に重要になるのは、普段と違う場面です。

たとえば、校外学習、運動会、発表会、水泳、避難訓練、学年行事、交流学級での特別な活動などです。

日常の時間割はある程度繰り返しがあります。
そのため、子どもも少しずつ流れを覚えやすいです。

しかし、行事や特別な活動は違います。

場所が変わる。
人の動きが増える。
音が増える。
待ち時間がある。
移動がある。
更衣がある。
いつもと違う先生が関わる。
活動の終わりが見えにくい。

こうした要素が重なると、不安が高まりやすくなります。

そのため、非日常の場面では、事前にかなり具体的な見通しを持たせることが大切です。

よく使いやすい方法は、写真やスライドを使って当日の流れを確認することです。

通常学級でも、校外学習や行事の前にスライドを使って流れを確認することがあります。
情緒学級では、それをさらに具体的にし、写真や場所の情報を加えて、子どもが当日の様子をイメージしやすい形にします。

たとえば、校外学習なら、

集合場所。
バスに乗る場所。
見学する場所。
昼食を食べる場所。
トイレの場所。
待つ場所。
帰ってくる場所。

こうした写真を使って、流れを確認します。

水泳なら、

更衣室。
移動経路。
プールサイド。
待つ場所。
入水の流れ。
終わった後の動き。

こうした写真があると、子どもは当日の様子をイメージしやすくなります。

一度作ったスライドや資料は、次年度以降も使えることがあります。
また、作成する過程で、大人側も当日の動きを整理しやすくなります。

誰がどの場面で見るのか。
どこで支援員の先生に入ってもらうのか。
どこで不安が出やすそうか。
どこに休憩できる場所があるか。

こうしたことも見えやすくなるので、引率や校内での情報共有にもつながります。

見通しは、直前だけでなく少しずつ作る

大きな行事やイベントは、直前にまとめて伝えるだけでは不十分なことがあります。

たとえば、行事のある週になって突然、

「今週は校外学習があるから頑張ろうね」

と言われても、子どもによっては急に知らされたように感じることがあります。

もちろん、全員がそうなるわけではありません。
ただ、見通しの持ちにくい子にとっては、直前の情報量が多すぎると、不安が高まることがあります。

そのため、担任側が2〜4週間ほど先の予定を把握しておくことが大切です。

これは、担任が仕事を前倒しするためだけではありません。

日常のちょっとした声かけに、先の予定を自然に入れられるようになるからです。

「来週は水泳があるから、今週のうちに流れを確認しておこうね」
「再来週は校外学習があるから、今度写真を見ながら確認しよう」
「運動会の練習が少しずつ始まるよ。今日は並び方だけ確認してみよう」

このように、少しずつ心構えを作っていくことができます。

大きな行事に参加して成功体験を積むためには、当日だけ頑張ればよいわけではありません。

事前に流れを知る。
少しずつ慣れる。
不安になりやすい場面を大人が把握する。
当日に誰がどうフォローするかを決めておく。

こうした準備が大切です。

もちろん、どれだけ事前指導をしても、当日に不安が出ることはあります。

その場合に備えて、誰がどの場面でフォローするのかを大人側で共有しておくことも必要です。

見通しを持たせる支援は、子どもだけのためではありません。

担任や関係する大人が、当日の動きを見通しておくためのものでもあります。

【関連記事】スモールステップとは何か|できないことを少しずつできる形にする

授業では「何をするか」を見えるようにする

次に、授業場面での見通しについて考えます。

授業では、「何をするのか」が分かっていることが大切です。

今から何をするのか。
一人でやるのか。
みんなでやるのか。
プリントをするのか。
タブレットを使うのか。
丸つけをするのか。
先生と確認するのか。
終わったら何をすればよいのか。

こうした流れが見えていると、子どもは活動に入りやすくなります。

特に国語や算数などでは、45分の流れをある程度見えるようにしておくとよいです。

たとえば、

  1. 今日やることを確認する
  2. 先生と一緒に例題を見る
  3. 一人で3問取り組む
  4. 丸つけをする
  5. 終わった人は読書かタブレット学習をする

このように、授業の流れを示します。

ここで大切なのは、課題が終わった後の見通しも示しておくことです。

子どもによっては、課題が終わった後に何をしてよいか分からないことで不安定になることがあります。

終わったら読書をする。
タブレット学習をする。
知育パズルをする。
追加課題に取り組む。
先生と確認する。
静かに待つ。

このように、空いた時間にやってよいことが分かっていると、子どもも動きやすくなります。

担任にとっても、授業の終盤に少し余白があると、やり切れなかったことのフォローや、短い記録の時間を取りやすくなります。

授業の残り5〜10分程度に少し余白を作ることは、子どもにとっても担任にとっても意味があります。

ただし、このあたりは授業設計の話にもなるので、詳しくは「45分間の授業の組み立て方」の記事で改めて整理します。

【関連記事】情緒学級の授業はどう回す?45分を安定させる基本テンプレート

達成目標の見通しを持たせる

見通しは、行動予定だけではありません。

授業や活動の中では、達成目標の見通しも大切です。

つまり、

「何ができればOKなのか」
「どこまでできれば終わりなのか」
「この時間に何を目指せばよいのか」

が分かることです。

たとえば、算数の時間にプリントを配ったとします。

子どもによっては、プリント全体を見ただけで、

「全部解けないとダメだ」
「分からなかったら失敗だ」
「最後までできない自分はダメだ」

と感じてしまうことがあります。

そのような場合は、達成目標を調整して伝えることが有効です。

「今日はまず3問できればOK」
「分からない問題は印をつければOK」
「最後まで解けなくても、考えたところまで書ければOK」
「まず1問だけ一緒にやってみよう」
「今日は答えを出すことより、考え方を出す時間にしよう」

このように、何ができればよいのかを示します。

ここで重要なのは、活動の名前づけです。

たとえば、「問題を解く時間」と言うと、答えにたどり着くことが目的のように聞こえる場合があります。

もちろん、問題を解くことが目的の時間もあります。

しかし、考え方を出すことや、分からないところを見つけることが大切な時間もあります。

その場合は、

「考える時間」
「分かるところを探す時間」
「まず1問やってみる時間」
「考えたことを書く時間」

のように、目的が伝わる名前にすると、子どもが取り組みやすくなることがあります。

解けなかったら失敗。
最後までできなかったらダメ。

そう感じやすい子にとっては、「何が成果なのか」が分かることが大切です。

答えにたどり着くことだけでなく、

考えた。
途中まで書いた。
分からないところに印をつけた。
助けを求めた。
1問だけ取り組んだ。
前より早く始められた。

こうした姿も、活動の成果として見えるようにします。

達成目標の見通しがあると、子どもは「何を目指せばよいのか」が分かりやすくなります。

困ったときの動き方も、見通しである

3つ目は、困ったときの動き方の見通しです。

子どもにとって大切なのは、順調に進むときの流れだけではありません。

むしろ、困ったときにどうすればよいかが分かっていることが大切です。

分からない問題が出たらどうするのか。
予定が変わったら誰に聞くのか。
行事中に不安になったらどこへ行くのか。
校外学習で困ったら誰に声をかけるのか。
教室に戻りたい場合はどう伝えるのか。
休憩したいときは何を使って伝えるのか。

こうしたことが分かっていると、子どもは安心しやすくなります。

たとえば、校外学習であれば、

困ったら担任に声をかける。
近くの支援員の先生に伝える。
しおりの予定を見る。
集合場所に戻る。
不安になったら、決めた場所で少し休む。

このような動き方を事前に確認しておきます。

授業中であれば、

分からないときはヘルプカードを出す。
手を挙げる。
最初の1問だけ先生と確認する。
少し休憩してから戻る。
予定表を見て次の活動を確認する。

このように、困ったときの選択肢を用意しておきます。

見通しとは、うまくいく流れだけを知っていることではありません。

うまくいかないときに、どうすれば戻れるのかを知っていることでもあります。

【関連記事】情緒学級で叱らずに済む関わり方|環境づくりと見通しの持たせ方

クールダウンも、活動に戻るための見通しとして考える

困ったときの動き方の一つに、クールダウンがあります。

ただし、クールダウンの使い方は子どもによって異なります。
そもそもクールダウンが必要ない子もいます。

そのため、具体的な方法については別の記事で詳しく整理します。

ここでは、見通しとの関係だけ確認します。

クールダウンは、活動から離れること自体を目的にするものではありません。

基本的には、気持ちを落ち着けて、その後の活動に戻るための手段として考えます。

「今この場面で頑張るために、一度気持ちを整える」
「少し休憩してから、問題の続きをする」
「教室の外で落ち着いてから、授業に戻る」
「気持ちが高まりすぎたので、安全に過ごせる形に切り替える」

このような意味づけです。

大人がクールダウンを促す場合も、それは子どもを追い出すためではありません。

「今、一度気持ちを整えると、この後の時間を過ごしやすくなる」
「ここで少し休めば、残りの活動に戻りやすくなる」

という見通しを持たせるためです。

「頭を冷やしてきなさい」と突き放すような意味ではありません。

また、広い意味で考えれば、休憩してから課題に戻ることもクールダウンの一つです。

問題を解くのに疲れてきた。
少し休憩する。
その後、続きを解く。

この流れが子どもに分かっていれば、休憩は活動から逃げるためではなく、活動に戻るための手段になります。

クールダウンにも、見通しが必要です。

どこで落ち着くのか。
どのくらい休むのか。
誰に声をかけるのか。
戻るときはどうするのか。
戻った後に何から始めるのか。

こうしたことを決めておくと、子どもも大人も対応しやすくなります。

【関連記事1】情緒学級のクールダウンはどう作る?安全に気持ちを整える仕組みと約束作り

【関連記事2】情緒学級で子どもとの約束を共有するには?担任だけのルールにしないために

見通しは、子どもを縛るためのものではない

見通しを持たせる支援というと、予定やルールを細かく決めることだと捉えられることがあります。

もちろん、予定や流れを示すことは大切です。

ただし、見通しは子どもを縛るためのものではありません。

子どもが安心して活動に入るためのものです。

この後、何をするのか。
どこまでできればOKなのか。
困ったときにどうすればよいのか。

これらが分かることで、子どもは少し安心して動きやすくなります。

特に情緒学級では、子どもが不安になったり、活動に入りにくくなったりする場面があります。

そのときに、

「ちゃんとやりなさい」
「早くしなさい」
「分かっているでしょ」

と伝えるだけでは、うまくいかないことがあります。

必要なのは、子どもが動きやすくなるための手がかりです。

予定表を見る。
写真で流れを確認する。
今日のゴールを確認する。
困ったときの相談先を知る。
休憩して戻る流れを決めておく。

こうした支援があることで、子どもは安心して活動に入りやすくなります。

【関連記事】情緒学級で個別の約束事を作るときの考え方|ルールを増やす前に確認したいこと

まとめ

情緒学級で子どもが見通しを持つということは、単に予定表を見ることだけではありません。

大きく分けると、次の3つがあります。

1つ目は、行動予定の見通しです。
このあと何をするのか、どこへ行くのか、次に何があるのかが分かることです。

2つ目は、達成目標の見通しです。
何ができればOKなのか、どこまで取り組めばよいのか、その時間に何を目指せばよいのかが分かることです。

3つ目は、困ったときの動き方の見通しです。
分からないときに誰に聞くのか、不安になったときにどうするのか、休憩やクールダウンの後にどう戻るのかが分かることです。

この3つがあると、子どもは安心して活動に入りやすくなります。

もちろん、見通しを持たせればすべてがうまくいくわけではありません。

事前に確認していても、当日に不安になることはあります。
予定通りに動けないこともあります。
クールダウンが必要になることもあります。

それでも、見通しがあることで、子どもも大人も戻る場所を持ちやすくなります。

予定が分からなくなったら、予定表を見る。
何をすればよいか迷ったら、今日のゴールを確認する。
困ったら、決めておいた方法で助けを求める。
気持ちが高まったら、落ち着いて戻る流れを使う。

このような手がかりを用意しておくことが、情緒学級での安心感につながります。

見通し支援は、子どもを管理するためのものではありません。

子どもが安心して活動に参加し、自分で動きやすくなるための土台です。

今後、写真スライドを使った行事前指導、クールダウンの具体的な進め方、45分授業の流れの示し方などについても、別の記事で詳しく整理していきます。

【関連記事】情緒学級のクールダウンはどう作る?安全に気持ちを整える仕組みと約束作り

【関連記事】情緒学級の授業はどう回す?45分を安定させる基本テンプレート

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