情緒学級での支援を考える時には、まず子どもの姿をよく見ることが大切です。
支援は、手立てから始めるものではありません。
「この子には何をすればよいか」と考える前に、「この子は今、どのような状態なのか」を見取る必要があります。
子どもの姿は、固定されたものではありません。
成長によって変わりますし、関わる大人やその時の環境によっても表れ方が変わります。
前年度からの引き継ぎや過去の記録は大切です。
ただし、それだけで判断しすぎると、今の子どもの姿を見落としてしまうことがあります。
だからこそ、目の前に立つ大人が、自分の目で子どもを見ることが大切です。
その上で、できるだけ具体的に記録していきます。
「落ち着きがない」
「切り替えが苦手」
「友達とうまく関われない」
このような印象だけで終わらせるのではなく、できるだけ行動で見ます。
何分くらい座っていられるのか。
どの場面で席を立つのか。
どんな声かけなら戻ってこられるのか。
何から何への切り替えが難しいのか。
どの友達との関わりでトラブルが起きやすいのか。
このように、時間・回数・場面・行動で見ていくと、支援を考えやすくなります。
好きなこと・得意なことを知る
まず見ておきたいのは、その子の好きなことや得意なことです。
どんなことが好きなのか。
何に興味を持っているのか。
どんな活動なら自信を持って取り組めるのか。
どんな話題になると表情が明るくなるのか。
こうしたことは、関係づくりの大切な材料になります。
子どもの中には、強く興味を持っているものがある子もいます。
電車、虫、恐竜、ゲーム、絵、工作、キャラクター、スポーツ、音楽など、何かに深くハマっている子です。
そのような興味は、教師との関係づくりに使えることがあります。
詳しくなくても構いません。
子どもが好きなことを聞く。
教えてもらう。
一緒に見てみる。
少し調べて話題にする。
それだけでも、「この先生は自分のことを見てくれている」という感覚につながることがあります。
ただし、好きなことが強い分、切り替えが難しくなる場合もあります。
好きな活動から授業に戻れるのか。
どのくらい時間があれば切り替えられるのか。
予告があれば切り替えやすいのか。
終わりの合図が必要なのか。
大人の声かけが必要なのか。
こうした点も、あわせて見ておくとよいです。
好きなことは、関係づくりの入口になります。
同時に、学校生活の中でどう扱うかを考える材料にもなります。
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落ち着く活動・集中できる活動を知る
次に見ておきたいのは、その子が落ち着く活動や集中できる活動です。
何をしている時に笑顔になるのか。
どんな時に真剣な表情になるのか。
どの活動なら長く取り組めるのか。
どんな活動の後に落ち着きやすいのか。
子どもによって、落ち着きやすい活動は違います。
絵を描くと落ち着く子もいます。
読書をすると落ち着く子もいます。
決まった作業をすると落ち着く子もいます。
体を動かすことで落ち着く子もいます。
一人で静かに過ごすことで落ち着く子もいます。
こうした活動を知っておくと、支援の選択肢が増えます。
不安が高まった時に、どんな活動なら戻ってこられるのか。
授業に入る前に、どんな準備があると落ち着きやすいのか。
クールダウンの時間に何をするとよいのか。
その子にとって落ち着きやすい活動を把握しておくことは、情緒学級の支援ではとても大切です。
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不安になった時の切り替え方を見る
情緒支援では、不安になった時の様子を見ることも重要です。
不安が高まった時、その子はどのような行動を取るのか。
その後、どのくらいの時間で落ち着くのか。
一人で落ち着けるのか。
大人の関わりが必要なのか。
場所を変える方がよいのか。
その場で少し待つ方がよいのか。
こうしたことを見ていきます。
例えば、声をかけると落ち着く子もいます。
反対に、声をかけすぎると余計に不安が高まる子もいます。
近くに大人がいると安心する子もいます。
少し距離を取った方が落ち着く子もいます。
静かな場所に移動すると落ち着く子もいます。
場所を変えると余計に不安になる子もいます。
同じ「不安になっている」という状態でも、必要な支援は子どもによって違います。
だからこそ、実際の場面でよく見る必要があります。
また、気持ちを落ち着けるために道具が役立つこともあります。
お気に入りの本。
メモ帳。
クールダウン用のカード。
手元で触れるもの。
予定を確認できる表。
気持ちを表すカード。
こうしたものがあることで、落ち着きやすくなる子もいます。
ただし、特定の物がないと切り替えられない状態になっている場合は、少しずつ別の方法も増やしていけるとよいです。
道具を否定する必要はありません。
大切なのは、その子が気持ちを立て直すための選択肢を増やしていくことです。
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安心して関われる人を知る
その子が安心して関われる人を知っておくことも大切です。
誰となら話しやすいのか。
誰の言葉なら受け取りやすいのか。
誰に認められると自信につながるのか。
困った時に誰のところへ行きやすいのか。
子どもの中には、特定の先生や大人との関係が安心材料になっている子もいます。
もちろん、特定の人だけに頼りすぎる状態は避けたいところです。
しかし、支援の最初の段階では、「この人なら安心できる」という存在が大きな支えになることがあります。
また、第三者からの承認が効果的なこともあります。
例えば、
「A先生も、今日の頑張りをほめていたよ」
「B先生が、前より落ち着いて参加できていたねと言っていたよ」
「さっきの行動、他の先生も見ていてすごくよかったと言っていたよ」
このように、事実に基づいて伝えることで、子どもの自信につながることがあります。
ここで大切なのは、他の先生の名前を脅しのように使わないことです。
「A先生に言うよ」
「B先生に怒られるよ」
という使い方ではなく、子どもを支えるために使います。
また、トラブルが起きた時に他の先生の手を借りることは、悪いことではありません。
担任一人で抱え込まず、子どもが受け取りやすい大人に入ってもらう。
その場の安全を保つために、複数の大人で対応する。
子どもが落ち着ける関係性を活用する。
こうした判断も、支援を考える上では大切です。
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人間関係の作り方を見る
子どもがどのように人間関係を作ろうとするのかも見ておきます。
自分から関わっていくタイプなのか。
控えめに様子を見るタイプなのか。
相手から来てくれるのを待つタイプなのか。
一人でいる方が落ち着くタイプなのか。
関わりたい気持ちはあるけれど、方法がうまくいかないタイプなのか。
子どもによって、人との関わり方はかなり違います。
また、他の子どもに興味がないように見えても、実は関わり方が分からないだけの場合もあります。
一見おとなしく見えても、特定の相手とはよく関わっていることもあります。
逆に、よく話しかけているように見えても、相手の反応をあまり見られていないこともあります。
最初から深く決めつける必要はありません。
まずは、教師から見える行動をもとに、ざっくりと見立てを作ります。
その後、関わりながら修正していけばよいです。
子どもの中には、相手との関係を「自分が主導できるかどうか」で確認しようとする子もいます。
大人の反応を試す。
どこまで許されるかを確認する。
自分の要求が通るかどうかに強くこだわる。
友達との関係で優位に立とうとする。
こうした関わり方が見られることもあります。
その場合、すべてを正面からぶつかって止めようとすると、関係がこじれることがあります。
一方で、周囲の子どもに対して強い言葉を使ったり、相手を下に見るような関わりを続けたりする場合は、そのままにしておくわけにもいきません。
大人があえて譲ってよい場面もあります。
本人が向き合う必要のある場面では、譲らずに止める必要もあります。
どこは受け流すのか。
どこは止めるのか。
どこは別の関わり方を教えるのか。
どこは大人が間に入るのか。
このバランスを考えるためにも、その子がどのような関係性の作り方をしているのかを見ておくことが大切です。
教室の安心・安全を保つ視点で見る
個別の支援を考える時にも、教室全体の安心・安全を保つ視点は欠かせません。
情緒支援では、その子一人だけを見ればよいわけではありません。
周りで見ている子どもたちにも影響があります。
暴言が頻繁に出る。
毎日のように同じ子同士でトラブルが起きる。
誰かが強く責められる場面が続く。
特定の子が怖がっている。
教室全体が落ち着かなくなる。
このような状態が続くと、本人だけでなく、周囲の子どもたちにも負担がかかります。
だからこそ、どのような場面で刺激が入りやすいのかを見ておく必要があります。
誰との距離が近いとトラブルになりやすいのか。
どの活動で不安定になりやすいのか。
どんな声かけで強く反応するのか。
どの時間帯に崩れやすいのか。
どんな環境なら落ち着いて過ごせるのか。
こうした情報は、教室の安心・安全を整えるために役立ちます。
支援は、子どもを管理するためだけのものではありません。
その子が安心して過ごせるようにするためであり、周りの子どもたちも安心して過ごせるようにするためのものです。
指示の入りやすさを見る
どのような指示や説明が伝わりやすいのかも、必ず見ておきたいところです。
音声での説明が入りやすいのか。
文字で示した方が分かりやすいのか。
図や写真がある方が理解しやすいのか。
実物を見せた方がよいのか。
短い言葉の方が伝わりやすいのか。
手順を一つずつ分けた方がよいのか。
子どもによって、理解しやすい伝え方は違います。
全体への声かけだけでは動きにくい子もいます。
個別に短く伝えると動ける子もいます。
言葉だけでは分かりにくいけれど、図や手順表があると動ける子もいます。
逆に、視覚情報が多すぎると混乱する子もいます。
教師側で伝え方を変えられる部分は、積極的に工夫してよいところです。
声かけだけで動けていないなら、見て分かる手がかりを足してみる。
図だけで理解できていないなら、短い言葉で補ってみる。
全体指示で抜けるなら、個別に一言添えてみる。
一度に伝える量が多すぎるなら、手順を分けてみる。
こうした調整をすることで、子どもが動きやすくなることがあります。
また、指示の入りにくさは、不安にもつながります。
何をすればよいか分からない。
どこまでやればよいか分からない。
次に何が起こるか分からない。
自分だけ分かっていないように感じる。
こうした状態は、子どもにとって大きな負担になります。
だからこそ、その子にとって分かりやすい伝え方を見つけることは、情緒学級における支援の大切な一部です。
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ざっくり言えば、好き・嫌い、得意・苦手を知る
情緒支援の実態把握で見ることはたくさんあります。
好きなこと。
得意なこと。
自信を持っていること。
集中できること。
落ち着く活動。
不安になりやすい場面。
切り替えに必要な時間。
安心して関われる人。
人間関係の作り方。
指示の入りやすさ。
苦手な関わり方。
細かく見れば、いくらでも観察することはあります。
ただ、超ざっくりまとめるなら、
「好きと嫌い」
「得意と苦手」
を知ることです。
何が好きなのか。
何が嫌いなのか。
何が得意なのか。
何が苦手なのか。
どの場面で安心するのか。
どの場面で不安になるのか。
ここを具体的に見ていくと、支援はかなり考えやすくなります。
支援は、教師の思いつきで組むものではありません。
子どもの姿を見て、具体的な記録を取り、その子に合った手立てを考えていくものです。
まず見る。
具体的に記録する。
好き・得意・苦手・不安を整理する。
その上で、支援を組み立てる。
この順番を大切にすると、子どもに合った支援に近づきやすくなります。