今回は、個別の教育支援計画・個別の指導計画の読み方について書いていきます。
個別の教育支援計画や個別の指導計画は、作成することに目が向きやすい書類です。
もちろん、書くことも大切です。
しかし、実際の現場では「読む力」もかなり重要です。
新年度の引き継ぎで計画を受け取ったとき。
新しく担任する子どもの情報を確認するとき。
保護者との面談前に、これまでの支援の経緯を確認するとき。
そうした場面で、個別の教育支援計画や個別の指導計画をどう読むかによって、子どもや保護者への関わり方は変わります。
この記事では、個別の教育支援計画・個別の指導計画を読むときに、私が大切だと考えているポイントをまとめます。
個別の計画は、意思疎通の道具でもある
個別の教育支援計画や個別の指導計画は、単なる事務書類ではありません。
子どもの実態を記録するものでもあります。
支援の方針を整理するものでもあります。
しかし、それだけではありません。
私は、これらの計画は「意思疎通の道具」でもあると考えています。
本人は何に困っているのか。
保護者は何を願っているのか。
これまでの担任は、どのような見立てを持って関わってきたのか。
どのような支援が有効だったのか。
学校ではどのような姿が見られたのか。
家庭ではどのように過ごしているのか。
そうした情報を、次に関わる人へつないでいくための道具です。
そのため、計画を読むときには、子どもを分類したり、決めつけたりするために読むのではなく、これまで関わってきた人たちが何を見て、何を大切にしてきたのかを受け取るつもりで読むことが大切です。
最初から隅々まで読み込まなくてもよい
個別の教育支援計画や個別の指導計画には、さまざまな情報が書かれています。
本人の実態。
保護者の願い。
支援の経緯。
学習面の様子。
生活面の様子。
対人関係。
家庭環境。
関係機関との連携。
長期目標。
短期目標。
支援の手立て。
評価。
こうした情報を、最初からすべて同じ熱量で読み込もうとすると、かえって大事な情報が見えにくくなることがあります。
特に年度初めは、担任自身も子どものことをまだ十分には分かっていません。
その段階で、書類だけをもとに細かい支援方針まで固めきろうとしなくてもよいと思います。
大切なのは、まず実務上の優先度が高い情報から拾うことです。
つまり、子どもや保護者と関わるうえで、すぐに必要になる情報から読むということです。
まず本人の思いと保護者の願いを読む
最初に大切にしたいのは、本人の思いや保護者の願いです。
ここは、できるだけ丁寧に読みます。
本人は何に困っているのか。
どのように過ごしたいと思っているのか。
学校生活でどんなことを望んでいるのか。
保護者は、学校に何を期待しているのか。
どのような成長を願っているのか。
どのような点に不安を感じているのか。
ここを読むことで、その子への支援がどこへ向かうべきなのかが見えてきます。
もちろん、書類にはあっさりとしか書かれていないこともあります。
「楽しく学校に通ってほしい」
「友達と仲良く過ごしてほしい」
「落ち着いて学習に取り組んでほしい」
このように、短く書かれていることもあると思います。
ただ、その短い言葉の中にも、保護者の思いやこれまでの経緯が含まれていることがあります。
気になることがあれば、面談や日々のやり取りの中で、保護者の負担にならない範囲で確認していくとよいです。
書類だけで分かったつもりになるのではなく、書類を入口にして、本人や保護者との理解を深めていく。
そのような読み方が大切です。
【関連記事】情緒学級担任の役割とは?|子ども・保護者・学校をつなぐ仕事
これまでの支援の経緯と実態を読む
次に見るのは、これまでの支援の経緯と子どもの実態です。
これまで、どのような場面で困りやすかったのか。
どのような支援を受けてきたのか。
どのような関わりで安定しやすかったのか。
どのような場面で崩れやすかったのか。
どのような活動には参加しやすかったのか。
こうした情報は、担任が関わり始めるときの大事な手がかりになります。
ただし、ここで注意したいのは、計画に書かれている実態は、あくまで「その時点で見えていた子どもの姿」だということです。
子どもの姿は、環境によって変わります。
担任が変わる。
クラスのメンバーが変わる。
教室の場所が変わる。
学習内容が変わる。
家庭の状況が変わる。
そうした変化によって、前年度と同じ姿が見られるとは限りません。
そのため、書かれていることを大切な情報として受け取りつつも、「今年度も必ず同じようになる」と決めつけないことが大切です。
計画は、子どもを固定するためのものではありません。
これまでの見立てを受け取り、今後の関わりの仮説を立てるためのものです。
関連記事:情緒学級の実態把握|子どもの姿を記録して見立てを作る方法
診断名や特性は、型にはめるためではなく注意点として読む
個別の教育支援計画や個別の指導計画には、本人の特性や特質、診断名、検査結果などが書かれていることもあります。
もちろん、そうした情報を把握することは大切です。
どのような傾向があるのか。
どのような困難さが出やすいのか。
どのような支援が必要になりやすいのか。
それを知っておくことで、事前に配慮できることが増えます。
ただし、診断名や特性に子どもをはめ込みすぎるのは避けた方がよいです。
診断名や特性は、子どもを決めつけるために読むものではありません。
関わるときの注意点を知るために読むものです。
「この子はこういう子だ」と断定するのではなく、「こういう傾向があるかもしれない」「こういう場面では困りやすいかもしれない」くらいの捉えでよいと思います。
最終的には、目の前の子どもを見ることが大切です。
書類に書かれている情報を知識として持ちつつ、実際の関わりの中で、今年度の子どもの姿を見ていく。
そのバランスが大切です。
好きなこと・得意なこと・苦手なことは熟読する
計画の中でも、特に丁寧に読みたいのが、具体的な関わりのヒントになる部分です。
好きなこと。
得意なこと。
自信を持っていること。
苦手なこと。
不安になりやすい場面。
崩れやすい場面。
切り替えが難しくなる場面。
落ち着きやすい関わり方。
こうした情報は、日々の支援に直結します。
好きなことや得意なことは、関係づくりの入口になります。
絵を描くことが好きなのか。
虫が好きなのか。
ゲームの話が好きなのか。
特定のキャラクターが好きなのか。
運動が得意なのか。
計算が得意なのか。
そうした情報があると、最初の関係づくりがしやすくなります。
また、苦手なことや崩れやすい場面を知っておくことも大切です。
急な予定変更で不安になりやすい。
大きな音が苦手。
勝敗のある活動で崩れやすい。
書く量が多いと取り組みにくい。
集団の中で指示を聞くことが難しい。
こうした情報があれば、事前に支援を組むことができます。
ここは、かなり実務的に重要な部分です。
最初の段階で、手立てまで完璧に固める必要はありません。
しかし、子どもと関わるうえで手がかりになる情報は、できるだけ丁寧に拾っておくとよいです。
【関連記事】情緒学級の関係性づくり|できたことを一緒に喜ぶことから始める
家庭での様子もあわせて読む
学校での様子だけでなく、家庭での様子も大切です。
子どもは学校だけで育つわけではありません。
家庭でも生活しています。
家庭でも支援を受けています。
保護者も日々、子どもと関わりながら、さまざまな工夫をしています。
そのため、計画を読むときには、学校での様子と家庭での様子を両方拾うつもりで読むとよいです。
家庭ではどのように過ごしているのか。
家庭で落ち着ける時間はあるのか。
保護者はどのようなことに気を配っているのか。
家庭でどのような支援を受けることができているのか。
兄弟関係はどうか。
兄弟は通常の学級に在籍しているのか、特別支援学級に在籍しているのか。
家庭の中で、本人はどのような立ち位置で過ごしているのか。
こうした情報から、本人の生活全体をなんとなく想像できることがあります。
もちろん、家庭環境は家庭を評価するために読むものではありません。
子どもが学校以外でどのように過ごし、保護者がこれまでどのように支えてきたのかを知るために読むものです。
ここを丁寧に見ておくと、保護者との関係づくりにもつながります。
保護者がこれまで何に困ってきたのか。
どのような関わりを積み重ねてきたのか。
学校には何を望んでいるのか。
そうしたことを少しでも把握しておくと、担任と保護者のやり取りもズレにくくなります。
また、保護者自身に支援ニーズがある場合もあります。
保護者が手帳を持っている場合もあります。
そのような情報が書かれている場合には、必要な範囲で把握しておくことも大切です。
当然ですが、個別の計画に書かれている情報は、非常に繊細な個人情報です。
必要な範囲で読み、支援に生かすために扱うことが大切です。
【関連記事】情緒学級の保護者対応で大切なこと|子どもの頑張りを共有する関係づくり
有効だった手立ては、一度信じて使ってみる
これまで有効だった手立てが書かれている場合は、まず一度信じて使ってみるとよいです。
新しく担任になったとき、自分なりの関わり方を試したくなることもあるかもしれません。
もちろん、担任が自分の目で子どもを見て、支援を工夫することは大切です。
ただ、最初から自分のオリジナルの関わりを強くぶつける必要はありません。
むしろ、急に関わり方や対応が大きく変わると、子どもが混乱したり、不安になったりすることがあります。
前年度までに有効だった支援があるなら、まずはそれを使ってみる。
たとえば、予定を視覚的に示す。
活動の終わりを明確にする。
選択肢を提示する。
急な変更は事前に伝える。
クールダウンできる場所を用意する。
声をかけすぎず、少し待つ。
好きな活動を関係づくりの入口にする。
そうした基本的な手立てが書かれている場合は、一旦そのまま試してみるとよいです。
その上で、今年度の子どもの姿に合わせて少しずつ調整していきます。
最初から支援を作り直す必要はありません。
まずは、これまでの支援を引き継ぐ。
その上で、目の前の子どもの姿を見ながら更新していく。
この順番が大切です。
【関連記事】情緒学級の支援|まず子どもの何を見るのか
読んだ後は、目の前の子どもを見て更新する
個別の教育支援計画や個別の指導計画は、とても大切な資料です。
しかし、それだけで子どものすべてが分かるわけではありません。
書かれている情報は、あくまでその時点での見立てです。
その時点での環境、その時点での関係性、その時点での子どもの姿をもとに書かれています。
だからこそ、計画は読んで終わりではありません。
読んだうえで、実際に子どもと関わる。
学校での姿を見る。
家庭での様子を保護者から聞く。
うまくいった支援を記録する。
うまくいかなかった場面を振り返る。
その積み重ねの中で、見立てを更新していくことが大切です。
計画は、完成された答えではありません。
支援を始めるための手がかりです。
まとめ
個別の教育支援計画・個別の指導計画を読むときには、最初から隅々まで読み込もうとしなくてもよいと思います。
大切なのは、子どもや保護者との関わりに直結する情報から拾うことです。
本人の思い。
保護者の願い。
これまでの支援の経緯。
好きなこと。
得意なこと。
苦手なこと。
崩れやすい場面。
有効だった手立て。
家庭での様子。
保護者が日頃から気を配っていること。
こうした情報を拾うことで、子どもや保護者との関わりの見通しが持ちやすくなります。
診断名や特性は、知識として把握します。
しかし、そこに子どもをはめ込みすぎないことも大切です。
個別の計画は、子どもを決めつけるための書類ではありません。
本人、保護者、学校、関係機関が、子どもをどう理解し、どう支えてきたのかをつなぐための書類です。
まずは、書かれている情報を受け取る。
これまで有効だった支援を一度試してみる。
その上で、目の前の子どもの姿を見ながら、支援を更新していく。
そのように読んでいくと、個別の教育支援計画や個別の指導計画は、日々の支援に生きる資料になります。
なお、計画を読むためには、そもそも子どもの姿をどう見立てるかも大切になります。
見立ての作り方については、別の記事でまとめています。
個別の計画を読むときにも、書くときにも、具体的な姿をもとに子どもを理解していくことが大切です。