情緒学級には、異なる学年の子どもたちが少人数で在籍していることが多くあります。
通常学級とは異なる集団だからこそ、年上の子どもが年下の子どもに教えたり、子ども同士で助け合ったりする場面が生まれやすいことは、異学年学級のよさの一つです。
一方で、年齢差があるからこそ、子ども同士の力関係が固定されたり、年上の子どもが一方的に指示を出したりすることもあります。
情緒学級における関係づくりでは、全員を無理に仲良くさせる必要はありません。
担任が目指したいのは、子ども同士が安心して同じ教室で過ごし、必要なときに相手を尊重しながら関われる学級です。
この記事では、初めて情緒学級を担任する先生にも取り組みやすいように、異学年学級における子ども同士の関係づくりの基本的な考え方と、実践の方法を紹介します。
異学年学級では自然に役割が生まれやすい
学年の異なる子どもたちが同じ教室で過ごしていると、自然とお兄さん・お姉さんのような立場と、そうでない立場が生まれることがあります。
年上の子どもが活動のやり方を教えたり、学校での過ごし方を示したりすることもあるでしょう。
年下の子どもにとっても、年上の子どもの姿は身近な行動モデルになります。
担任が言葉で繰り返し説明するよりも、近くにいる子どもの姿を見た方が、行動のイメージを持ちやすいこともあります。
ただし、年齢が上だからといって、必ず年下の子どもの面倒を見る役にする必要はありません。
年上の子どもにも、助けてもらいたい場面や、一人で過ごしたい時間があります。常に年下の子どもの手本であることを求めると、本人にとって大きな負担になることもあります。
反対に、年下の子どもが年上の子どもの言うことを、何でも聞けばよいわけでもありません。
大切なのは、年齢によって役割を決めるのではなく、子どもの実態やそのときの状態に応じて、無理のない関わり方を考えることです。
教える側と教わる側は固定しない
異学年学級のよさは、年上の子どもが年下の子どもに教えられることだけではありません。
活動によっては、年下の子どもの方が詳しかったり、得意だったりすることもあります。
例えば、遊びのルール、絵の描き方、タブレットの操作、係活動の手順などでは、年下の子どもが年上の子どもに教える場面もあります。
教える側と教わる側が場面によって入れ替わることは、子ども同士の関係を一方的なものにしないためにも大切です。
年上だからいつも教える側、年下だからいつも助けられる側と決めてしまうと、関係が固定されやすくなります。
それぞれの子どもが、自分の得意なことを生かしたり、誰かに助けてもらったりできる関係を目指します。

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学級内で影響力の大きい子どもを把握する
異学年学級では、年上の子どもの言動が、年下の子どもに影響を与えやすい傾向があります。
ただし、必ずしも最高学年の子どもが最も大きな影響力を持っているとは限りません。
発言が多い子ども、遊びを提案する子ども、周囲からよく注目される子どもなど、学級内で影響力を持つ子どもはさまざまです。
担任は、単に年齢を見るのではなく、
- 誰の言葉を周囲の子どもがよく聞いているか
- 誰が活動の流れを決めているか
- 誰の行動をほかの子どもがまねしているか
- 誰がいると学級の雰囲気が変わるか
といった点を観察します。
学級内で影響力の大きい子どもが、相手を尊重した関わり方を身につけると、その姿が周囲にも広がりやすくなります。
これは、影響力のある子どもを担任の補助役にするということではありません。
その子自身が安心して過ごし、無理のない範囲でよい関わり方を経験することが、結果として学級全体の安心感につながるということです。
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毎日少しだけ、関われる時間を作る
子ども同士の関係を作るために、私がよく行っていたのは、授業の導入に短い活動を入れる方法です。
国語や算数の最初の5分程度を使い、学級全体で取り組める簡単な活動を行っていました。
目的は、難しい学習に取り組ませることではありません。
子ども同士が同じ活動に参加し、相手の行動に反応したり、自然に教え合ったりする時間を作ることです。
例えば、次のような活動が考えられます。
- 数字や言葉を順番に答える
- カードを見て、指差しや身振りで答える
- 簡単なクイズに全員で参加する
- 二人で協力して課題を完成させる
- できた子どもの方法を、ほかの子どもがまねする
国語や算数は、多くの学級でほぼ毎日行われます。
そのため、導入に短い活動を入れることで、子ども同士が関わる機会を継続的に作ることができます。
交流学級で学習する子どもがいる場合も考え、私は国語と算数の両方で取り入れるようにしていました。
どちらか一方に参加していない子どもにも、関わる機会を作りやすくなるためです。
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活動は「楽しいか」だけで選ばない
授業の導入に取り入れる活動は、盛り上がれば何でもよいわけではありません。
勝ち負けが強く出る活動や、学力差が目立つ活動では、かえって関係が不安定になることがあります。
活動を選ぶときは、次のような点を確認します。
- 勝敗や順位を過度に強調しない
- 間違えても活動が止まらない
- 声を出さなくても参加できる
- パスや見学を選べる
- 特定の子どもだけが活躍しない
- 教える側と教わる側が固定されない
- 過度に興奮する前に終えられる
- 次の学習に移りやすい
授業の導入に設定する理由は、その時間帯の方が子どもの状態が比較的安定していることが多いからです。
授業の終わりは、疲れや失敗経験、活動へのこだわりなどによって、子どもの状態が不安定になっていることもあります。
そのため、短時間で終えられ、その後の学習に気持ちよく移れる活動を選ぶことが大切です。
参加方法を一つに決めない
関わりを持つことが苦手な子どもや、集団場面で緊張が高まりやすい子どもがいる場合は、全員に同じ参加方法を求めないようにします。
例えば、声を出すことが難しい子どもには、
- 指差しで答える
- カードを示す
- うなずく
- 身振りで伝える
- 見学する
- パスする
といった方法を用意できます。
場面緘黙のある子どもに対しても、声を出すことを参加の条件にしないことが重要です。
子どもが何らかの行動を表したときには、周囲の子どもや担任が反応を返します。
拍手をする方法もありますが、注目を浴びることを負担に感じる子どももいます。
そのため、
- うなずく
- 親指を立てる
- カードを見せる
- 「ありがとう」「助かった」と短く伝える
- そのまま自然に活動を続ける
など、本人が受け取りやすい反応を選びます。
重要なのは、大きく褒めることではありません。
「あなたの行動を受け取った」ということが、本人に無理なく伝わることです。

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休み時間に無理に一緒に遊ばせない
私は、休み時間に子どもたち全員を一緒に遊ばせるルールは、基本的に作りませんでした。
休み時間をどのように過ごしたいかは、子どもによって異なるからです。
交流学級の友達と遊びたい子どももいれば、別の特別支援学級の友達と遊びたい子どももいます。
一人で静かに過ごしたい子どもや、授業で疲れた気持ちを休ませたい子どももいます。
休み時間は、子ども同士の関係づくりだけを目的にした時間ではありません。
子どもが自分なりにリフレッシュする時間でもあります。
そのため、「今日はみんなで遊ぶ日」などと決めて、全員を同じ遊びに参加させる必要はないと考えています。
休み時間は関係を観察する時間になる
休み時間に子ども同士の関係づくりを積極的に指導しなくても、休み時間の様子を観察することには大きな意味があります。
私は、支援員やほかの学級の担任と一緒に、子どもたちの遊び方や関わり方を見るようにしていました。
積極的に遊びへ入るのではなく、少し離れた場所から見守る程度です。
観察するときは、次のような点を見ます。
- 誰が遊びの内容やルールを決めているか
- 誰か一人だけが我慢していないか
- 断りたいときに断れているか
- 一方的に指示されていないか
- 遊びの前後で表情や様子が変わっていないか
- 本人が本当に楽しんでいるか
- 大人がいないときにも公平な関係が続いているか
安全上の問題がなければ、すぐに介入する必要はありません。
子ども同士で調整できる範囲は見守り、必要なときだけ担任が関わります。
休み時間の観察は、子どもの実態を知るための大切な時間です。
授業中には見えなかった得意なことや、子ども同士の力関係が見えることもあります。

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一方的な関係には担任が介入する
異なる学年の子どもが過ごす学級では、どうしても力関係が生じることがあります。
例えば、年上の子どもが年下の子どもに対して、
- 一方的に指示を出す
- 自分が勝てる勝負ばかりを選ぶ
- できないことをからかう
- 自分の得意なことを過度に見せつける
- 相手を従わせようとする
といった関わりをすることがあります。
このような状態を、異学年だから仕方がないとして放置してはいけません。
相手が嫌がっていたり、一方的な関係が繰り返されていたりする場合は、担任が介入する必要があります。
場合によっては、いったん距離を取り、同じ活動に参加させないこともあります。
これは罰として引き離すということではありません。
不公平な関係が続く場面では無理に関わらせず、安心して過ごせる状態に戻すための調整です。
そのうえで、その子どもが相手とフェアに関われる別の場面を探します。
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うまく関われる条件を探す
ある場面で不適切な関わりが見られたからといって、その子どもが誰とも関われないわけではありません。
休み時間の遊びでは一方的に指示を出してしまう子どもでも、掃除の時間には年下の子どもへ丁寧にやり方を教えられることがあります。
勝負のある場面では相手を見下してしまっても、協力して物を運ぶ活動では自然に助け合えることもあります。
担任は、問題が起きた場面だけを見るのではなく、
この子どもは、どのような条件なら相手とフェアに関われるのか
という視点で観察します。
- 勝敗のない活動
- 役割が明確な活動
- 得意なことを生かせる活動
- 短時間で終わる活動
- 大人が近くにいる活動
- 少人数で取り組める活動
など、うまく関われる条件を探します。
そして、そのような場面を少しずつ増やしていきます。
不適切な関わりを止めることだけでなく、適切に関われる経験を作ることが重要です。

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毎日少しだけ相互に反応できる場面を作る
子ども同士の関係づくりで大切なのは、長時間一緒に過ごさせることではありません。
心地よく関われる時間や、相手を尊重して反応を返し合える時間を、毎日少しずつ作ることです。
例えば、
- 朝、挨拶をされたら自分なりの方法で返す
- 係の仕事をしてもらったら「ありがとう」と伝える
- 発言や行動にうなずきで反応する
- 帰りに教室を出る子どもへ声をかける
- 物を受け取ったら反応を返す
といった小さな場面でも構いません。
無理に会話をさせたり、友達関係を作らせたりする必要はありません。
ただし、子どもが学級内で何らかの行動を表したときに、誰からも反応が返ってこない状態が続く場合は、環境を見直す必要があります。
子どもができる行動と、それに対して周囲が無理なく返せる反応を組み合わせ、1日の中に1回から2回程度、仕組みとして入れておくとよいでしょう。
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年下の子どもの反応も丁寧に見る
年上の子どもの関わり方を見るときは、それを受ける年下の子どもの反応も丁寧に観察します。
年下の子どもが笑っているからといって、本当に楽しんでいるとは限りません。
断れずに合わせていたり、相手を怒らせないために笑っていたりすることもあります。
- 活動後に疲れていないか
- 特定の子どもを避けるようになっていないか
- 自分から参加しているか
- 嫌なことを断れているか
- 担任がいない場面でも安心しているか
といった点を見ます。
問題が起きるたびに、年下の子どもを事後的にケアするだけでは十分ではありません。
普段から、一方的な関係が続かない環境を整え、特別なケアを繰り返さなくても安心して過ごせる状態を作ることが大切です。
まとめ|無理に仲良くさせず、安心して関われる場面を作る
情緒学級における子ども同士の関係づくりでは、全員を仲良くさせることを目標にする必要はありません。
目指したいのは、子ども同士が同じ教室で安心して過ごし、必要なときに相手を尊重しながら関われる状態です。
異学年学級には、年上の子どもの姿を見て学べることや、教える・教わる経験が生まれやすいというよさがあります。
一方で、年上の子どもを世話役に固定したり、年齢による上下関係を放置したりしないよう注意が必要です。
担任は、
- 年齢だけでなく、学級内での実際の影響力を見る
- 短時間で安心して参加できる活動を作る
- 参加方法を複数用意する
- 休み時間を無理に集団化しない
- 一方的な関係には介入する
- フェアに関われる別の場面を探す
- 小さな反応のやり取りを日常に組み込む
といったことを意識します。
子ども同士の関係は、担任が「仲良くしなさい」と伝えるだけでは育ちません。
子どもが安心して行動でき、その行動に対して相手から無理のない反応が返ってくる場面を、毎日少しずつ積み重ねることが大切です。