学級経営・教室環境

情緒学級の複数学年授業・実践編|教科書学習30分をどう割り振るか

情緒学級では、同じ教室の中に複数の学年の子どもが在籍し、それぞれ異なる教科書や学習内容に取り組むことがあります。

場合によっては、1年生から6年生までの子どもが同じ学級に在籍することもあります。

担任は一人であるため、全員に対して45分間ずっと個別に教え続けることはできません。

そのため、複数学年の授業では、

  • 教師が直接ついて教える時間
  • 子どもが自分で取り組む時間
  • 教師が後から確認する時間

を分けて考える必要があります。

私は、異なる4学年、合計7名の子どもが在籍する情緒学級を担任した経験があります。

実際には交流学級へ行く子どももいたため、毎時間必ず4学年全員が教室にいたわけではありません。

ただし、本記事では、4学年の子どもを同じ時間に見なければならない、最も忙しい状況を想定して解説します。

情緒学級の45分授業全体の組み立て方については、別記事の「情緒学級の授業はどう回す?45分を安定させる基本テンプレート」で詳しく紹介しています。

本記事では、その中でも特に難しい、約30分間の教科書学習を複数学年へどのように割り振るかに焦点を当てます。

複数学年の授業では全員を同時に教えない

複数学年の授業を組み立てるときに、最初に押さえておきたいのは、全員を同時に教えようとしないことです。

45分の授業を、次のように組み立てるとします。

  • 導入:約5分
  • 学年ごとの教科書学習:約30分
  • 個別確認や振り返り:約10分

4学年の子どもが教室にいる場合、教科書学習の30分を4学年で分けると、1学年あたり約7分です。

もちろん、毎回きれいに7分ずつ分けられるわけではありません。

単元の内容や子どもの実態によって、10分必要な学年もあれば、5分程度で進められる学年もあります。

それでも、担任が時間の目安を持っておくことは重要です。

「何となく順番に子どもを見る」のではなく、

  • 今日はどの学年を見なければならないか
  • どの学年に何分程度必要か
  • 教師が直接教える必要がある内容は何か

を授業前に考えておくだけでも、授業を回しやすくなります。

大切なのは、7分間ですべてを教えることではありません。

教師が直接関わる必要がある部分へ、限られた時間を使うことです。

教師が直接ついて教えたい内容

教科書の学習内容を、すべて教師と一緒に進める必要はありません。

子どもが自分で考えたり、練習問題を解いたりする時間は、教師が別の学年を見る時間として使えます。

一方で、教師が直接ついていなければ、理解のずれやつまずきを見落としやすい内容もあります。

たとえば、次のような場面です。

  • 新しい学習内容や概念を説明する
  • 問題文の意味を確認する
  • 教科書の文章を音読する
  • 文章の内容や登場人物の気持ちを整理する
  • 新出漢字の読み方や書き方を確認する
  • 数図ブロックなどの具体物を操作する
  • 時計、定規、コンパスなどの使い方を確認する
  • 子どもがどこでつまずいているかを見極める
  • 考え方を進めるためのヒントを伝える

子どもが内容を誤って理解している場合は、教師がその場で修正する必要があります。

また、問題が解けないときにも、単に答えを教えるのではなく、

「どこまでは分かっているのか」

「問題文のどの部分で止まっているのか」

「どこを見ればヒントが見つかるのか」

を一緒に確認することが重要です。

このような内容は、教師が直接ついている時間に扱います。

自力で進められる状態を作ってから離れる

教師が別の学年を見るためには、子どもが一人で進められる状態を作る必要があります。

最初から課題を渡して、「自分でやっておいてください」と伝えるだけでは、うまく進まない場合があります。

私は、教師がついている時間に、子どもが自力で進められるところまで一緒に取り組むことを意識していました。

たとえば、算数であれば、最初の1問を一緒に解きます。

解き方が分かったら、次の問題からは子どもが自分で取り組みます。

国語であれば、文章の内容や課題の意味を確認した後、

「ここからは自分で考えて、思いついたことを箇条書きにしてみてください」

と伝えます。

子どもが自分で考えたり、問題を解いたりする段階まで進んだら、教師は一度離れて別の学年を見ます。

教師が離れることは、子どもを放置することではありません。

子どもが自力で進められる状態を作り、後から確認することまで含めて授業を設計します。

自力課題を選ぶときの条件

教師が別の学年を見ている間に取り組ませる課題は、何でもよいわけではありません。

難しすぎる課題を出すと、結局教師の支援が必要になります。

反対に、簡単すぎる課題ばかりでは、学習としての意味が弱くなります。

自力課題を選ぶときは、次のような条件を意識するとよいです。

  • 子どもが一人で進められる
  • 短い時間でも取り組める
  • 途中で止めても問題がない
  • 自分の教科書学習の順番が来たら切り替えられる
  • 分からない問題を飛ばして先へ進める
  • 教科書の学習内容とつながっている
  • 教師がその日のうちに確認できる量である

特に重要なのは、途中で止められる課題にすることです。

教師が別の学年を見ている間に長い作文や複雑な工作へ取り組ませると、自分の教科書学習の順番が来ても、切り替えにくくなることがあります。

漢字練習、計算問題、音読、短い穴埋め問題など、区切りをつけやすい課題の方が使いやすいです。

低学年には時間を多めに使う場合がある

複数学年へ割り振る時間は、必ずしも均等である必要はありません。

特に1年生は、学校で初めて経験する学習が多くあります。

たとえば、

  • 鉛筆の持ち方
  • 線のなぞり方
  • ひらがなの書き方
  • 数の概念
  • 数図ブロックの操作
  • 時計の読み方
  • 教科書やノートの使い方

などです。

こうした内容は、学習内容だけでなく、学習の進め方そのものを教える必要があります。

そのため、年度の序盤や新しい内容を扱う場面では、低学年へ少し長めに時間を割くことがあります。

低学年を見ている間、高学年の子どもには、自力で取り組める漢字や計算、前時の復習などを用意しておきます。

ただし、高学年であれば必ず一人で待てるわけではありません。

実際には学年だけで決めず、子どもの実態やその日の状態を見ながら配分を調整します。

分からない問題は空欄にしてよいと伝える

教師が別の学年を見ている間、子どもが分からない問題に出会うことがあります。

そのたびに教師を呼ぶ状態になると、他の学年への指導が中断されてしまいます。

そのため、分からないときにどうするかを、あらかじめ決めておくことが大切です。

私の場合は、

「分からない問題があることは、恥ずかしいことではありません。空けておけば、後から一緒にやります」

と伝えていました。

空欄にして次の問題へ進めるようになると、教師がすぐに対応できない場面でも、子どもが学習を続けやすくなります。

ただし、空欄が残ること自体に強い抵抗を感じる子どももいます。

その場合は、課題の選び方を調整します。

たとえば、

  • 教科書を読めば答えが見つかる穴埋め問題
  • 選択肢から選べる問題
  • 一人でも正解を確認しやすい問題
  • 漢字の書き取り
  • 既習内容の反復課題

などです。

子どもが困ったときの行動を教えるだけでなく、困りにくい課題を準備することも授業設計の一部です。

国語で教師が直接見る内容と自力課題

国語では、新しい文章や言葉の意味を扱う場面に教師が関わる必要があります。

教師が直接見たい内容

  • 教科書の新しい文章を読む
  • 音読の様子を確認する
  • 語句の意味を確認する
  • 登場人物の気持ちを整理する
  • 説明文の要点や構成を考える
  • 新出漢字の読み方や書き方を説明する
  • 作文の内容や構成を一緒に考える

自力で進めやすい内容

  • 一度読んだ教科書の文章を音読する
  • 教科書を見ながら穴埋め問題を解く
  • 漢字練習をする
  • 習った漢字を使って短い文を作る
  • 既習内容の読み取り問題に取り組む
  • 本文を指でなぞりながら読む

たとえば、前時までに一度読んだ文章であれば、

「待っている間に、本文を指でなぞりながら2回読んでください。読み終わったら、穴埋めプリントに取り組んでください」

と伝えることができます。

教師が別の学年を見ている間も、その単元の文章に触れ続けることで、学習内容の定着につながります。

算数で教師が直接見る内容と自力課題

算数では、新しい考え方や具体物を扱う場面に教師が関わる必要があります。

教師が直接見たい内容

  • 新しい計算方法を説明する
  • 数の概念を確認する
  • 文章問題の意味を整理する
  • 立式の考え方を確認する
  • 数図ブロックなどの具体物を操作する
  • 定規、コンパス、時計などの使い方を確認する
  • どの段階でつまずいているかを見極める

自力で進めやすい内容

  • 既習の計算問題
  • 前時の復習プリント
  • 教科書の類題
  • 解き方が定着したドリル
  • 自分で最後まで解ける問題
  • 短時間で区切れる計算練習

算数では、既習内容の反復と、新しい内容の理解を分けると授業を組み立てやすくなります。

新しい考え方は教師と一緒に学び、理解した後の練習問題は自力で進めます。

教師はその間に別の学年を見て、授業の後半に丸つけや訂正を行います。

教科書に関連する課題を準備する

教師が別の学年を見ている間の課題は、教科書の内容と関連させると学習がつながりやすくなります。

私は、国語の教科書本文を使った穴埋め問題や、本文を読めば答えが分かる問題などを作っていました。

それらを数枚まとめて冊子にしたり、1週間分程度をまとめて準備したりすることもありました。

毎回一から教材を作っていたわけではありません。

既存のプリントが使える場合は、そのまま活用していました。

少し時間に余裕があるときに、先の単元で使うプリントを作っておくこともありました。

教科書に関連する教材は、一度作成すると、次年度以降も調整しながら使いやすいという利点があります。

ただし、学校や地域によって採用している教科書は異なります。

そのため、教材を準備するときは、現在使っている教科書の内容や学校の方針に合わせて調整してください。

教材やプリントの探し方、作り方については、別の記事で詳しく紹介する予定です。

その日のうちに確認できる量にする

自力課題を用意すると、教師には丸つけや確認の時間が必要になります。

課題の量を増やしすぎると、授業中に確認できず、放課後の丸つけや翌日の訂正が増えていきます。

私は、原則として、その日のうちに教師が確認し、必要な訂正まで進められる量にしていました。

教師が丸つけを行う場合は、授業の後半10分程度を使います。

子どもが自分で丸つけできる場合でも、最後には教師が内容を確認します。

課題をやらせっぱなしにせず、

  • どこまでできたか
  • どこで間違えたか
  • 何を理解できているか
  • 次に何を学習するか

を確認して終えることが大切です。

その日に取り組んだ教材が残ることで、保護者へ学習内容を伝える材料にもなります。

ただし、すべてのプリントを毎日家庭へ返す必要はありません。

学校や学級の方針に合わせて活用してください。

単元目標から教師が教える部分を絞る

複数学年の教科書を同時に進めるとき、すべての内容を通常学級と同じ時間をかけて扱うことは難しい場合があります。

だからこそ、単元の目標を確認することが重要です。

多くの場合、教師用指導書には、その単元で身につけさせたい力や、中心となる学習内容が示されています。

まずは、その単元の目標を確認します。

そのうえで、

  • 子どもだけでは理解しにくい内容
  • 教師が説明しなければ誤解しやすい内容
  • 具体物や対話が必要な内容
  • 今後の学習の土台になる内容

を、教師が直接教える時間に扱います。

反対に、練習や反復によって身につける内容は、自力課題として設定できます。

学習内容を絞る場合でも、その単元を一度も見たり経験したりしないまま終わらせないことは意識しておきます。

すべてを丁寧に扱おうとするのではなく、単元目標から逆算して、教師が関わる必要のある部分を選ぶことが大切です。

まとめ

情緒学級で複数学年の授業を回すときは、全員を同時に教えようとしないことが基本です。

教科書学習に使える約30分を学年ごとに分け、教師が直接ついて教える内容を絞ります。

教師が関わりたいのは、

  • 新しい内容や概念の説明
  • 問題文や文章の意味の確認
  • 具体物の操作
  • 新出漢字
  • 子どものつまずきの見極め

などです。

一方で、既習内容の練習や、教科書を見ながら進められる課題は、自力で取り組む時間に設定できます。

その際は、

  • 一人で進められる
  • 短時間で区切れる
  • 途中で止められる
  • 分からない問題を飛ばせる
  • 当日中に教師が確認できる

という条件を意識します。

4学年であれば、1学年に使える時間は約7分です。

ただし、均等に7分ずつ教えることが目的ではありません。

限られた時間を、教師が直接関わる必要のある学習へ使うことが目的です。

複数学年授業は、担任が気合いで全員を見続けることで成り立つものではありません。

教師が関わる時間と、子どもが自分で進める時間を切り分け、単元目標から逆算して授業を設計することが大切です。

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