情緒学級の担任をしていると、支援員の先生に力を貸していただく場面があります。
支援員の先生は、担任だけでは見きれない場面を支えてくれる、とても心強い存在です。子どもの近くで様子を見てくださったり、交流学級での活動を支えてくださったり、行事や特別な活動の場面で一緒に動いてくださったりすることもあります。
だからこそ、担任は「何となくお願いします」ではなく、子どもの実態や支援の方針を具体的に共有しておくことが大切です。
支援員の先生が迷わず動けるようになると、子どもへの関わりも安定しやすくなります。
この記事では、情緒学級で支援員の先生と連携するときに、担任が意識しておきたいことについてまとめます。
支援員の先生が迷わないように依頼を具体的にする
支援員の先生にお願いするときに大切なのは、依頼を具体的にすることです。
「見ておいてください」
「お願いします」
「困っていたら声をかけてください」
だけでは、実際にどこまで支援すればよいのかが分かりにくいことがあります。
特に情緒学級の子どもへの支援では、「手伝うこと」がいつも正解とは限りません。
ある場面ではすぐに声をかけた方がよいこともあります。一方で、別の場面では少し距離を取って見守った方がよいこともあります。本人に考えさせたい場面もあれば、不安が高まる前に早めに大人が入った方がよい場面もあります。
だからこそ、担任がある程度の線引きを伝えておくことが大切です。
たとえば、次のようなことです。
「ここまでは手伝ってください」
「ここから先は、本人にやらせたいです」
「困っていても、すぐに答えを教えずに少し待ってください」
「この場面では、無理に促さず見守ってください」
「この様子が出たら、担任に知らせてください」
このように伝えておくと、支援員の先生も動きやすくなります。
支援員の先生に細かく指示を出すというより、担任の見立てや支援の方針を共有するという意識です。
「この子には、今どの力を伸ばしたいのか」
「どの場面では支援を厚くするのか」
「どの場面では少し見守るのか」
こうしたことを担任が整理しておくと、支援員の先生への依頼もしやすくなります。
子どもとの約束を共有しておく
情緒学級では、担任と子どもの間で、個別の約束をしていることがあります。
たとえば、
「不安になったら、クールダウンスペースに行く」
「交流学級で困ったら、支援員の先生にカードを見せる」
「活動に入れないときは、まず見学から始める」
「気持ちが落ち着かないときは、無理に話さず少し休む」
「注意を受けると不安定になりやすいので、個別に短く声をかける」
といったものです。
こうした約束が担任と子どもの間だけで共有されていると、支援員の先生は対応に迷いやすくなります。
支援員の先生が子どものためを思って声をかけたとしても、それが担任と子どもの約束とずれていると、子どもが混乱することもあります。
そのため、個別のルールや対応方法がある場合は、事前に共有しておくことが大切です。
伝え方としては、
「現状、この子は〇〇の場面で不安が高まりやすいです」
「そのため、今は〇〇という約束で動いています」
「不安定になったときは、まず〇〇のように声をかけています」
「それでも難しそうなときは、担任に知らせてください」
のように、子どもの実態、支援の理由、具体的な対応をセットで伝えると分かりやすくなります。
教育はすべてをマニュアル化できるものではありません。
しかし、子どもが不安定になったときの対応や、声かけの基本方針については、大人側で一定の共通理解を持っておく必要があります。
「臨機応変に対応する」という言葉は大切ですが、指針がないまま動くと、行き当たりばったりになってしまうこともあります。
支援員の先生が安心して動けるようにするためにも、担任が対応の型や判断の基準を共有しておくことが大切です。
【関連記事】情緒学級で子どもとの約束を共有するには?担任だけのルールにしないために
行事や特別な活動は事前に打ち合わせる
日々の学校生活では、支援員の先生がある程度、様子を見ながら動いてくださることも多いです。
しかし、校外学習、行事、調理実習、交流学級での特別な活動など、普段と違う場面では事前の共有が特に重要になります。
普段と違う活動では、子ども自身も見通しを持ちにくくなります。大人の動きも複雑になります。場所が変わったり、時間の流れが変わったり、関わる人が増えたりすることで、不安が高まりやすくなる子どももいます。
そのため、支援員の先生にお願いする場合は、最低限、次のようなことを共有しておくとよいです。
活動の内容、タイムテーブル、大人の配置、子どもの目標、不安定になりやすい場面、困ったときの対応、担任に知らせてほしい場面。
すべてを細かく伝えようとすると、かえって情報量が多くなりすぎることもあります。
現場では、毎回じっくり打ち合わせる時間が取れないことも多いです。その場合は、特に重要なことに絞って共有します。
たとえば、
「今回の目標は、最後まで同じ場所で参加することです」
「不安になったら、無理に参加を促さず、少し離れて見守ってください」
「集団から離れた場合は、担任に知らせてください」
このくらいでも、支援員の先生の動きやすさは変わります。
大切なのは、支援員の先生がその場で判断するときの手がかりを渡しておくことです。
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【関連記事2】情緒学級の教室環境づくり|子どもが迷わず動ける教室を作るポイント
普段の授業の流れを分かりやすくしておく
支援員の先生への情報共有は、口頭での説明やメモだけではありません。
普段の授業の流れを分かりやすくしておくことも、支援員の先生へのサポートになります。
たとえば、
「今は何をする時間なのか」
「次に何をするのか」
「終わった子は何をするのか」
「どこまでできればよいのか」
「困ったときはどうするのか」
が見えるようになっていると、子どもも動きやすくなります。
同時に、支援員の先生も「今、この子は何をしているのか」「自分はどのように支えればよいのか」をつかみやすくなります。
子どもにとって分かりやすい環境は、大人にとっても分かりやすい環境です。
授業の流れが見えるようになっていたり、隙間時間に取り組むことが決まっていたり、活動の終わりが明確になっていたりすると、支援員の先生も担任に毎回確認しなくても動きやすくなります。
これは、見通し支援や授業づくりともつながる部分です。
支援員の先生に動いてもらうために特別なことを増やすというより、子どもにとって分かりやすい学級環境を整えることが、そのまま支援員の先生への情報共有にもなるということです。
【関連記事】情緒学級の授業はどう回す?45分を安定させる基本テンプレート
情報共有の動線を整える
支援員の先生との連携では、情報共有の方法も大切です。
共有ノート、レターボックス、紙面でのメモ、電子媒体での共有など、方法はいろいろあります。
どの方法がよいかは、学校の実態や支援員の先生の働き方によって変わります。大切なのは、支援員の先生が必要な情報に迷わずアクセスできることです。
個人的には、紙面での共有やレターボックスは使いやすい方法だと感じています。
支援に関する情報は、子どもの個人的な内容まで踏み込むことがあります。そのため、誰の目にもすぐに内容が見えてしまうような状態は避けたいところです。
職員全体で共有する情報と、支援員の先生個別に共有する情報を分けられると、情報の扱いもしやすくなります。
ただし、ここで大切なのは、紙か電子かという方法そのものではありません。
重要なのは、具体性の高い依頼内容、大まかな方針、子どもとの約束、大人の配置などが、必要な人に伝わるようになっていることです。
共有の方法は、学校の実態に合わせて選べばよいと思います。
【関連記事】情緒学級担任の役割とは?|子ども・保護者・学校をつなぐ仕事
支援後の様子を聞く
支援員の先生に関わっていただいた後は、子どもの様子を短く確認しておくとよいです。
毎回、長く振り返る必要はありません。
むしろ、現場では時間が限られているので、確認することは一つか二つに絞った方が現実的です。
たとえば、
「交流学級で不安になった場面はありましたか」
「他の子どもと関わる場面はありましたか」
「活動にはどのくらい参加できていましたか」
「支援員の先生から見て、気になる様子はありましたか」
といったことです。
支援員の先生は、担任とは違う位置から子どもを見ています。
担任が見ていない場面での様子、交流学級での関わり、休み時間の姿、活動の入り方などを教えてもらえることがあります。
その情報は、次の支援を考える材料になります。
特に情緒学級では、子どもの状態は場面によって変わることがあります。担任の前では安定していても、交流学級では不安が高まっていることもあります。逆に、担任が思っている以上に、他の子どもと自然に関われていることもあります。
支援員の先生から見えた子どもの姿を聞くことで、担任の見立てを更新することができます。
支援員任せにしない
支援員の先生は、とても頼りになる存在です。
しかし、支援員の先生に力を貸してもらうことと、担任の責任を支援員の先生に渡してしまうことは違います。
最終的に、子どもの実態を把握し、支援の方針を考え、保護者や関係職員と連携し、学級全体の動きを整理するのは担任の仕事です。
支援員の先生は、担任の代わりに責任を負う人ではありません。
担任の支援方針を実現するために、力を貸してくださる存在です。
たとえば、行事や校外学習で、特別支援学級の担任や教員の見守りがまったくない状態で、支援員の先生だけに引率や対応を任せるような計画は避けるべきです。
支援員の先生は便利屋ではありません。
担任が追うべき責任まで、支援員の先生に下ろしてしまわないように気をつける必要があります。
だからこそ、担任は方針を持って依頼することが大切です。
「何をお願いするのか」
「どこまでお願いするのか」
「何かあったときは誰が判断するのか」
「担任に知らせてほしい場面はどこか」
こうしたことを整理しておくことで、支援員の先生も安心して関わりやすくなります。
感謝を伝える
最後に、支援員の先生への感謝を伝えることも大切です。
支援員の先生は、日々の学校生活の中で、子どもたちや担任をたくさん支えてくださっています。
忙しい中であっても、
「ありがとうございました」
「助かりました」
「今日の様子を教えていただけてありがたかったです」
といった言葉を伝えることは、大人同士の関係づくりとして大切です。
また、子どもにも、助けてもらったときに「ありがとう」と伝える経験を積ませたいところです。
これは単なる礼儀の話だけではありません。
子どもが周りの大人や友達と関係を作っていくためにも、助けてもらったことに気づき、言葉で伝える経験は大切です。
支援員の先生との関わりは、子どもにとっても、担任にとっても、安心できるチームを作る機会になります。
まとめ
情緒学級で支援員の先生と連携するときに大切なのは、支援員の先生が迷わず動けるようにすることです。
そのためには、担任が子どもの実態や支援の方針を具体的に共有する必要があります。
「何となくお願いします」ではなく、
「この場面では、ここまで支援してほしい」
「ここから先は本人に任せたい」
「不安定になったら、このように対応してほしい」
「この様子があれば担任に知らせてほしい」
というように、支援の線引きや判断の基準を伝えておくことが大切です。
支援員の先生は、担任の仕事を強力に支えてくださる存在です。
だからこそ、支援員任せにするのではなく、担任が方針を持ち、その方針を共有しながら一緒に子どもを支えていくことが大切です。